ワイン&造り手の話

銀座の名店「バードランド」の店主、和田利弘さんはこう言います。「酸がきれいでお腹がすくんですよ。だからたくさん焼き鳥を食べてもらえる」。だから2008年からずっと「アルフレッド・グラシアン」のスタンダード・キュヴェ「ブリュット ノン・ヴィンテージ」をグラス・シャンパーニュとして使い続けているそうです。そしてその生産量は、シャンパーニュ全体のわずか0.1%だけです。

<アルフレッド・グラシアンの特徴1>

シャンパーニュ地方の中心地エペルネで1864年に創業したメゾンで、とても伝統的な造り方をしていることで知られています。そのひとつが「古い小樽による発酵と熟成」を経たワインで造られていること。ブルゴーニュ地方のシャブリの造り手が5年以上使用した小樽を購入したものを利用しています。

小樽による発酵と熟成の利点のひとつは、木樽の壁面を介して極微量の空気とゆっくり接触することでワインの味わいがまろやかに広がり酸もソフトになることです。そして、ここは代々付き合いの続いている小さな栽培家からブドウを購入しているのですが、その栽培家の畑ごとにワインの仕込みができること。ですから、樽貯蔵庫に所狭しと積まれた樽の側面を見ると、チョークで暗号のようなものが書かれていて、どこの誰のブドウから造ったワインが入っているのかがわかるようになっています。時には栽培家の人が訪ねてきて、自分のブドウがどのように成長したのかと、確認のために醸造長などと共に試飲をするそうです。

シャンパーニュの中で、こうして小樽ですべてのワインを発酵・熟成させているメゾンは数えるほどしか存在しません。

<アルフレッド・グラシアンの特徴2>

このメゾンでは、100年以上続いていることがいくつかあります。先ほどの契約栽培家との付き合いが、どこも大半が100年以上。醸造責任者を務めるジェジェ家とも100年以上。そして伝統的な造り方も100年以上続いていて、小樽での発酵と熟成以外にも、もうひとつ守っている伝統があります。

それは「マロラクティック発酵」という手段をとらないことです。これは、ワインに含まれる酸のひとつ、リンゴ酸を乳酸に転換させる方法で、鋭角的に感じる酸をまろやかな酸にします。昔はどのシャンパーニュでもマロラクティック発酵はしませんでした。というよりも、気温が低いので自然には起こらなかった、というほうが正しいのかもしれません。ただ、近年ではほとんどの造り手がまろやかさを求めてマロラクティック発酵を行うようになりました。

ところが、アルフレッド・グラシアンでは一貫して元来の酸を保ち続けています。その代わり、件のように小樽での発酵と熟成によってソフトさを醸し出したり、スタンダードのノン・ヴィンテージでさえ瓶内熟成を48ヶ月という長期間行って酸が穏やかになるのを待ったり。「フレッシュさとフルーティーさを維持するために」頑なに守り続けていると、CEOのオリヴィエ・デュプレさん。独自の美味しさを保つための頑固な姿勢は、見ていて清々しいですね。

<焼き鳥との相性>

さて、気になる焼き鳥との相性は? 一言でいえば「素晴らしい!」でしょうか。和田さんがおっしゃる通り、何せ食欲が湧くわけですが、それぞれの組み合わせもとても興味深いものでした。

例えば、鶏の砂肝や皮といった部位から作られた付きだし4種は、スタンダードの「ブリュット ノン・ヴィンテージ」と。次に、かつて1930年代にパリの「トゥール・ダルジャン」から「牡蛎に合うシャンパーニュを造ってくれ」という要望を受け、グラス・シャンパーニュとして取り扱われたという「ブリュット ブラン・ド・ブラン グラン・クリュ」は、ワサビをのせたささ身、そして九条ネギと手羽元と。甘味調整をしていない「ブリュット ナチュール ノン・ヴィンテージ」は、レバーと。「ブリュット ロゼ ノン・ヴィンテージ」は、ツクネと、梅とシソをのせたささ身と。プレステージ・キュヴェの「キュヴェ・パラディ・ブリュット」はネギマと。

人それぞれ好みがあると思うのですが、個人的には「ブリュット ブラン・ド・ブラン グラン・クリュ」と、ワサビをのせたささ身。「ブリュット ロゼ ノン・ヴィンテージ」と、梅とシソをのせたささ身。この組み合わせがとても気に入りました。

少なくともグラス・シャンパーニュは「アルフレッド・グラシアン」で変わりないようですから、銀座「バードランド」で焼き鳥とシャンパーニュを満喫してはいかがでしょうか?

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

これがグラス・シャンパーニュとして使われているブリュット。

これがグラス・シャンパーニュとして使われているブリュット。

カテゴリー スパークリングワイン
ワイン名 ブリュット ノン・ヴィンテージBrut NV
生産者名 アルフレッド・グラシアン Alfred Gratien
生産年 NV
産地 フランス/シャンパーニュ地方
主要ブドウ品種 シャルドネ主体+ピノ・ノワール+ピノ・ムニエ
希望小売価格 7,350円
輸入元/販売店 中島董商店

「牡蛎に合うシャンパーニュ」として誕生したブラン・ド・ブラン。

「牡蛎に合うシャンパーニュ」として誕生したブラン・ド・ブラン。

カテゴリー スパークリングワイン
ワイン名 ブリュット ブラン・ド・ブラン グラン・クリュBrut Blanc de Blancs Grand Cru
生産者名 アルフレッド・グラシアン Alfred Gratien
生産年 2006
産地 フランス/シャンパーニュ地方
主要ブドウ品種 シャルドネ
希望小売価格 11,550円
輸入元/販売店 中島董商店

超辛口仕上げのブリュット・ナチュール。

超辛口仕上げのブリュット・ナチュール。

カテゴリー スパークリングワイン
ワイン名 ブリュット ナチュール ノン・ヴィンテージBrut Nature NV
生産者名 アルフレッド・グラシアン Alfred Gratien
生産年 NV
産地 フランス/シャンパーニュ地方
主要ブドウ品種 シャルドネ主体+ピノ・ノワール+ピノ・ムニエ
希望小売価格 7,350円
輸入元/販売店 中島董商店
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