ワイン&造り手の話

ニュージーランドのピノ・ノワールの達人、グラント・テイラー。

世界最南のワイン産地としても知られるニュージーランド南島のセントラル・オタゴは、ニュージーランドが誇るピノ・ノワールの国内最大の産地です。ただ、この流れができたのは1990年代になってから。初めて世界的に評価されたセントラル・オタゴのピノ・ノワールを造り、急速に熱い目を注がれるきっかけを起こしたのは、グラント・テイラー、現在の「ヴァリ」のオーナーなのです。彼が選んだ4カ所のサブ・リージョンから生まれるキュヴェを飲み比べれば、あなたも今日からセントラル・オタゴ「通」!

「ヴァリのワインを飲めば、単にワインを楽しむという以上にその土地を体感してもらえるでしょう」。グラント・テイラー。

「ヴァリのワインを飲めば、単にワインを楽しむという以上にその土地を体感してもらえるでしょう」。グラント・テイラー。

<セントラル・オタゴとグラント・テイラー>

セントラル・オタゴという地方は、南島の内陸にあり南緯45度という場所にあります。初めてブドウが植えられたのは19世紀半ば過ぎでしたが、今のワイン産業に繋がるのは1973年にワナカで「リッポン」が、1977年にギブストンで「ギブストン・ヴァレー」が植えたあたりから。実際にピノ・ノワールの可能性が見いだされるのは90年代になってからです。当時は、どうしてそんなところにブドウを?といった嘲笑の対象にさえなったといいます。

ところが、1993年から状況は変わります。オタゴの北部地域、ノース・オタゴ出身のグラント・テイラーがカリフォルニア(ダックホーンなど)やブルゴーニュ(デュジャックなど)での修業を終え、更にナパ・ヴァレーでワイナリー創設(パイン・リッジ、ドメーヌ・ナパ、アーチェリー・サミット)を手伝った後、オタゴに戻ってきたのです。彼はくだんの「ギブストン・ヴァレー」のワインメーカーに就任。そして他にもセントラル・オタゴにできたいくつものワイナリーの初ヴィンテージのピノ・ノワールを造る役割を担いました。

フェルトン・ロード、マウント・エドワード、マウント・ディフィカルティー、ボールド・ヒルズ、ペリグリンなどなどの初ヴィンテージをてがけ、インターナショナル・ワイン・チャレンジなど次々と各国で行われるワインのコンペティションで賞を勝ち取ったため「世界で最も多くベスト・ピノ・ノワールのトロフィーを獲得したワインメーカー」と呼ばれるようになりました。すると当然、ワイナリーの数やブドウ栽培面積がセントラル・オタゴで増えていくわけです。今ではニュージーランドを代表するピノ・ノワールの産地となり、セントラル・オタゴのブドウ栽培の85%がピノ・ノワール。なくてはならない存在となりました。

<ヴァリのワイン>

さて、そんな先駆者的役割を果たしたテイラー・グラントですが、1998年から自らのワイナリー「ヴァリ」立ち上げを踏み切りました。やはり独自のラベルでワインを世の中に出したかったのでしょうが、もうひとつ目的がありました。複数のワイナリーの仕事をしている間に、オタゴの中でも場所(サブ・リージョン)によってブドウの性格が異なることに気がつき、それぞれの特徴を反映したワインを造りたいと考えたのです。それでも「ギブストン・ヴァレー」には2006年まで籍を置き、その後は「ヴァリ」に打ち込みます。

セントラル・オタゴは、ニュージーランドのワイン産地で唯一内陸性気候にあり、寒暖差がとても大きいのが特徴です。夏は短いながら日中とても暑くて乾燥し、ぶどうが完熟するので比較的アルコール度数が高いワインに仕上がりますが、夜間の気温がぐっと下がるため、酸もきちんと残ります。ですから、凝縮感があり、なめらかで、バランスよく、ボリューム感もたっぷり。ニュージーランドの中で最もインパクトの強いピノ・ノワールができあがります。

彼が選んだ地所は4カ所。

拠点は、セントラル・オタゴの西部にあたり、最もよく知る「ギブストン」に。ここは比較的冷涼な産地となります。そして、フェルトン・ロードでもお馴染みの温暖な「バノックバーン」と、最も暑いとされる「ベンディゴ」では標高の高い位置にあるチャイナマンズ・テラスを指定。そして故郷の、ノース・オタゴにある「ワイタキ」でもブドウ栽培を始めました。

オタゴを知り尽くしたグラント・テイラーが選んだ4カ所から生まれたキュヴェを並べて比較してみると、「セントラル・オタゴ」の奥深さが感じられます。以下、それぞれの特徴を気候が涼しい方から順番に記しますが、是非実際にこれらの違いを体験してみてください! これでセントラル・オタゴ通に!

ワイタキ

ニュージーランドで最新の、最も期待される産地のひとつ。南極からの海風の影響を受ける冷涼な気候と石灰質土壌を反映した、最もタイトでエレガントな仕上がりで、旧世界的な雰囲気をまとった、植物や海藻を思わせるニュアンス。

赤身肉を食べるなら、焼き肉用の牛もも肉に軽く塩胡椒してさっと焼いて。

ギブストン

オタゴの西端に位置する産地。比較的冷涼な気候で日較差の大きさを反映し、ブドウがゆっくり成熟するので香りが華やかで、樽からくるロースト香とともに果実香も開き、ほどよいバランスの味わいでシルキーな口当たり。

同様の牛もも肉なら、仕上げに少し醤油を足して香りづけしたい。

バノックバーン

湖に近い温暖な気候を反映して、厚みやボリューム感が感じられる。果実の充実感、厚み、しっかりしたストラクチャーと細やかで豊かなタンニンの姿が、一般に思い描くセントラル・オタゴのイメージそのもの。

焼き肉ならカルビ肉にタレ、もしくはステーキ肉にドゥミグラス・ソースを添えて。

ベンディゴ

標高は高いながら、最も暑い産地らしく、エキスのような果実とボリューム感満点で、とても豊か。タンニンは熟していてまるみがありながらたっぷりなので、香りや味わいが開くのに少し時間がかかりそう。

こちらは厚みのある脂ののったステーキ肉と食べたい雰囲気。

<プロの方向け情報>

ヴァリのワインは、ある意味「通向き」の銘柄かもしれません。

例えば、全房率がニュージーランドのピノ・ノワールの中で最も高い部類に入ります。2011年データですが、ワイタキで20%、ギブストンとベンディゴで30%、バノックバーンで38%です。これによって複雑性が醸し出されるとともに、長期熟成向きになるため、開くスピードはゆっくりです。しかもスクリューキャップですから、ブショネの心配がない代わりに更に酸化熟成がゆっくり進行することになります。

ですから、数本購入してもらい、そのうち何本かはワインセラーで数年間熟成させてもらうとして、1本早めに飲む場合でもデキャンタするか大きめのグラスでゆっくり飲んでいただくことをお薦めします。

また、ピノ・ノワールだけに関してですが、ニュージーランドの全体像に興味をお持ちの方は、こちらのWANDSの記事をご参照ください。

(text by Yasuko Nagoshi)

Valli Pinot Noir 2012 Waitaki カテゴリー 赤ワイン
ワイン名 ワイタキ・ヴィンヤード ピノ・ノワールWaitaki Vineyard Pinot Noir
生産者名 ヴァリ Valli
生産年 2012
産地 ニュージーランド/ノース・オタゴ
主要ブドウ品種 ピノ・ノワール
希望小売価格 7,875円
輸入元/販売店 ラック・コーポレーション
Valli Pinot Noir 2012 Gibbston カテゴリー 赤ワイン
ワイン名 ギブストン・ヴィンヤード ピノ・ノワールGibbston Vineyard Pinot Noir
生産者名 ヴァリ Valli
生産年 2012
産地 ニュージーランド/セントラル・オタゴ
主要ブドウ品種 ピノ・ノワール
希望小売価格 7,875円
輸入元/販売店 ラック・コーポレーション
Valli Pinot Noir 2012 Bannockburn カテゴリー 赤ワイン
ワイン名 バノックバーン・ヴィンヤード ピノ・ノワールBannockburn Vineyard Pinot Noir
生産者名 ヴァリ Valli
生産年 2012
産地 ニュージーランド/セントラル・オタゴ
主要ブドウ品種 ピノ・ノワール
希望小売価格 7,875円
輸入元/販売店 ラック・コーポレーション
Valli Pinot Noir 2012 Bendigo カテゴリー 赤ワイン
ワイン名 ベンディゴ・ヴィンヤード ピノ・ノワールBendigo Vineyard Pinot Noir
生産者名 ヴァリ Valli
生産年 2012
産地 ニュージーランド/セントラル・オタゴ
主要ブドウ品種 ピノ・ノワール
希望小売価格 7,875円
輸入元/販売店 ラック・コーポレーション
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