ワイン&造り手の話

ティム・モンダヴィ。故ロバート・モンダヴィの次男。ロバート・モンダヴィ・ワイナリーで栽培醸造の責任者を務め、オーパス・ワンも2004年まで醸造。チリではセーニャやアルボレーダなどのプロジェクトに携わった。

ティム・モンダヴィ。故ロバート・モンダヴィの次男。ロバート・モンダヴィ・ワイナリーで栽培醸造の責任者を務め、オーパス・ワンも2004年まで醸造。チリではセーニャやアルボレーダなどのプロジェクトに携わった。

ティム・モンダヴィ……。近代カリフォルニアワインの父、ロバート・モンダヴィの次男にして、ナパ・ヴァレーにあるロバート・モンダヴィ・ワイナリーの栽培醸造責任者を30年間務め上げた人物です。

ご存知のとおり、ロバート・モンダヴィ・ワイナリーは2004年にコンスタレーションズ・ブランドに売却され、ワイナリーを追われたティムと姉のマーシァは翌年、自分たちの力で新たなワイナリーを立ち上げました。それが「コンティニュアム」です。

コンティニュアムの設立にあたり、ティムの頭の中にはワインの青写真がすでに出来上がっていました。ボルドーのシャトー同様、ひとつのエステイトからひとつのワインを造ること。そしてそのために彼が選んだ場所は、ナパ・ヴァレーの東側の山の上にある、プリチャード・ヒルだったのです。

「僕はブルゴーニュに興味があった。とりわけテロワールという哲学にね。斜面下の平坦な場所はジメジメして土が肥えてるから、ブドウは膨れ上がって水っぽくなる。特級や一級の畑はみな斜面の中腹だ。そこで僕も、東の山の斜面に畑を見つけたんだ」とティム。

標高は400〜500メートルもあり、西向きまたは南向きの斜面。酸化した鉄分を含む火山性の土壌で、房も粒も小振りのブドウが実るそうです。現在、173エーカー(70ヘクタール)の敷地のうち、62エーカー(25ヘクタール)にブドウが植え付けられ、品種構成はカベルネ・ソーヴィニヨン55%、カベルネ・フラン25%、プティ・ヴェルド15%、メルロ5%。ティムはナパ・ヴァレーにおけるメルロのポテンシャルには懐疑的で、カベルネ・フランへの関心が高いようです。

「過去の経験から、カベルネ・フランの比率が高いほど優れたワインが出来ると考えているんだ。コンティニュアムでカベルネ・フランを植えているのは日照量の多い、温かな場所。日照不足だと青臭さが出てうまくいかない。メルロはプティ・ヴェルドと混醸する。樽に入れる段階でブレンドすると、メルロの特徴が樽の底に沈んでしまう。それからプティ・ヴェルドを混醸することでストラクチャーも備わる。プティ・ヴェルドはカリフォルニアの温暖な気候に向いてるみたいだね」

ティムがこの畑を購入したのは2008年から09年にかけてで、初ヴィンテージの05年から07年まではオークヴィルのトカロン・ヴィンヤードのブドウが中心だったそうです。プリチャードヒルの畑にはすでにブドウが植え付けられていましたが、前のオーナーは十分な手入れをせず、ブドウを健全な状態にするための努力がまず先決でした。またシラーをプティ・ヴェルドに、あまりよくないカベルネ・ソーヴィニヨンをカベルネ・フランに、根を残したまま接ぎ木によって改植したそうです。

そしてとうとう、新たにリリースされる2012年ヴィンテージから、プリチャードヒルの自社畑のブドウが100%使われるようになりました。

「山のブドウで収量はとても少なく、1エーカーあたり1.5〜2トン(歩留まり7で計算し、ヘクタールあたり約26〜35ヘクトリットル。どちらが優れていてどちらが劣っているということではなく、以前と比べてスタイルに変化があると思う。果実味にミネラルが調和し、シャトー・マルゴーのようなエレガンスを備えたワインになっている)と、ティムの表情も誇らしげ。

実際に味わってみると、2012年のコンティニュアムはじつにエレガント。熟成に使用するフレンチオークの新樽率を75%まで下げたことも効いているようで、フィネスの感じられる仕上がりです。

じつはこの日、ティムは2014年のブレンドに使用した主要なコンポーネントを7種類持参。各区画の解説を聞きながら試飲しました。カベルネ・ソーヴィニヨンが3つ、カベルネ・フランが2つ、プティ・ヴェルドが1つ、メルロとプティ・ヴェルドの混醸が1つです。そしてこれをブレンドし、オリジナルのコンティニュアムを造るというゲームが行われたのです。

2012年のコンティニュアム。カベルネ・ソーヴィニヨン78%、カベルネ・フラン11%、メルロ6%、プティ・ヴェルド5%。4分の3を木製ファーメンター、4分の1をセメントタンクで醸造。7日間の低温マセレーションのあと、アルコール発酵が始まり、25〜40日の醸し発酵。フレンチオークの小樽(新樽率75%)に移し、マロラクティック発酵。20ヶ月間熟成。

2014年のミニブレンド実験。同じカベルネ・ソーヴィニヨンでも区画ごとに樹齢、植密度、土壌が異なり、キャラクターも違う

ほぼ決まりかけている2014年の品種構成はすでに聞かされていたので、あとは各区画の比率をどうするか……。真剣にブレンドした結果、かなり自信のあるワインに仕上がりました。それでティムにこれを試飲してもらうと、「うん、98.5点!」

まあ、半分お世辞でしょうがうれしいものです。自社畑では根を残したままより優れたクローンに植え替え、さらに新たな植え付けも始めました。新しい畑は植密度が1メートル×2メートルの密植になっています。今後の進化がとても楽しみですね。

(text & photos by Tadayuki Yanagi)

CT-4B12

2012年のコンティニュアム。カベルネ・ソーヴィニヨン78%、カベルネ・フラン11%、メルロ6%、プティ・ヴェルド5%。4分の3を木製ファーメンター、4分の1をセメントタンクで醸造。7日間の低温マセレーションのあと、アルコール発酵が始まり、25〜40日の醸し発酵。フレンチオークの小樽(新樽率75%)に移し、マロラクティック発酵。20ヶ月間熟成。

カテゴリー 赤ワイン
ワイン名 コンティニュアム
生産者名 コンティニュアム
生産年 2012
産地 カリフォルニア/ナパ・ヴァレー
主要ブドウ品種 シャルドネ
希望小売価格 34,000円(税別)
輸入元/販売店 ワイン・イン・スタイル
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Related Article