ワイン&造り手の話

「ボデガス・カルチェロ」の醸造長ホアキン・ガルベス氏曰く「生産量の90%が輸出で、フランスは大きなマーケットのひとつです。フランスの同じ価格帯のワインと比べると、2倍のクオリティーを得られると評判がよいのですよ」。スペインの南東部フミーリャで造られるワインで「造り始めて2年間のうちに、『死ぬ前に飲みたいワイン』に選ばれたり、『ワイン・スペクテーター』の『トップ100』入りしたり」と、注目の銘柄です。

<フミーリャという産地>

スタンダードで最もよく知られる「カルチェロ」をはじめとする赤ワインが造られるのは、フミーリャ。スペイン南東部のムルシア州にある産地です。とても乾燥した地域で、年間に300ミリしか降雨量がありません。夏の日中の気温は40度を超えるようですが、夜間は20度以上も下がって18度ほどになるという、大陸性気候で、冬も随分と厳しい寒さだといいます。ちなみに年間の日照量は3000時間という長さです。

ですからここで造られるワインは、アルコール度数が高く、色が濃く、粗いが強さがあるということで、ブレンド用のワインとして長年使われてきたとう歴史があります。ただ、ちょうどこの「ボデガス・カルチェロ」が創立された1980年代以降に品質の高いワイン造りへと、方向転換されました。

この地域の主要品種は「モナストレル」。フランスではムールヴェードルと呼ばれ、南仏のバンドールの赤などに用いられていて、色が濃く、ストラクチャーやタンニンがしっかりとしていることで知られています。南仏では本当にタンニンが強いワインを造る、という印象のある品種ですが、このフミーリャの環境下ではモナストレルが完熟するのだと、ワインを飲むとわかります。

しかも「他の品種は果皮が色づく前に乾燥によってしぼんでしまうことがあるのですが、モナルトレルは灌漑しなくてもいいのです」とホアキン。やはり適材適所ということでしょう。例えばスペインを代表するブドウ品種テンプラニーリョも栽培していますが、テンプラニーリョは水分が少なすぎるとジャムのようになってしまうので、この土地では灌漑しなければなりません。

暑く乾燥した気候条件を理解するのに面白い例をもうひとつ挙げてくれました。「ボルドーでは、ヘクタールあたり1万本植樹して1株あたり0.5キロのブドウを収穫してバランスがよいけれど、この土地ではヘクタールあたり3,000本植樹して1株あたり2キロのブドウを収穫するのがちょうどよいのです。これより収穫量を低くすると果皮は熟していない状態でも糖分が上がりすぎて困ります」。ある意味、過酷ともいえる中で実ったブドウを使ったワインは、さあどんな味わいなのでしょうか。

キャップシールのストライプと格子模様は、ブドウ畑の風景を表しているそうです。ストライプは何列にも並んだブドウの樹がつくる日陰と、強烈な太陽に照らされた白い土。格子模様は、古い株仕立てのブドウが畑の中に点在している様子。

キャップシールのストライプと格子模様は、ブドウ畑の風景を表しているそうです。ストライプは何列にも並んだブドウの樹がつくる日陰と、強烈な太陽に照らされた白い土。格子模様は、古い株仕立てのブドウが畑の中に点在している様子。

<赤ワイン4種>

「カルチェロ2011」は、「説明がいらないワインです。ワインが好きではないという私の甥や姪でも、喜んで飲んでくれますよ」と、とても嬉しそうに話します。確かに熟したチェリーやプラムの香りがフレッシュに香り立ち、とてもスムーズでなめらかな口当たり。フレッシュ感があるので強すぎず、厚みやソフトさがあるのでスルスルと口の中を転がっていくニュアンスです。

ここで造る赤ワインは、どれもモナストレルを主体にした複数の品種といくつもの畑のブレンドですが、ひとつだけ単一品種の銘柄があります。「アルティコ2011」は1997年に植樹したシラーだけで造られています。ハリのあるチェリーやベリー系果実の香りで、バランスのよい味わいですが、まだ少しタンニンに若さが感じられますから、ちょっと大きめのグラスで飲むのがよいでしょうか。

「ヴェドレ2010」は、「樽熟成のニュアンスが好きなスカンジナビア用に造ったワイン」だといいますが、それほど樽香やタンニンが表に出ているわけではなく、むしろ樽熟成が長い分なめらかでまるみがあり、フレッシュ感もあるので食中酒として使いやすいと思います。

株仕立ての古いモナストレルを主体にした「シエルヴァ2010」は、チェリー、プラム、スパイスなど複雑性のある香りで、とてもなめらかでストラクチャーもしっかりしています。豊かなタンニンもとても細やかです。少し若いようにも思いますが、バランスがとてもよいので食事があれば美味しく飲めてしまう味わいです。

いずれもオープン価格なのですが、「アルティコ」までの3銘柄はどれも2,000円前後で買えそうです。「シエルヴァ」のみ3,000円近いですが、それにしてもどれもお買い得感たっぷりのワインたちです!

<付記>

畑は4カ所の自社畑の他に、リース畑も。標高は500〜650メートルの地で、土壌は砂質粘土石灰質。

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

カルチェロ カテゴリー 赤ワイン
ワイン名 カルチェロ Carchelo
生産者名 ボデガス・カルチェロ Bodegas Carchelo
生産年 2011
産地 スペイン/フミーリャ地方
ブドウ品種 モナストレル40%、テンプラニーリョ40%、カベルネ・ソーヴィニヨン20%
希望小売価格 オープン価格
輸入元/販売店 ミレジム
アルティコ カテゴリー 赤ワイン
ワイン名 アルティコ Altico
生産者名 ボデガス・カルチェロ Bodegas Carchelo
生産年 2011
産地 スペイン/フミーリャ地方
ブドウ品種 シラー100%
希望小売価格 オープン価格
輸入元/販売店 ミレジム
ベドレ カテゴリー 赤ワイン
ワイン名 ヴェドレ Vedré
生産者名 ボデガス・カルチェロ Bodegas Carchelo
生産年 2010
産地 スペイン/フミーリャ地方
ブドウ品種 モナストレル50%、シラー25%、テンプラニーリョ25%
希望小売価格 オープン価格
輸入元/販売店 ミレジム
シエルバ カテゴリー 赤ワイン
ワイン名 シエルヴァ Sierva
生産者名 ボデガス・カルチェロ Bodegas Carchelo
生産年 2010
産地 スペイン/フミーリャ地方
ブドウ品種 モナストレル40%、シラー30%、テンプラニーリョ15%、カベルネ・ソーヴィニヨン15%
希望小売価格 オープン価格
輸入元/販売店 ミレジム
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