中国ワインを牽引する初の家族経営ワイナリー「グレース・ヴィンヤード」 〜CEOを務めるジュディ来日〜
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広大な中国では、ワイン愛好家の数が増えているだけでなく、ワイナリーの数も急増しています。中でも、初めての家族経営のワイナリーとして知られ、国内の名だたるホテルのワインリストに欠かせない存在となっているのが、山西省のグレース・ヴィンヤードです。そのCEOを務めるジュディ・チャンさんが来日しました。
「皇居の周りは本当にたくさん人が走っているのね。今朝行ってきたの」というジュディは、CEOといってもとてもチャーミングで気さくな人です。自分自身も頻繁にジョギングをするようで「もちろん私も(皇居の周りを)走ったわよ!」と、にっこり。ボルドーのメドック・マラソンにも参加経験があるようです。走る理由は、日本のワイン好きの人たちと同じで「美味しい食事やワインが大好きだから。食べて飲むために走る!」。
「グレース・ヴィンヤード」は、北京の西にあたる山西省に、現在200ヘクタールものブドウ畑を所有しています。もとはジュディの父が1997年に、フランス人醸造家デニス・ブーバレの協力を得て始めたのですが、今のような発展を遂げて有名になったのは、ジュディがゴールドマンサックスを退職して2002年にCEOに就任してからのようです。「2002年が2回目の創立かもしれない」と、ジュディも認めています。
多くの銘柄があり生産量も多いのですが、大半は地元の山西省で売れてしまうようです。山西省の人口は4,000万人もあるのですが、それでも中国で一番大きな省ではないというので驚きです。一二を争う河南と四川にはそれぞれ1億人といいますから、やはり中国は大国ですね。規模が違います!
いくつか味見した中で、一番印象に残ったのは「ソナタ」という赤ワインでした。2人いるワインメーカー(チーフ・ワインメーカーはオーストラリア人)のうち、若いマレーシア人のワインメーカーによるもののようです。ハリのあるスパイシーな香りで、カシスやチェリーなどの果実も充実して、とてもバランスのよい味わいでした。この銘柄については自然酵母を使って発酵しているようです。寒暖差が大きく、とても乾燥した場所のようですから、ああブドウがよく熟すのだろう、と想像がつきます。でもこのワインは熟しすぎたニュアンスはなく、引き締まっていて好印象(ブドウ品種:メルロ80%、マルセラン10%、カベルネ・ソーヴィニヨン10%)
そういえば、香港在住のワインジャーナリストであるラオ氏(Mr. Lau Chi Sun)には、毎年2月のトスカーナ訪問の際に会うのですが、その彼がグレース・ヴィンヤードのチーフ・コンサルタントを務めているとわかりました。キャセイ・パシフィックのワインのアドバイザーもしている人です(グレースのワインはキャセイのファースト&ビジネスクラスに搭載!)。グレースでは、チェアマンズ・リザーヴのブレンドにも関わっているようで「もしチェアマンズ・リザーヴを美味しくないと思ったら、私じゃなくて彼に文句を言ってね」とジュディ。もちろん、美味しかったよ、と伝えようと思っています。
<付記>
ブドウ品種「マルセラン」は馴染みがないので記しておきます。
Marselan:フランスのモンペリエで1961年に交配された品種/カベルネ・ソーヴィニヨン×グルナッシュ。当初は量産を目的として交配したにも関わらず、房は大きいが小粒となったため、しばらく普及しなかった。現在、南仏を中心に、スペインやブラジルなどでも栽培されている。色が濃く香りが華やかで、ストラクチャーがあり、タンニンはしなやか。(参考文献:Wine Grapes)
(text & photo by Yasuko Nagoshi)
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