ワイン&造り手の話

ヴィラ・マリア2009レ・トロワ・クロワ ヴィラ・マリー2009 Les Trois Croix “Villa Marie” 2009

「15年前にここ、フロンサックで父とワイン造りを始めたときから、いつか面白いワインを造りたい! と二人とも考えていました。そのことについてお互いに話したことはありませんでしたけれどね。面白いワイン? つまり、コストを考えないで造りたいように造るワイン、ということです」。父パトリック・レオンが夢を叶えるために購入した「レ・トロワ・クロワ」の後継者ベルトラン・レオンは、いかにも楽しそうです。

「マリー」と聞くと女性の名前なので、母上もしくは奥方の?と思いましたが、そうではありませんでした。畑が属する19世紀に建てられた家屋に、既に”Villa Marie”と刻まれていたから。「ただ、偶然にも私の長女もマリーという名前なんですけどね」と、ベルトラン。ちょうどよかったですね〜。

それで、何が特別かというと、ぶどうの品質。まずよいワインを造るためにつぶさに畑を見て回り、10年ほどでようやく細かい特性を把握したというベルトラン曰く「最もよい区画の中で、最高のぶどうだけ」を選んだのだといいます。樹齢60年のメルロとカベルネ・フラン(2009年は前者が76%)。このぐらいの年になるとつけられる房の数は自ずと限られ、若い樹が6から7房ぐらいに対して、半分ほどの数で、一房の大きさも随分小さくなるようです。

もちろんすべて手摘みで、バリックを縦にして直接果粒を入れてその中で醸造。トスカーナで「テスタマッタ」を造るビービー・グラーツなどもしている方法で、マイクロヴィニフィケーションと呼ばれています。利点を聞くと「より濃縮したバランスのよいワインになる」。少しピジャージュを施して2週間ほどしてから蓋をして、それから通常のバリックの姿のように横にして2ヶ月マセラシオン。1日に4回、ぐるりと回転させる。その後は、一旦取り出して果皮と分けてから、同じ樽で18ヶ月熟成。

こうやって手塩にかけて育てられたマリー2009は、あらかじめデキャンタしてくれていましたが、まだ香りは閉じていて、とてもタイト。味わいはとてもなめらかで木目が細やかで、バランスがとてもよく、豊かながら基本的には上品なスタイル。メルロが主体ながらこのタイトさが醸し出されるのは、やはり土壌が影響しているのでしょう。ポムロールは粘土が多いのですが、こちらは石灰質も豊富で、特に「レ・トロワ・クロワ」の畑の場合「表土の粘土は40センチだけで、その下はすべて石灰質なのだといいます。「オーゾンヌやクロ・フルテが同じような土壌ですね」とベルトラン。

ワインの歴史の中で、ある時から陰に隠れる存在になってしまったフロンサックの本当のよさを、より多くの人に伝えたい。その気持ちが、彼の原動力になっているようです。

Data:シャトー・レ・トロワ・クロワ ヴィラ・マリア2009  Château Les Trois Croix “Villa Marie” 2009
未輸入:ただし「シャトー・レ・トロワ・クロワ」の輸入は ミレジム

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