ワイン&造り手の話

表紙

カリフォルニアのワインが好きな人なら「ハインツランチ シャルドネ」と聞くと目が輝いてしまうのではないでしょうか。リトライ、ウイリアムズ・セリエム、フラワーズ、ダックホーンなどに極上のシャルドネを供給しているハインツランチのチャールズ・ハインツ氏が、独自のワインを造っています。日本市場を除くと、メーリングリストでの販売しかしていないようです。

夫妻

<ハインツランチ>

妻のカレンさんと来日したチャールズ・ハインツ氏は、5人の娘と6歳の息子、合計6人もの子供を持つ、ビッグパパです。畑仕事がメインですから、がっちりとした体格で、いかにも頼もしそうな姿ですね。

 

ハインツランチは、カリフォルニアの中でも海寄りのソノマカウンティのオクシデンタルで1912年に開園されました。現在のオーナーであるチャールズ・ハインツ氏の祖父が始め、さまざまな果物を栽培してきた土地です。ブドウ栽培は、チャールズの代になって1982年から。ここは標高が300mあり、海からは10キロほどのため、寒流の影響を受けて日中は温かく夜は涼しい、という気候条件です。

 

「AVAでいうと、グリーンヴァレー、ソノマコースト、ロシアンリバーヴァレー、どれを名乗ってもよい立地にあり、涼しさが私たちのプレミアムクラスのワインにとてもよい影響を与えている」といいます。

 

さて、ハインツでは名だたるワイナリーにブドウを供給するだけでなく、総生産量で1,200〜1,500ケースのみという少量ではありますが、自らワイン造りを始めました。シャルドネは2001年ヴィンテージから、ピノ・ノワールは2003年から。そして最近では、シラーの赤、ピノ・ノワールから造るロゼも始め大人気な上、生産数量はわずか50ケースと限られていますが、シャンパーニュと同じ方法の瓶内二次発酵で造ったヴィンテージスパークリングを近々リリースするそうです。

ワイン造りについては、旧友であり、フラワーズでヘッドワインメーカーをしていたコンサルタントのヒュー・シャペル氏にお願いしているということです。

 

<ブレンドと単一畑もの>

チャールズ・ハインツには、ふたつのラインのワインがあります。ブレンドものと単一畑もの。

ただし、前者はブドウ品種を「ブレンド」しているのではなくて、シャルドネの場合には「2つの畑をブレンド」し、ピノ・ノワールの場合には「複数のピノ・ノワールのクローンをブレンド」している、という意味でした。

 

シャルドネの場合には、「ハインツランチ」「シャビー・ヴィンヤード」というふたつの畑があり、単一畑ものとは「ハインツランチ」のブドウだけを使用。「ハインツランチ」は1982年植樹ですから樹齢32年(クローンはDavis4/ドロップ・イリゲーション)になり、ここの看板畑です。4.5キロほど離れた「シャビー・ヴィンヤード」は、樹齢40年ほど(クローンはRued/ドライ・ファーミング)の畑で、こちらのブドウを食べると「マスカットや花の香りがする」そうです。

 

ピノ・ノワールは、ハインツランチの中にあるアッパー・ブロックとローワー・ブロック、ふたつの区画で栽培されています。複数のピノ・ノワールのクローンが植えられている中、スワン・クローンだけを選りすぐって造るのが単一畑ものです。

「ブドウを実際に食べてみて、香りや味がクローンごとに違うのを確認することが大切」だとハインツ氏。さすが辣腕の栽培家らしいお言葉です! このスワンというクローンのピノ・ノワールは「ジューシーで、とてもフルーティーで好き」なので、もともとアッパー・ブロックには5種類のクローンを植えていたけれど、これだけ新たにローワー・ブロックに少量植えることにしたそうです。

このお気に入りのスワン・クローンの出所は定かではないようですが、1960年代に何度もフランスを訪問していたパンナム勤務のパイロット スワン氏が、どこかから枝を切って持ち帰ってしまった、という経緯のようです。どこだったのでしょうね。

試飲中

<ワインの味わい>

ブレンドしたシャルドネ「ダッチビル クリーク ロシアンリバーヴァレー シャルドネ2012」は、マンゴーやパイナップルを含め熟した甘い果実の香りが豊かで、丸みのあるなめらかな味わいながら、最後にきれいな酸が感じられます。

 

ブレンドしたピノ・ノワール「ダッチビル クリーク ロシアンリバーヴァレーピノ・ノワール2012」は、ラズベリーやなめし革など、フローラルでフレッシュで可憐な香り。繊細ながら果実の熟度もしっかりと感じられる味わいで、しっとりとした心地よい食感です。

 

「ハインツランチ ソノマコースト シャルドネ2012」は、タイトでかっちりとした香りです。バニラ、黄桃、柑橘類、トーストなどの香りが口の中でも広がり、ゆったりとした中にもフレッシュな酸が芯を形成しています。出るところは出て、ひっこむところはひっこんでいる綺麗な体形、といった印象です。

 

「ハインツランチ ソノマコースト ピノ・ノワール2012」は、熟したラズベリーやチェリーの凝縮感があり、バニラなどのスパイシーさも加わる上品な香りで、とてもなめらかな食感がとても印象的です。集中力と酸のバックボーンがほどよいバランスで、ピノ・ノワールらしい妖婉さが感じられます。

 

「ハインツランチ ソノマコースト シラー2012」は、ハツラツとした香りです。チェリーやブラックベリーにスパイスを加えたような、黒い果実のイメージながらエキスが濃すぎることのないクリーンな香りです。味わいも、凝縮感がありながら酸もしっかりしているので、全体的にぽっちゃり系ではなくタイトな印象を受けます。

ちなみに、このシラーの畑は2002年植樹です。3種類植えられたクローンの中に、エルミタージュのジャン・ルイ・シャーヴのクローンがあるといいます。「アメリカでシャーヴのシラーを栽培しているのは4軒だけ」とのことですよ。シャーヴのファンにも気になるところですね。

 

洗練されたカリフォルニアのワインの世界を、覗いてみてはいかがでしょうか。

(輸入元&写真提供:TY Creation Inc./お問い合わせ info@tycreation.com)

(tex t by Yasuko Nagoshi)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Related Article