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スペインのワインで「チャコリ」という名前を、聞いたことがあるでしょうか? 今まで何となく、日本酒でいうところのどぶろく的な地酒、というイメージがあったのですが、どうやら最近変化があるとか。アメリカでも人気沸騰中だといいます。一体どんなワインを「チャコリ」と呼んでいるのか、聞いてきました!

 

<チャコリには白、ロゼ、赤がある>

チャコリはちょっぴり発泡性のクリスピーで軽快な白、という印象があったのですが、実はロゼも赤もありました。とはいえ、大半は白ワインで地元品種の「オンダラビ・スリ」から造られます。

 

味わいの特徴は「爽やかな酸味や塩味を思わせるミネラル感と、余韻に軽く感じる苦み」「若飲みタイプには軽い微発泡のものがある」「厚みがありリッチなタイプもある」。いくつかのタイプが出てきているのです。

チャコリ2本

例えば「チャコリ・チョミン・エチャニス2013」(写真左/DOチャコリ・デ・ゲタリア)は、とてもフレッシュな洋梨、レモン、リンゴのような香りで味わいも爽やかでした。

「チャコリ ヌメロ シエテ/イチャスメンディ2012」(写真右/DOチャコリ・デ・ビスカイア)は、ふっくらとした香りで、熟した柑橘類やほんのりスパイスも感じられる、まろやかでリッチな味わいでした。

 

日本酒で言えば、吟醸タイプのフレッシュな新酒と少し寝かした純米酒、といった違いでしょうか。チャコリの場合、この違いは産地の気候にも関係しているようです。

 

<チャコリの産地>

「チャコリ」が生まれるのは、スペイン北部のバスク州でピレネー山脈のすぐ西側。カンタブリア海のビスケー湾に面しています。ピンチョスやバルで有名なサン・セバスチャンやビルバオもバスクにあり、美食の地として知られているのですが、なんとミシュランの三ツ星レストランが一番多い州はバスクなのだそうです。

 

チャコリもシェリーのように、こ〜んな風に注ぐのが「今」のトレンドのようです♪

チャコリもシェリーのように、こ〜んな風に注ぐのが「今」のトレンドのようです♪

ここには3つの県があり海沿いの東側がギブスコア(サン・セバスチャンのある県/ここから生まれるのはDOチャコリ・デ・ゲタリアで、爽やかなタイプが多い)、西側がビスカイア(ビルバオのある県/DOチャコリ・デ・ビスカイアは、比較的厚みのあるタイプ)、内陸にある南のアラバ(DOチャコリ・デ・アラバがもっとも小規模ながら、厚みのあるタイプ)は、赤ワインの里であるリオハのサブゾーン、リオハ・アラベサの一部でした。

*気候条件は、後ろのDATAを参照してください。

 

昔はバスク地方で広くブドウが栽培され、チャコリは自家消費用ワインとして気軽に飲まれていたようです。ブドウを収穫してワインにして、年末にはほぼ消費されてしまうぐらいの、微発泡のワインがほとんどで、それこそどぶろく的な地酒だったのでしょう。

ところが、19世紀末にフィロキセラ禍に襲われてブドウ畑が壊滅状態になり、その後の不況、内線、世界大戦などが続いたため、復活の日が遅くなってしまったようです。1980年代になってようやく、ブドウ畑を再生させ、醸造革新をしてモダンな造りが増えてきた、ということです。

 

ちなみに「チャコリ」の語源は、自家製(エチャコア)という言葉から派生したとか、いくつかの説があるようです。

 

現在、ピンチョスやバルの進出と共に、各国で注目を集めつつある「チャコリ」。どこかで見つけたら、気軽に試してみてはいかがでしょうか。

☆「エスカンシア」という独特の注ぎ方を披露してくださった方は、

バニュルス上野店」店長の納堂さん(赤い服)と三田にある「スペインバル カサ・デ・マチャ」の瀧本さん(黒い服)です♪

 

せっかくなので、もう1ショット!

せっかくなので、もう1ショット!

<付記/チャコリのDATA>

ギプスコア県のゲタリアで復活開始。

海岸に近い地域は、冷たいカンタブリア海の影響を受け、日較差は大きくない。

反対に内陸部は、日較差大きく、暑く乾燥した内陸からの風の影響を受ける。

全体に降水量は多く、年間で900〜1500mm(ガリシアも1500mm)あり、湿度も高い。

土壌は粘土質、石灰質。

仕立ては、特に海岸付近は湿度が高いため、風通しをよくするため、棚仕立てが多い。内陸部では機械化しやすい垣根仕立てが増えている。

 

ブドウ品種/3つのDO共通の推奨品種

白;オンダラビ・スリ

黒:オンダラビ・ベルツァ

その他の品種/ピレネー山脈のフランス側にある産地、ジュランソンと同じ品種も認定品種:イスキリオタ(グロ・マンサン)、ムネ・マハッツァ(フォール・ブランシュ):他にリースリング、シャルドネ、ソーヴィニヨンも可

(黒ブドウも混植している畑もあるので、白と黒を混醸していることもある)。

赤ワインはアラバ南部のリオハに近い場所、ビルバオ近くのビスカイアで多い。

 

「DOチャコリ・デ・ゲタリア」

ギプスコア県。チャコリを最初に復活させた県。1990よりDO。

3つのDOの中で最大規模。生産者は29社。栽培の98%がオンダラビ・スリ。比較的爽やかで酸とミネラルが特徴のものが多い。

 

「DOチャコリ・デ・ビスカイア」

2番目にチャコリを復活させた県。1994年にDO認定。グッゲンハイム美術館。昔は造船業で栄えた場所。秋には南の内陸からドライな風が吹き、ブドウが成熟度をあげる。酸とミネラルは維持しつつ、より厚みのあるタイプが多く、微発泡性も少ない。

 

「DOチャコリ・デ・アラバ」

最後に復活を果たした。DOができるまでブドウ畑は合計で4、5ヘクタールのみとなっていた。DOは2002年より。

内陸のため、年間降水量は899mmと少ない。乾燥した南風が170日間吹き続ける。酸とミネラルは維持しつつ、より厚みのあるタイプが多く、微発泡性も少ない。

 

情報提供:11月10日開催/スペイン大使館経済商務部主催「スペイン白ワインの新たなトレンド チャコリ Chacoli / Txakolina」講師:ヴィノテーク シニア・エディター 蛯沢登茂子氏

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

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