おしゃれに飲む

ホテル・ド・ラ・シテのベランダから眺める風景。

城塞都市カルカッソンヌは、フランスの世界遺産の中でも人気ベスト3に入るそうです。そんな場所に滞在しながら、毎日毎日ワインをたっぷり試飲させてもらいました。赤ワインが圧倒的に多いので、やっぱり大量試飲の後は口の中が真っ黒です! もちろん歯も。これ、綺麗に落とすのが結構大変なんですよね。

 

<カルカッソンヌの立地>

それはさておき、カルカッソンヌには紀元前からの歴史があります。ガリア人の進出に始まり、古代ローマ帝国が城塞都市としてから、西ゴート王国、フランク王国と、この場所を戦略的に活用していきます。それは、ここがとても重要な立地だったからです。

 

カルカッソンヌはラングドック・ルーション地方のちょうど西端付近にあり、南東には地中海、南西にはピレネー山脈、西には大西洋、東にはモンターニュ・ノワールという山塊が控えています。ちょうどこの立地は、ワインの個性にも影響を与えているから面白いですね。

 

例えば、ちょうどカルカッソンヌの西側にあるワイン産地「リムー」は、スパークリングワインでとても有名ですが、今では品質の高いスティル・ワインの白と赤も生まれています。リムーの最大手「シュールダルク」の白ワイン(2013年産のサンプル)を、気候条件別に試飲させてもらうと、こんな風にちがいました。

 

地中海からの影響が強い「テロワール・メディテラネ」は、熟した洋梨やリンゴが香り、酸がキリッとしているが、とてもなめらか。

北西からの冷たく乾燥した風が吹く「テロワール・ドータン」は、香りがより華やかで、果実と酸が調和してバランスよい。

大西洋からの影響を受ける「テロワール・オセアニック」は、香りがまだ閉じていて、味わいもタイト。

ピレネー寄りで標高が高い「テローワール・オート・ヴァレ」は、香りは閉じ繊細で、味わいも上品で最もタイトな造り。

 

赤ワインの場合、カルカッソンヌより西にある産地(マルペール、カバルデス、リムー)から造られるものは、ボルドー系のブドウ品種(カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロなど)が主体になります。一方、東側にある産地(コルビエール、ミネルヴォワ、サン・シニアン、フィトゥなど多数)は地中海系のブドウ品種(シラー、グルナッシュ、ムールヴェードルなど)が主体になってきますから、個性が随分ちがってきます。

 

たとえ細かい産地の名前を覚えていなくても、カルカッソンヌより西か東か、モンターニュ・ノワールに近い山の麓か地中海に近いか(山の麓のほうが冷涼なので上品なタイプ、海よりのほうが温暖なのでがっちりタイプ)、これだけでもレストランやショップで確認して教えてもらえば、およそ味わいの想像ができるかもしれません。

 

<カルカッソンヌの面白い逸話>

カルカッソンヌとう名前の由来になったという、ちょっと面白い逸話が残っています。

フランク王国のカール大帝が、この城塞都市を攻略しようと5年間も城を取り囲んでいたようです。ところが、当時の城主カルカス王妃は、この大軍を戦わずして撤退させることに成功したのです。

 

5年間も包囲されていれば、いくら広いとはいえ城内の食料は徐々に減っていきます。危機感を覚えた王妃が蓄積状況を確認していたところ、一頭の豚と一袋の小麦を持ってきたものがいました。それを見てカルカス王妃はいいことを思いついたのです。豚も小麦も住民にとって大切な食料ではありますが、まずはその豚に小麦をたらふく食べさせて、太らせました。そして豚を城の外へ捨ててしまったのです!? 空飛ぶ豚、ですね。

 

するとカール大帝は、こんなまるまる太った豚を捨てるぐらいだから、城内にはまだたっぷり食料が残っているのだ、と勘違いをして落胆。征服を諦め、兵を撤退したのだといいます。城を去り往く兵士たちは、喜びに満ち鳴り響く城の鐘の音を聞きながら「カルカスが鐘を鳴らしている」と呟いたそうです。フランス語ではそれを「カルカス・ソンヌ」というので、これがこの城塞都市の名になったのだといいます。

 

嘘か誠かは定かではありませんが、まるで一休さんのとんち話のように楽しいので、長く言い伝えられているのかもしれませんね。

 

<カルカッソンヌ城内の食事>

石づくりのたくさんの塔を眺めながら、細くて入り組んだ石畳の道を歩くのは楽しいものです。道が狭いので、軽自動車ぐらいのサイズのホテルの送迎車ぐらいしか、城内を走ってはいけないことになっているようです。橋を渡って城内に入ると、道の真ん中の地面から金属の円柱が出たり入ったりするのを見ました。これも、車の出入りを制限するための仕組みのようです。

 

城内を散策していると、小さなショップやレストランがたくさんあります。ワインショップはもちろん、量り売りのチョコレートショップ、いわゆるお土産屋さんには剣や昔風の衣装なども。そしてワインバーやレストランにテラス席が多くいのは、天候に恵まれたラングドック・ルーション地方ならでは。「カスレ」専門店もありました。これはカルカッソンヌを含めてこの地方一帯も名物料理ですから、一度は是非食べてみていただきたい一皿です!

 

腸詰めと白インゲンをじっくり煮込んで、更にオーブン焼きしたもので、とってもボリュームがあります。しっかりとした濃い赤ワインがちょうどよく合うと思いますので、ラングドック地方の赤なら選択肢はとても多いですね。

 

ただし、カルカッソンヌ城内に実際に住んでいる人の数は極めて少ないため、城内にスーパーマーケットは一軒もありませんのでご注意を。城内が賑わっているのは、たくさんの観光客と城内の多くの店で働く人たちがいるからで、夜になると城内のホテルに宿泊している客ぐらいになりますから、結構静かになります。ライトアップも綺麗にされるので、夜の情景もなかなかのものです。

 

美味しいワインと世界遺産、同時に堪能できる素敵な場所です。

 

*城内のお薦めホテル「オテル・ド・ラ・シテ」

20世紀初頭からの歴史あるホテルです。ゆったりとした空間と伝統を思わせる調度品に囲まれて、部屋の中でも、ロビーや庭でくつろいでいても、心地よい時間が過ごせるのではないでしょうか。ホテル内にあるバーやレストランも評判です。

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

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