ワインと料理

マデイラワインは、ポルトガル領のマデイラ島で造られるワインですが、フランス料理の「鴨のロティ マデイラソース」といったふうに、ソース名としてご存知の方が多いかもしれません。でも、奥が深いマデイラワインの世界にちょっと足を踏み入れてみると、とっても驚くことが多いのです。家に1本常備しておくと、重宝すると思いますよ。その魅力を少々皆さんにも!

この半年ほどの間に、和食にマデイラワインを合わせる会に2度参加しました。マデイラは基本的に甘い酒精強化ワインですから、和食と合わせる、というイメージがあまりありませんでしたが、実際に試してみると意外に好相性のものが多いことに気がつきます。

マデイラは甘さの度合いや熟成年数などによってとても種類が多いのですが、すべてに共通する特徴は甘いけれど酸味もしっかり保たれているので、後味が爽やかなこと。そしてオレンジピールなどの柑橘類の果皮やドライフルーツのような乾いた果実の香りから、カラメルや黒糖のような甘く香ばしい香りまで幅広い複雑な芳香が閉じ込められていることです。

この特徴をふまえて、実際に相性を確認したものの中から、想像範囲内の順当な組み合わせと、思いも寄らなかった意外な組み合わせに分けてみました。

<順当な組み合わせ タレ系/味噌系/黒糖系>

マデイラワインは長い期間加熱しながら酸化熟成させて造られているので、多くはカラメルや黒糖の香りがして甘味があります。ですから、これに共通項が見いだせる和食独特の味つけ「タレ」「照り焼き」「幽庵」、あるいは「味噌ダレ」「八丁味噌」、そして「黒糖」を使った料理やデザート類と合いそうだと想像できます。

*タレ系

「鰻の蒲焼き」と「バーベイト マルヴァジア10年」、「ボルジェス ボアル10年」→どちらもとても甘いタイプで、マルヴァジアはオレンジ系の香りが秀で、ボアルはまさに黒糖的で重みも感じられます。このどちらでも、鰻の脂とタレの味わいにとてもよい相性です。蒲焼きとマデイラの共通項が引き立て合う、という組み合わせです。

「和牛照り焼きステーキ」と「ドリヴェイラ ヴェルデーリョ コレイタ1994」→こちらも順当な組み合わせ。「ヴェルデーリョ」はミディアム・ドライタイプでそれほど甘い!というタイプではないため幅広い料理に合いやすいのが特徴です。

*味噌系

八丁味噌を使った「加茂茄子田楽」と「バーベイト セルシアル10年」→八丁味噌のコク、甘味、酸味、茄子に含まれる油分が、ドライタイプの「セルシアル」とほどよいバランスで、お互いに融合し合うという効果がありました。

*黒糖系

「葛きり 黒蜜」と「エンリケシュ&エンリケシュ ボアル15年」→ミディアム・スウィートの「ボアル」は、まさに黒蜜のような香りでトロリとした粘性も感じられるので、有無を言わさずピッタリです! 中にはボアルを少し葛きりに加えて、更なる味わいの融合を試している方もいらっしゃいました。

ちなみに、マデイラ島の名産のひとつに黒糖があって、瓶詰めの黒蜜や、黒蜜を使ったクッキーやケーキも売られています。マデイラワインの試飲販売をしているカウンターでも、味見用に黒蜜ケーキが置いてあったり。そう考えると「信玄餅」とも試してみたくなりますね。

<意外な組み合わせ 刺身/魚介/魚卵>

海に囲まれた島で造られるからでしょうか? もともと何ヶ月もかけて海を渡る船の中で過ごしたことが、現在のマデイラワインの造り方の基礎になっているからでしょうか? ともあれ魚介類との相性が抜群なのです。

*刺身

お造りの「マグロ」と「バーベイト セルシアル10年」「バーベイト シングル・ハーヴェスト1999 ミディアム・ドライ」→そもそも「刺身と甘い酒精強化ワイン?」と思われる方が多いのではないかと思います。イメージが合いにくいのですよね。ただ、マグロ、特に中トロぐらいの脂がのったマグロは、マデイラワインと抜群の相性で、マグロの甘味と香りがふっくらと口いっぱいに広がります。マグロ好きの方には、絶対に試してみていただきたいです。特に「セルシアル」というブドウ品種のドライタイプを是非。

*魚介

鰻の「白焼き」と「バーベイト シングル・ハーヴェスト1999 ミディアム・ドライ」と「ペレイラ・ドリヴェイラ ヴェルデーリョ・ハーヴェスト1994 ミディアム・ドライ」→とても自然な相性です。鰻の香ばしさとふっくらした触感が、そのまま生き生きと感じられます。

「タコのサラダ」と「ボルジェス セルシアル10年」→ 和食という範疇には入りませんが、こちらも自然な相性で、タコの旨みが引き立てられます。普通の茹でダコでも美味しいです。

*魚卵

「からすみ」と「ブランディース ヴェルデーリョ10年」→「からすみ」はご存知のように魚卵ですから、これに合うワインは稀なのですが、まったく問題なく美味しくいただけました(これは魚の生臭みについての記事をご参照ください)。マデイラワインの特殊な製法が、魚卵を生臭く感じさせず美味しい組み合わせにしてくれます。

<まとめ>

「ドライ」と「ミディアム・ドライ」、あるいはブドウ品種名が記載されていれば「セルシアル」「テランテス」「ヴェルデーリョ」は、幅広い料理とよく合います。特に、素材に美味しい脂があり、醤油や、ワサビや山椒や胡椒など各種のスパイスも用いた料理がお薦めです。

「ミディアム・スウィート」と「スウィート」、ブドウ品種名記載の場合には「ボアル」と「マルムジー」は、鰻の蒲焼きのような濃厚なタレと脂が組み合わさる料理か、デザート類と。

そしてもうひとつ。マデイラワインは、開けてからも半永久的に香味が変化しないというのも特徴です。しかも常温保存で。造る過程で既に酸化熟成しているからです。ですから扱いが非常に楽なのです。

お正月のおせち料理とも抜群に合うと思いますよ♪

いくつかの銘柄はここで購入できます→「Pontovinho」

<参考>

マデイラはとても種類が多いので、ご興味ある方は是非こちらのサイトをご覧下さい。

IVBAM(マデイラワイン 刺繍 工芸品 協会)の日本語ページ

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

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