ワイン&造り手の話

日本の夏! 日本の梅雨! この島に住む限り毎年訪れる試練の時期です(北海道と沖縄に住む方には、共感してもらえないかもしれませんけれどね)。だから、先だって「日本にとっても興味があって、いつか旅行に行きたいんだけれど、どの季節が一番お薦め?」と、イタリアの人に聞かれて、「お薦め……というよりも、6月から9月半ばだけは避けたほうがいいかも。雨の季節が1か月あるし、夏は最悪。湿度が高くてきっと息ができないわよ」と、言っておきました。

 

でも、避けられない私たちはしょうがありません。不快指数の高い季節を、なるべく快適に過ごすように工夫するしかないのです。

ということで、こういう季節にピッタリな白ワインとして、ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランをお薦めします。風通しがよく、自然がたっぷりなニュージーランドの風景を思い浮かべるだけでも、少し気持ちは爽やかになりそうです。

 

ニュージーランドワインといえば、まず筆頭に挙げられるのが、ソーヴィニヨン・ブランです。ちなみに、今年2015年のニュージーランドの収穫状況速報によると、収穫量が随分少ないことに加えて、需要は伸びているので、ソーヴィニヨン・ブランが品薄になるかもしれない、と警告していました。あるいは、価格に影響してしまうかもしれないとか。これは、正式な発表がでるまで気をもむことになりますね。新情報を待ちたいところです。

 

<マーティンボロー、マールボロ、セントラル・オタゴ>

ニュージーランドにも、北島と南島があり、いくつもワイン産地が出来ていますので、地域別にソーヴィニヨン・ブランを3種類比べてみることにしました。

 

北島の南端、ワイララパにあるマーティンボローからは、この地のパイオニア「マーティンボロー・ヴィンヤード」。

南島の北端、最もソーヴィニヨン・ブランで有名な産地マールボロからは、ニュージーランドワイン界に革新をもたらした「フロム」。

南島の南部で、世界最南端のワイン産地でもあるセントラル・オタゴからは、この地のパイオニアでありながら、他のセントラル・オタゴの生産者とはまたちょっと色の違う「リッポン」。

 

ニュージーランドは南半球にあるので、北半球の常識とは逆で、北に太陽があり、基本的に北部のほうが暑く、南部のほうが涼しい、と考えるのが普通です。

ところが、この3種類のソーヴィニヨン・ブランの味見をすると、「マーティンボロー・ヴィンヤード」が一番爽やかで、「リッポン」がまったりとしてよく熟した果物を思わせる香りや味わい感じです。

じゃあ、北半球と同じじゃないか? ということになりますが、これには理由があるのです。

 

NZ地図

3つの産地のおよその位置にマークしました。緑がマーティンボローのあるワイララパ。黄色がマールボロ。赤がセントラル・オタゴ。

「マーティンボロー・ヴィンヤード」のあるワイララパ(緑色の印)は、海に向かって谷が走っています。そして、その先の海をずーっと南に下がると、そこには南極があります。だから、谷を通って南極からの涼しい風がワイララパには入り込んでくるため、白も赤も比較的エレガントな香りや味わいのものができあがる、というわけです。

 

一方「リッポン」のあるセントラル・オタゴ(赤い印)は、ニュージーランドのワイン産地の中で、唯一内陸にあります。海の影響を受けにくく、昼夜の寒暖差が激しいので、ぶどうがとてもよく熟します。リッポンのある地区は湖があるので、微気候という部分では一般的なセントラル・オタゴとは異なりますが、それでも夏の日照時間がとても長いのでぶどうが完熟するのです。

 

そういうわけで、それぞれ個性がはっきりと違いますから、飲み分けるのをお薦めします。

 

「マーティンボロー・ヴィンヤード」は、爽やかで果実味が豊かで、いつでも美味しく飲めるタイプなので、ランチ、アペリティフ、あるいはちょっと避暑地へ行く時のお供などに。

「フロム」は、落ち着きがある香りと味わいで、ちょっぴり高めの温度帯のほうが美味しそうなので、家飲みで、温かい鶏肉料理の相方に。

「リッポン」は、まったり感が出ているので、もちろん食中酒としてもお薦めですが、食後のゆったりとした時間帯におつまみと一緒に、というのも和みそうな気がします。

 

これからやってくる、長い梅雨&蒸し暑い夏対策に、是非使ってみてください!

 

<もう少し詳しい香りや味わい>

NZマーティンボローテ・テラ ソーヴィニヨン・ブラン2014 <マーティンボロー・ヴィンヤード> 

Martinborough Vineyard “Te Tera” Sauvignon Blanc 2014

清涼感にあふれる香り。グレープフルーツ果汁に、すりおろしたスダチの果皮と果汁を混ぜたような、爽やかな香りた立ちのぼる。少し白い小さな花やシブレットのようなニュアンスも感じられる。

なめらかなアタックで、酸はとてもフレッシュ。清々しい味わい。夏みかんやグレープフルーツのようなジューシーさも。生牡蠣、イカのサラダ、魚介類のパスタなど、フレッシュな魚介類のお伴にしたい。ランチにも気持ち良さそう。泡立ちがあるわけではないけれど、クリスピーさを感じる若さがとても心地よい。

 

NZフロムラ・ストラーダ ソーヴィニヨン・ブラン2014 <フロム> 

Fromm “La Strada” Sauvignon Blanc 2014

落ち着きのある香り。熟したグレープフルーツにスモーキーさが加わり、厚みのある味わいを予感させる。

味わいも落ち着いている。なめらかなアタックで、全体に厚みがあり、スパイシーさが口中でも広がる。酸もフレッシュながらゆったりしているので、少し高めの温度で飲むのがお薦め。

焼き鳥、鶏のグリル、白身魚のグラタンなど、温かい料理と相性がよさそう。

 

NZリッポンソーヴィニヨン・ブラン2013 <リッポン> 

Rippon Sauvignon Blanc 2013

まったりとした厚みのある香り。熟したグレープフルーツに、セミドライなマンゴーやパイナップルを加えたような、ふっくらとした香り。蜂蜜も香る。

まろやかなアタックで、厚みがあり、ふっくら。ボリューム満点。味わいはドライだが、まったり感はある。タイムの香りもほんのりと感じる。

クリーミーなオイルソースの、旨みのある料理が食べたくなる。魚介類のアクアパッツァ、魚介類か鶏肉のパエリヤと。

(輸入元:ラック・コーポレーション)

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

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