ワイン&造り手の話

人物

アンデスといえば、サイモンとガーファンクルの「コンドルは飛んでいく」を思い出さずにはいられません。名曲ですよね。「ミラマン」という名のチリワインは、まさにアンデスの麓で造られるのですが、「黄金色のコンドル」を意味する言葉なのだそうです。しかも、古い家屋がある場所は、ラシエンダ・エル・コンドルという地。2011年から、ここでコンサルタントをしているステファノ・ガンドリーニ氏が来日していました。

 

この人物、チリ生まれチリ育ちなのですが、ワイン造りはチリとボルドー、そしてイタリアのピアチェンツァでも学んでいます。それにワインメーカーとして、チリ、アルゼンチン、アメリカ、フランス、イタリアと、多くの産地で研鑽を積んできました。故郷のチリを客観的に俯瞰しているようなところがあるのは、そのためかもしれません。

 

ソーヴィニヨンこの「ミラマン」は、チリで有名なカネパ一族が1940年代にブドウ畑を購入し、新たに畑を買い足し、大規模なワイナリーに成長しました。中級レンジの「エステート・リザーヴ」のクラスはフレッシュなソーヴィニヨン・ブランや充実感のあるカベルネ・ソーヴィニヨンなど、リーズナブルで品種特性がよく表現されたアイテムが多く、気軽に楽しむのによい銘柄が揃っています。

 

その格上となる「リミテッド・リザーヴ」は、1940年代、1950年代に植樹されたブドウ畑だけから造られる品種別のシリーズです。それぞれ6,000本ずつほどしか生産していないようですが、このラインはじっくり味わいたいものです。

 

ボトル&グラス特に印象に残ったのが「リミテッド・リザーヴ マルベック2013」と「リミテッド・リザーヴ カベルネ・ソーヴィニヨン2012」。どちらも若々しくてまだ少し閉じていましたが、マルベックはスミレや赤い果実の香りがきれい。カベルネ・ソーヴィニヨンは黒い果実の香りが強すぎず、でもストラクチャーのしっかりした味わいでした。

 

チリに最も真価を発揮している品種は何だと思う? と尋ねてみると「カベルネ・ソーヴィニヨン」と、即答でした。ただ、本当に美味しいカベルネ・ソーヴィニヨンを造るには、多くのことに気を配らなければいけないようです。

 

そういえば、チリのカベルネ・ソーヴィニヨンによく感じられるミントのようなユーカリのような清涼感のある香りについても聞いてみました。ステファノさんの見解では「ストレスがかかりすぎた上に過熟した場合にその香りが出る」とのこと。もちろん、ユーカリの樹がブドウ畑のそばにある場合も、その手の香りが出る、というのも定説です。ちなみに、ミラマンのカベルネ・ソーヴィニヨンにはまったくこの手の香りは感じられませんでしたよ。

 

チリは一度訪問したことがありますが、その時はコンドルに出くわさなかったので、次回行く機会があれば是非どこかで見たいものだと思います。

(輸入元:ピーロート・ジャパン)

 

<オマケ>以下、プロ向けに少し技術的な話を記しておきます。

チリは、日中には海からの涼風が吹き、夜間はアンデスから吹き下ろす冷風もあり、風通しがよい環境下にあります。乾燥し日較差が大きいのも特徴です。ただ、基本的には日照量がとても多いので、ブドウが焼けてしまわないように気を配る必要があります。「房まわりの葉は決して取り除かない」といいます。午後2時から5時までは、光が強すぎるのと水不足で光合成ができないとか。

加えて「アルコール度数も上がりやすく、ドライなタンニンが出やすい」ため、いかに繊細なタンニンを得ようかと、工夫を凝らしているようです。そのひとつが、低温でナチュラル・イーストでゆっくり発酵を始めること。赤ワインの話ですが、最初の設定は5度だといいます。発酵期間は1ヶ月。こうすると、アルコールが果皮から多糖類を抽出してくれるので、タンニンをソフトにする効果があるのです。そして発酵後にマイクロ・オキシジネーションを少々。分子の重合化ができる最低限の量だけ行うことも、繊細なタンニンを得るひとつの方法です。

(tex t & photo by Yasuko Nagoshi)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Related Article