ワイン&造り手の話

ドメーヌ・ド・ベレーヌ当主、ニコラ・ポテル。西麻布のフレンチ「ル・ブルギニオン」にて。シェフの菊地さんともお友達のようです。

<ニコラ・ポテルについて>

ニコラ・ポテルさんは、「メゾン・ニコラ・ポテル」の人でしょう? と思っていらっしゃる方が多いのではないかと思いますが、実はちょっと複雑です。ですから、まずは彼の歴史を少々。

1964年にブルゴーニュへ移住してきたニコラ・ポテルの父ジェラールは、ヴォルネイ村の有名なプス・ドールで醸造長として活躍します。その株式も半分所有し、まさにプス・ドールの顔となっていたにも関わらず、1997年に父が急逝してしまいます。それを機にニコラは株式を売却して、既に96年に父と立ち上げていた独自のネゴシアン「メゾン・ニコラ・ポテル」に専念することにしたのです。

「ドメーヌ」が自社畑のブドウのみから造るのに対し、「ネゴシアン」は他者からもブドウを購入できるわけですが、ニコラ・ポテル曰く「当時はすべてブドウで購入するのは珍しかったんだ」と言います。つまり、多くのネゴシアンは既に出来上がったワインや、搾ったあとの果汁で購入していたということ。ニコラはブドウの状態で入手することにこだわりました。そして様々なこだわりの結果、質の高い銘柄を多く輩出して評判を得るわけです。

ところが、2004年に「メゾン・ニコラ・ポテル」を大手に売却することになってしまいました。2008年まではそこでワインメーカーとして仕事を続けましたが、それで収まるニコラではありません。2005年から畑を少しずつ購入し始めて、2008年にネゴシアン「メゾン・ロッシュ・ド・ベレーヌ」を立ち上げ、同時に自社畑ものの「ドメーヌ・ド・ベレーヌ」のリリースも始めることになり、現在に至ります。

どうして自分の名前を使わないのか? それは、今でも「ニコラ・ポテル」の名前はネゴシアン名として継続して使用されているからです。オーナー会社は何度か変わっているようですが、いわばブランド名となってしまっているため、本人でさえ使用権がないわけです。ちょっともどかしい状況ですね。

<ベレーヌについて>

さて、現在の彼の仕事はすべて「ドメーヌ・ド・ベレーヌ」と「メゾン・ロッシュ・ド・ベレーヌ」に集約されています。このふたつのちがいは、使うブドウが自社畑に付属しているかそうでないか、という点で、気持ちの入れ具合は同様です。ただし、前者のほうがより細かな配慮が行き届くのは否めません。

22ヘクタールある自社畑の管理は基本的に有機栽培。「エコセール」の認可も取得しています。「戦後の量産体制で、畑が農薬漬けになっていたから、本来の姿に戻るには時間がかかると思う」が、できることはすべて行いたいという意向で、世界的に有名な農業技師で有機栽培の第一人者でもあるクロード・ブルギニヨンの息子、エマニュエルの協力のもと、土壌の調査やコンポストの研究を続けています。例えば、耕作は3頭の馬で行い、土が踏み固められてしまわないよう、土がより活性化するように心がけています。

あるいは、1904年に植樹されたボーヌ・プルミエ・クリュ・グレーヴの古い区画から、ウイルス・フリーのピノ・ノワールを探して9株を選別。それを湿気耐性のある台木3309Cに接ぎ木して、100本の苗木を2012年に植樹したようです。これも結果が出てくるのは10年以上経ってからですから、ワイン造りは実に気の長い仕事です。他にも色々畑や土壌の話をしてくれたのですが「畑のことなら10時間以上話し続けられるよ」というほどで、話しきれない様子。反対にこちらも、あまり面白いので、ずっと聞いていられたらと思ったのでした。

そして、畑の人だとはいいながら、せっかく丹精込めて育てたブドウですから醸造所でもとても丁寧な仕事ぶりです。例えば、白ワインの圧搾は昔ながらの木製垂直式の圧搾機で、房ごと行います。この利点は、果汁中のコロイド成分が多くなるから。コロイドは抗酸化作用があるので、より酸化しにくいワインにできるのです。そして1日半かけて清澄してから、600リットルのドゥミ・ミュイという中くらいの大きさの樽で自然酵母による発酵。あまりブルゴーニュで聞かないですよね。理由を尋ねると「サンセールやドイツの白ワインのフレッシュさの要因を考えて」のこと。同様に「フレッシュさやテロワールの個性を失わないように」バトナージュと呼ばれる樽熟成中の澱の撹拌も一切行わないといいます。

メゾンとドメーヌの白と赤、それぞれ1種類ずつ味見させていただきました。白はメゾンの「サントーバンVV 2011」とドメーヌの「ムルソー・レ・フォルジュ2011」。いずれもフレッシュ感やバランスよさが印象的で、特にムルソーは本当にピュアなイメージです。重さはなく、新樽100%とはまったく思えませんでした。赤はメゾンの「ヴォルネイVV 2010」とドメーヌの「ヴォーヌ・ロマネ・レ・カルティエ・ド・ニュイVV 2011」。前者が静かに立ちのぼる香りと清楚な味わいなのに対し、後者は華やかなハツラツとした香りで、とてもなめらかな触感とソフトな味わい。実に綺麗な仕上がりです。ちなみに「VV」とはヴィエイユ・ヴィーニュ=古樹のことで、法律で「樹齢何年以上」という縛りはないのですが、ニコラは55年以上のものに表記すると決めています。

2009年ヴィンテージから、それぞれのワインの詳細はボトルの裏ラベルに記載することにしたそうです。「いつも聞かれるから。でも細かい数字を覚えているわけではないから、書いた方が早いでしょ」とのこと。ですから、ベレーヌのワインは裏ラベルもどうぞじっくりご覧下さい。

<輸入元:豊通食料>

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

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