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表紙

「ドン・メルチョー」は、チリのカベルネ・ソーヴィニヨンの潜在能力を世界に知らしめた銘柄です。1987年の誕生から10年後には、あのシャトー・ムートン・ロッチルドのバロン・フィリップ・ロッチルドからジョイント・ヴェンチャーをもちかけられ、1998年に「アルマヴィーヴァ」も生まれました。今回は、ブレンド前の7つの区画別ワインを試飲しながら「ドン・メルチョー」を解剖する、という体験をさせてもらいました。

ボトル

<ドン・メルチョーの誕生>

ひところ「チリカベ」という言葉を頻繁に耳にしました。チリのカベルネ・ソーヴィニヨン、しかもお手頃価格の銘柄が評判となった頃のことです。果実の風味が豊かでまろやかなタッチなので、飲みやすさと飲みごたえがありますから、人気が出るのも頷けます。

ただ、その一方で、プレミアムワインもいくつか造られてきました。「コンチャ・イ・トロ」の「ドン・メルチョー」は、その先駆けとして、長期熟成する高品質のチリのカベルネ・ソーヴィニヨンとして世界を驚かせたのです。

 

当時の社長エグアルド・ギリサスティ・タグルは、1986年に息子のラファエルとワインメーカーをボルドーへ送りこみました。有名なボルドーのコンサルタントであるエミール・ペイノーに、彼らが選んだマイポ・ヴァレーのプエンテ・アルト地区のカベルネ・ソーヴィニヨンについての意見を求めるためでした。

後に「稀なことであるが、このワインには他の国にはみられないポテンシャルを感じる」というコメントが寄せられたようです。

 

初めてのヴィンテージとなる1987年から、エミール・ペイノーの右腕ともいえるジャック・ボワッセノが毎年、ブドウの選抜と最終ブレンドについての助言を行い続けました。今ではジャックの息子のエリックも、この事業に参加しています。

 

<7つの区画>

グラス2「アルマヴィーヴァ」の畑は、「ドン・メルチョー」の畑のすぐ隣にあります。カベルネ・ソーヴィニヨンの故郷であるボルドーの大御所バロン・フィリップ・ロッチルドに、そこでワインを造りたいと思わせたプエンテ・アルト地区にある「ドン・メルチョー」の畑は、一体どのような魅力があるのでしょうか。

 

ポイントは土壌と気候条件にあるようです。

1)アンデス山脈からの堆積物が蓄積した古い土壌で複雑性がある

2)四季がはっきりとした地中海性の亜乾燥気候

3)日較差が大きい

 

何となく、チリは暑い、というイメージをもっていますが、実際には昼は暑く夜は寒い、というほうが正しいのです。昼夜で20度の温度差があるというのですから。例えば、チリの真夏の1月で最高気温は29.1度、最低気温が11.6度。真冬の7月の最高気温は14.8度、最低気温は3.1度。日本とは服装の感覚が随分ちがってきますね。必ず上着を携帯しておく必要がありそうです。

これは、夜間にアンデス山脈から冷たい風が吹き下ろすからなのです。これによって、ブドウはよく熟しながらフレッシュな酸、香り高いアロマを保ち、色づきもよくなるわけです。

 

そして、たくさんの小さな区画から「特に豊かなアロマとテクスチャーをもつ7つを選んで、2013年に収穫したブドウで造ったワイン」を、試飲させてもらいました。6つのカベルネ・ソーヴィニヨンと、1つのカベルネ・フランです。

 

一口にカベルネ・ソーヴィニヨンといっても、確かに香りも味わいも異なります。

ある区画は、赤い果実やビターチョコの香りで、しっとりした繊細な味。

次は、黒い果実やスパイスの香りが強く、味わいも凝縮。

別のものは黒いスパイスの香りが豊かで、生き生きとし、タンニンがしっかり。

そうかと思えば、ソフトで軽快感さえ感じるものも。

なめらかで、タンニンもとてもまろやかなものも。

エキスのような濃縮度があり、厚みがあり、タンニンもとてもソフト。

そしてカベルネ・フランは、スパイシーで繊細で、タンニンが豊か。

 

ただ、不思議なのはこの後です。醸造責任者のエンリケさんが、メスシリンダーを使って、これらをブレンドしてくれました。2013年ヴィンテージの「ドン・メルチョー」のプレ・サンプル試飲が完成です。ひとつずつのサンプルでは感じられなかったプラス・アルファの華やかさがあり、味わいも融合する以上の素晴らしいバランスとテクスチャーが出来上がっているのです。

ブレンドの妙ですね。

 

 

その後、100%完成品の2009年と2010年も試飲しました。2009年は少し香りが開き始めていましたが、2010年はまだまだ固くこれからゆっくりと成長していくだとうと期待させる味わいでした。

手塩にかけて造り上げられた特別なキュヴェ「ドン・メルチョー」で、チリカベの真髄を味わってみてはいかがでしょうか。

 

<付記:ドン・メルチョーの基本情報>

ブドウ畑が集まる中央部の中でも、ドン・メルチョーの畑が位置するのは、マイポ・ヴァレー。そのマイポ・ヴァレーのアンデス山脈の麓で、マイポ・リヴァーの北岸にあるプエンテ・アルトの127ヘクタールの畑で、標高は650メートル。9割がカベルネ・ソーヴィニヨンで、残りはカベルネ・フラン、メルロ、プティ・ヴェルドが植えられている。

 

チリの首都であるサンティアゴのすぐ南にあるD.O.プエンテ・アルトの中でも、ドン・メルチョーの畑があるのは「第3段丘」と呼ばれる古い土壌。マイポ・リヴァーによって、アンデス山脈から運ばれた堆積物が蓄積した土壌で、火山性の土壌もあれば、粘土質もあり、石や砂利が多い場所もあり、様々な土壌が入り組んでいるため、複雑性のあるワインが生まれる。何しろ貧しい土壌であり、カベルネ・ソーヴィニヨンの栽培に適している。

 

区画ごとに手摘みされたブドウは、除梗し、粒選りされた後、小さなステンレスタンクで20〜25日間発酵。フレンチオークの小樽(70%新樽)で12〜15ヶ月熟成。今ではジャック&エリック・ボワッセノ父子と醸造責任者のエンリケ・ティラドが共に試飲をして最終ブレンドを決定し、瓶詰めされる。

 

品種構成は以下の通り。

1987〜1994年:カベルネ・ソーヴィニヨン100%

1995年:カベルネ・ソーヴィニヨン97%+メルロ3%

1996〜1998年:カベルネ・ソーヴィニヨン100%

1999年:カベルネ・ソーヴィニヨン93%+カベルネ・フラン7%

2000年:カベルネ・ソーヴィニヨン100%

2001年:カベルネ・ソーヴィニヨン91%+カベルネ・フラン9%

2002年:カベルネ・ソーヴィニヨン96%+カベルネ・フラン4%

2003年:カベルネ・ソーヴィニヨン95%+カベルネ・フラン5%

2004年:カベルネ・ソーヴィニヨン94%+カベルネ・フラン6%

2005年:カベルネ・ソーヴィニヨン97%+カベルネ・フラン3%

2006年:カベルネ・ソーヴィニヨン96%+カベルネ・フラン4%

2007年:カベルネ・ソーヴィニヨン98%+カベルネ・フラン2%

2008年:カベルネ・ソーヴィニヨン97%+カベルネ・フラン3%

2009年:カベルネ・ソーヴィニヨン96%+カベルネ・フラン4%

2010年:カベルネ・ソーヴィニヨン97%+カベルネ・フラン3%

輸入元:日本リカー

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

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