ワイン&造り手の話

フレデリック

「ルイナール」は、シャンパーニュのメゾンの中で最も歴史が長いことで知られています。その古さもあってか、比較的隠れた存在だったように思うのですが、最近とてもハイ・センスで現代的なイメージを帯びてきました。それは、2007年に最高醸造責任者となったフレデリック・パナイオティス氏の個性とも重なります。

 

フレデリック・パナイオティスと初めて会ったのは、彼がまだヴーヴ・クリコに務めていた時でした。当時から日本語が上手で、面白く、また和食大好き! という印象がある人物です。そして、シャンパーニュの人々はおよそ厳格なイメージが強いのですが、彼は少し異なるタイプで、もちろんとても真面目なのですがどこかソフトなタッチなのです。

 

<遊び心>

ルイナールの「インタープリテーション」という香りのサンプルのようなものがあるのをご存知でしょうか。「ルイナール ブラン・ド・ブラン」がもつ主な香りを、小さな瓶で個別に楽しめるような趣向です。例えば、ジャスミンの花、レモンや桃といった果実、生姜やカルダモンなどのスパイスです。それぞれ自然なものから抽出した、純粋な香り成分のエキスのようです。

 

「このシャンパーニュにある香りが、この小瓶に入っています。さあ、何の香りでしょうか?」など、パーティーなどで遊んでみるときっと楽しいにちがいありません。日本の香道ではないですが、いつもとは違う感覚を使って刺激的なのではないでしょうか。

 

こういった、分析して遊ぼう、というアプローチはシャンパーニュでは初めてだったと思います。遊び心があり、洒落ています。それにもちろん、楽しいだけではありません。ノン・ヴィンテージの「ルイナール ブラン・ド・ブラン」は、花や果実の香りがとても豊かな上に、やわらかでしっとりとした味わいです。この素敵なアロマと清らかさを出すために、シャンパーニュ全域からブドウが選び抜かれ、ブレンドされているのです。このバランス感覚の優れたセンスのよさは、ちょうどこの透明で綺麗なボトルにも表れていると思います。

 

ちなみに、「ルイナール ブラン・ド・ブラン」はシーフードにとてもよく合う銘柄で、牡蛎、手長海老の他に、舌平目のグリルや白身肴の刺身もお薦めということです。フレデリックは自分で免許も持っていて素潜りでウニを採るらしく、「ウニとも抜群」だと太鼓判を押していたことを付け加えさせていただきます。

 

<ドン・ルイナールは偉大な白>

「ドン・ルイナールは、偉大な白ワインの仲間に入ります。力もあり、熟成可能性も素晴らしいから」と、最新ヴィンテージの2002年、少し熟成した1990年を開けて、いくつかの白ワインをブラインド・テイスティングしてみよう、という冒険心にあふれる楽しい遊びを提案してくれました。出てきたのは、各国の有名銘柄で、ドン・ルイナールと同様にシャルドネ100%のプレミアム品でした。

 

シャンパーニュを飲みながら「これは泡がなくなると偉大な白ワインですね」などと言ったり聞いたりしたことはありますが、実際にシャンパーニュをワインとして捉えてワインと比較したことは、一度もありませんでしたから、目から鱗の試みでした。

 

2002年と同時に試飲したのは、2012年と2009年の銘柄。産地は日本の長野県とニュージーランドのセントラル・オタゴ。

1990年と比較したのは、2003年と2000年のヴィンテージ。産地はオーストラリアのマーガレット・リヴァーとフランスのブルゴーニュ。

 

今回の試飲で最も面白いと感じたのは、どちらも3アイテムの中でドン・ルイナールが約10年古いにも関わらず、そういった印象を受けなかったことです。2002年はハリがあり、花も果実も清々しく、ナッティーさもありながらまだフレッシュで、クリーミーでみずみずしい味わい。とても若々しい状態です。1990年は、熟成感が出て、カラメル的な香ばしさやドライフルーツのニュアンスがあり複雑で、豊かさや厚みがありながら、酸のフレッシュ感は長く残ります。

 

ドン・ルイナールの息の長さに改めて感激しました。

ワイン好きの方々の集まりで、一風変わったシャルドネ対決、試してみるのも面白いですね。

 

日本語がとても上手で驚きます!

日本語がとても上手で驚きます!

<最古のロゼはルイナール>

もうひとつ、ロゼについてもお知らせしなくてはなりません。今まで、シャンパーニュで最も古いロゼはヴーヴ・クリコの1818年だ、といわれていました。フレデリックの古巣です。ところが、昨年からルイナールで古文書の調査を始めたところ、1764年の文献にこのような記載があるとわかりました。

 

「3月14日 60本のウイユ・ド・ペルドリを含む120本のボトルが入ったバスケットが出荷された」

ドイツへ出荷されたようです。このウイユ・ド・ペルドリというのは、ウズラの目のような淡いピンク色のシャンパーニュを示すものです。ですから、黒ブドウの果皮をしばらく漬けておいて淡い色合いになった果汁から造られたロゼが、1764年にはできあがっていたことが証明されたのです。

 

「ただ、赤ワインをブレンドしてロゼを造ったのはヴーヴ・クリコが最初、という点は変わらない」と、フレデリック。いずれにしても、ルイナールのロゼ誕生から250周年ということで、今年はおめでたい年になりそうです。

(輸入元:MHD モエ ヘネシー ディアジオ/ルイナールのページ

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

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