ワイン&造り手の話

創立者の横顔のシルエットが印象的なオーパス・ワン。

クラシック音楽の世界で「作品番号1」を意味する言葉として使われているラテン語を採用し、「オーパス・ワン」と名付けられた夢のコラボレーションの、32年目のヴィンテージがリリースされました。創立当時のバロン・フィリップ・ロートシルトとロバート・モンダヴィ両氏は既に天の人ですが、その想いは受け継がれ、進化し続けています。完成度が極めて高い2010年のその姿とは。

「オーパス・ワン」といえば、2001年に20年目のヴィンテージ1998年のリリースを記念して垂直試飲のイベントが行われた時のことが思い出されます。当時の記憶をたどると、80年代はまだ若干方向性が確立していないイメージが残たのに対し、90年代に入るとバランスもよくかっちりとして向かう先が決まったのだろう、という印象を受けました。そして来日中のバロネス・フィリピーン・ロートシルトの話からわかったのは、彼らは5年、10年という単位でワイン造りを考えているのではなく、100年単位で見ているという点でした。つまり、1代でどうこうしようというわけではないのです。

まして、このようなジョイント・ヴェンチャーの場合には、コラボレーションを組む相手との意見交換が必要なだけでなく、ブドウが育つ土地や気候、環境そのものを熟知しなければなりません。とても長く地道な仕事の積み重ねの結果が、ようやく10年後、20年後に表れるように感じています。

さて、現在栽培と醸造の責任者であるマイケル・シラーチ氏は2001年からワインメーカーを務めています。79年からはボルドー側はルシアン・シオノー、カリフォルニア側はティモシー・モンダヴィが、85年からはボルドー側はパトリック・レオン、カリフォルニア側はやはりティモシー・モンダヴィが、という二人体制でしたが、「オーパス・ワン」の組織変更もあり、今では一人ですべてを統括。オーパス・ワン日本事務所代表のキャドビー康子さん曰く「マイケルはとても細かいことにこだわる人」。ボスが微に入り細に入り気がつく人なので、スタッフも自ずと几帳面になるのでしょうか。畑も醸造所内もいつもとても綺麗に保たれているようです。例えば畑の管理を任されているホアン・マルティネス氏は、畑を歩きながら話していても、パチパチと剪定バサミで枝を切り揃えていくのだとか。ブドウは1メートル55センチに仕立ててあり、ちょっと一部が伸びているとすぐに目につくので、即剪定。栄養分が枝や葉ではなく実にいくようにと、ブドウに命令するのです。

そして2010年ヴィンテージを試飲してみると、完成度の高い仕上がりです。チョコレートやカラメル、そしてパツンとした張りのある果実、カシスのリキュール、そしてヨード的なニュアンスや上品な杉のような清涼感をもち合わせた複雑な香り。味わいはなめらかで緻密で、ボリューム感もあり酸もソフトに感じられるほどバランスがよく、タンニンは豊かながら細やかです。とても丁寧に、手をかけて造られたことがよく感じとれます。

この年に、マイケル・シラーチは何をしたのでしょうか。2010年は、春からずっと涼しい年だったといいます。霧が晴れない日が多く、成長の速度がゆっくりで、6月の初めにようやく開花して春が来たように感じられたとか。その後、7月初旬でもブドウが色づき始めるヴェレゾンが始まらないので、多くの生産者が心配して、ブドウの房まわりの葉をすべて取り除き始めました。ところがマイケル・シラーチは、きっと8月末から9月の初めに熱波が来るに違いないと考えて、除葉はしないと決断。すると彼の読み通り! 「オーパス・ワン」は熱波によってブドウが焼けてしまったり過熟してしまったり、というリスクを回避でき、とても綺麗なバランスのブドウが得られたのです。

もちろん除葉をしなかったということだけでなく、基本的な畑の管理方法(65%有機栽培、35%バイオダイナミクス)や、区画毎にすべて分けて醸造を行ったり、よりソフトな抽出ができる設備を整えたり、とても多くの細かな仕事の結果ではありますが。

少し古いヴィンテージも味見できたので、記しておきます。

2005年は雨が多かったといいますが、綺麗な熟成をしていました。カシスのリキュール、黒いスパイス、ヨードと枯れ葉などの香りが心地よく広がり、味わいにはまだ厚みもみられ、ボリューム感もあります。

1996年は、カルダモンに似たきれいなスパイス香、少しドライなカシス、獣的な要素が感じられる香りで、味わいはとても優しく、きめ細やかで、タンニンも落ち着きがあり、全体のバランス感覚が素晴らしい。

キャドビー康子さん曰く「オーパス・ワンは、ボルドーとカリフォルニアのニュアンスがワインの中に見え隠れするスタイルを追求しています。90年代はボルドー寄りのニュアンスで、2001年からマイケルが担当するようになってから少しカリフォルニア寄りになったように思います」。これから「オーパス・ワン」が、どのような歴史を刻んでいくのか、ますます楽しみでなりません。

より詳しく知りたい方は、こちらの「オーパス・ワン(日本語)」をどうぞ。

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

夢のコラボレーションは、年々進化を遂げています。

夢のコラボレーションは、年々進化を遂げています。

カテゴリー 赤ワイン
ワイン名 オーパス・ワン Opus One
生産者名 オーパス・ワン Opus One
生産年 2010
産地 アメリカ/カリフォルニア/ナパ・ヴァレー
主要ブドウ品種 カベルネ・ソーヴィニヨン84%、カベルネ・フラン5.5%、メルロ5.5%、プティ・ヴェルド4%、マルベック1%
希望小売価格 オープン価格
輸入元/販売店 複数
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