大泉洋が主演の北海道・空知のワイナリー映画 〜『ぶどうのなみだ』〜
09/11

北海道の広大で美しい風景の中で描かれるのは、ピノ・ノワールで赤ワインを造ろうと奮闘する青年と、その家族や仲間達との葛藤と融合でした。「しあわせのパン」でもお馴染みの三島有紀子監督、『ぶどうのなみだ』製作委員会による、ファアンタジックな映像『ぶどうのなみだ』は、10月11日から全国で公開されます(北海道は10月4日先行ロードショー)。
<北海道の空知>
昨年、北海道にワイナリー取材へ行った時、空知も訪問してきました。この映画の舞台となった山﨑ワイナリーではありませんでしたが、岩見沢地区にある「ナカザワ・ヴィンヤード」と「10R(トアール)ワイナリー」です。そういえば「10R」のブルース・ガットラヴ氏は「山﨑ワイナリーのピノ・ノワールを飲んだのが、この土地へ移り住もうと思った最初のきっかけになった」と語っていたのを思い出します。
多くの人々を魅了するブドウ品種ピノ・ノワールは、いかんせん美味しいワインを造るのがとても難しい品種です。だからこそチャレンジしたいんだ! という造り手さんは世界中にたくさんいます。
夢破れて地元の空知に戻ってきた主人公のアオもまた、ピノ・ノワールへのチャレンジャーとして描かれています。ただ、この映画の主題はワイン造りそのものというより、その格闘の中で起こる様々な変化のようです。人と人との間に起こる化学反応というのでしょうか。不思議な女性エリカの突然の登場によって、それまでの人間関係に変化が生じていきます。その合間に繰り返し出てくるのが「ぶどうのなみだ」です。
季節が春になり、ブドウの樹が成長を始める時に、冬場に剪定された枝の先端から樹液が雫となって流れ出てきます。ブドウの目覚め、春の象徴であり、活力のある液体として美容液などにも使われているのをご存知かもしれません。
特に北海道は冬がとても長いので、春はとても待ち遠しい季節なのにちがいありません。「ナカザワ・ヴィンヤード」と「10R(トアール)ワイナリー」の中澤さんご夫妻、ガットラヴご夫妻と話している時も「この前の冬はブドウが全部埋まるぐらいに雪が降った。支柱も見えないぐらい」「でも、うちの方が雪は多かったよ」と、大雪自慢?をするほど。ここは、日本のブドウ栽培の北限ともいえるでしょう。
<ブドウを育てる兄・アオと小麦を育てる弟・ロク>
見渡す限り大きな空、そして畑か森かという広大な緑が広がっている大地。だから主人公の名前はアオ、そして弟の名前がロク(緑)のようです。自分でブドウを植え始めた兄さんが、まだ美味しくなさそうな赤ワインを造っているのと反対に、弟は兄がいない間に父の小麦畑を継いで淡々と小麦を収穫し、美味しそうなパンを毎日焼いているのも面白いですね。
ロクが作るパンやサンドイッチがどれも美味しそうですし、ヒロインのエリカが簡易な調理道具で作る料理も素敵です。まさにワインが飲みたくなるような料理ですね。このあたり、さすがに食材が豊富な北海道! 是非、食材や料理にも注目してみてください。
そして、この兄弟の知人達による音楽隊がとても印象的でした。ブドウ畑の中で奏でられる和みの音です。ワインの樽貯蔵庫で音楽を流すと美味しいワインができるとか、ブドウ畑で音楽を流すとブドウの樹が病気にかかりにくいとか、何度も聞いたことがあります。振動によるものだ、という人もいますが、なんとなく、音楽が直接的にワインやブドウの樹に作用するのではなく、それを世話する人間の心に影響するから結果的に美味しいワインが生まれるのではないだろうか。そんなふうに思いました。
公開は10月に入ってからと少し先になりますが、三島有紀子ファン、大泉洋ファンはもちろん、北海道好き、美味しいもの好きの方々にお薦めしたいと思います。
(c)2014 『ぶどうのなみだ』製作委員会
(画像はアスミック・エース提供/text by Yasuko Nagoshi)
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