ワイン&造り手の話

デュジャック表紙

デュジャックといえば、ブルゴーニュ・ワイン好きなら皆が憧れる造り手のひとつです。とても格調が高く、ある意味で敷居が高いドメーヌですから、なかなかお目にかかれないかもしれません。私など、デュジャックのジャック・セイス氏がDRCのオーベール・ドゥ・ヴィレーヌ氏とともに始めた、南仏のトリエンヌを飲んで、やっぱり美味しいワインを造る人たちだなあ、と感心し、本家本元のワインの味見をしている図を想像してみたり……。

今回は贅沢にも、デュジャックの本家ドメーヌ・デュジャックと、デュジャックのネゴシアン部門デュジャック・フィス・エ・ペールを比較試飲してみました。ヴィンテージはどちらも2012年です。

 

<ドメーヌ・デュジャックとデュジャック・フィス・エ・ペール>

デュジャックについてはたくさん書かれていますので、ここで多くを語る必要はないと思います(ドメーヌ解説はこちらを)。

ちょっとおさらいだけ。

パリの製菓会社を売却してブルゴーニュへやって来た、ワインをこよなく愛するジャック・セイスが1968年に興したドメーヌです。当時はあまり表舞台に立つことのなかったモレ・サン・ドニ村を一躍有名にした人物で、全房発酵、無清澄・無濾過という造り方でも有名です。少量ですが、モレ・サン・ドニの白ワインも人気ですぐに完売してしまうほど。

 

2000年には、息子のジェレミーと共にネゴシアン部門のデュジャック・フィス・エ・ペールを立ち上げました。

ジェレミーは、1994年にドメーヌの仕事に参画し、97年までは父ジャックと二人三脚で、そして98年からは主導権をとるようになっているとか。99年からはそれまでの全房発酵100%から、ヴィンテージの状況や畑によって除梗率を変えるようにし始めたと聞いています。

色はそれほど濃くはないけれど、華やかでうっとりするような香り、そしてシルキーで、骨格のしっかりとした長期熟成型のワイン、というデュジャックのスタイルそのものはジェレミーの代になっても大きくは変わっていない、というのが大半の評論家の見解です。

 

ちなみに、今実際に栽培と醸造の現場に立っているのは、父ジャック、息子のジェレミー、そしてジェレミーの妻でカリフォルニア出身の醸造家ダイアナ、この3人のようです。伝説のドメーヌにも、時代とともに緩やかな変化があるのは当然の流れですね。

 

さて、試飲した2アイテムはこちらです。

 

<ジュヴレ・シャンベルタン2012 デュジャック・フィス&ペール>

デュジャック/フィス&ペール明るめのルビー色で、ほのかにくすみが感じられます。

香りはまだ少し閉じ気味で若々しく、上品で質感があります。フレッシュなラズベリー、レッドカラント、なめし革。ほんのりとスパイス。時間と共にゆったり開き始めて、清楚な小さな赤い花のニュアンスも出てきました。

味わいは、繊細なアタックで始まり、旨みを感じるきれいな酸、しなやかできめ細やかな食感で、タンニンもとても細やか。

 

ともあれエレガントで、すべてが一体化していて食感がとても心地よく、じわりじわりと旨みが出てくるニュアンス。しなやかなのに深みがある、滋味豊かな味わいです。

 

鰹だしを使った豚の角煮、あるいは牛タンシチューなど、とろりとした食感の料理と合わせたい、という印象です。

2012年 参考小売価格 7,000円(本体価格)

 

<モレ・サン・ドニ2012 ドメーヌ・デュジャック>

デュジャック/ドメーヌ明るめのルビー色で縁はピンク。フィス&ペールより少し濃いですが、極端な違いは感じられません。

香りは華やかで若々しく、強度でいえばフィス&ペールの2倍ほどに感じられます。

少し還元状態にありますが、次第にラズベリー、チェリー、レッドカラントといった果実の香りがし、上品ながら濃縮感が感じられます。他にも、なめし革やスパイス香も加わり、栓を開けたてで低めの温度でも、香りが湧き出てくるようなニュアンスです!

味わいは、アタックがとてもなめらかで、厚みがあり、ベルベットのような食感。酸もタンニンも一体化して、やわらかささえ感じられ、深い味わいです。タンニンは細やかでとても豊かで、しっかりとしたストラクチャーを形成していますが、それでもアグレッシブな要素はなく一体感があります。余韻も長く、今後熟成して妖婉さが出てくるのがとても楽しみです。

 

これはレストランでじっくり飲みたいと思わせるワインです。上質な赤身肉を少々、もちろん美味なソースと共に。

2012 年 参考小売価格 10,000円(本体価格)

 

 

<デュジャックの魅力>

村が異なるという点はさておいて、フィス&ペールとドメーヌの共通点として挙げられるのは、香りが華やかでエレガントで、味わいに素晴らしい一体感があること。どちらもとても若い状態ながら、バランスが秀逸だ、という点でした。同じ人の手によるものだということに納得します。

 

フィス&ペールに用いているブドウは、他者の畑でありながら管理はすべてドメーヌのスタッフで行っている、という情報です。ただやっぱり、それぞれの液体の中に詰め込まれている様々な要素は随分異なります。あくまでも感覚的なものですが、倍ほど違うという印象です。きっとこれが寿命の長さに繋がってくるのでしょう。

 

端的にいえば、やっぱりデュジャックは素晴らしい! というのが正直な感想でしょうか。上質なワインを口にできる口福感を、存分に味わわせてくれる造り手です。

2012年の生産量は相当少ないようですから、気になる方はお早めに!

 

<付記:2012年の気候>

近年ブルゴーニュ地方は不作続きといわれています。実際に2007年から毎年生産量が平年割れ(2009年を除く)、特に2012年は相当低収穫量となりました。その結果、耐えきれず値上げをする造り手が増えたのをご存知の方が多いのではないでしょうか(残念なことに、日本の場合は為替レートも影響しています)。ただし、2012年は品質的には素晴らしい結果だったと報告されています。

2012年の気候をまとめると、こんな感じになります。もちろんブルゴーニュの中でも村によって微妙に状況は異なりますが。

2月に寒波が来たものの全体的に穏やかな冬で、2月末頃には春の到来。そして、3月には夏のような日もあったが、その後、4月、5月は涼しく湿度も高い毎日が続いた。これが、多くの病害をもたらし、更に開花にも影響を及ぼすことになった。6月にも雨が多く、7月半ばまで同じような状況が継続。この時点で、落果や結実不良が多かったため、収穫量は激減するという予測がたった。ただ幸いにも、8月は嵐もあったものの気温の高い日が多く、9月上旬まで暑い毎日で、中旬から秋らしくなった。

よく熟し、小粒で果皮のしっかりとしたブドウが収穫できたところが多いようです。この結果、色も香りも充分にワインに反映されたのではないでしょうか。いくぶん開きが早い年だと記している人もいます。

ただ繰り返しになりますが、全体に収穫量が非常に少ない年で、加えて一部で雹害にあった畑では極端に収穫量が減ってしまったり選別に手間がかかったようです。

(輸入元:ラック・コーポレーション)

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

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