ワイン&造り手の話

スペインで、マンサニーリャといえば「ラ・ゴヤ」。

シェリーのイメージは、なぜかダンディーな男性が静かに渋い雰囲気で飲んでいる風景です。もちろん甘口もあるのですが、今回は辛口シェリーにフォーカスします。中でも特別な地区、サンルーカル・デ・パラメダで造られるボーン・ドライなマンサニーリャと熟成を経たタイプをいくつか。造り手さんは、上質マンサニーリャの代名詞として知られる「ラ・ゴヤ」の「デルガド・スレタ」!

<スペイン王室御用達!>

「デルガド・スレタ」。濁音が多くて少し発音しにくいですが、本国でとても人気なのであまり海外で出回っていないとか。スペイン王室御用達のシェリーとなれば、日本でいえば皇室御用達の日本酒、といった位置づけですから納得ですね。それも知らずに最初にここのアモンティリャードを飲んで、辛口ぐあいと軽い熟成感のソフトさのバランスがよく、どんな造り手さんだろうと興味をもったのをきっかけに調べてみると、ここの看板で最も辛口のマンサニーリャ「ラ・ゴヤ」は2004年5月にフェリペ王太子とレティツィア妃のロイヤル・ウエディングでサービスされたのだとわかりました。

でも、それより随分前から王室御用達のシェリーだったようです。そもそも1744年設立の老舗シェリー生産者で、その直系子孫のドーニャ・ドロレス・ニュディ・イ・ディアスが、海軍大尉ドン・ホセ・デルガド・イ・スレタと蒸気船の中で出会ったのをきっかけに(一目惚れでしょうか?)結婚したのが大きな転機になりました。1870年に結婚して、シェリー造りに専念することになったデルガドは、拠点を現在のサンルーカル・デ・パラメダに移したのです。そして記録によると1876年に初めて王室に納めているのですが、正式にスペイン王室御用達となったのは1890年11月7日。アルフォンソ13世とドーニャ・ビクトリア・ウジェニーアの時代です。

ただ、当時はまだ「ラ・ゴヤ」という名前のマンサニーリャは存在しませんでした。1918年に初めてリリースされたこのロング・セラーの名は、当時の人気歌手でダンサーのアウロラ・マニャノス・ハウフレの芸名に由来しています。彼女と親交が厚かったので、マンサニーリャの名前として使う許可を得ることができ、その後も共にプロモーションをしたようです。今では質の高いマンサニーリャの代名詞的な存在として広く知られているので、きっと彼女自身も満足しているにちがいありません。

並べてみると、こんなに色合いが異なります。左から、マンサニーリャ、アモンティリャード、オロロソ、パロ・コルタード。

並べてみると、こんなに色合いが異なります。左から、マンサニーリャ、アモンティリャード、オロロソ、パロ・コルタード。

<マンサニーリャとは?>

シェリーといえば、まずは「フィノ・シェリー」という言葉を思い浮かべる方が多いと思います。しつこいようですが、細長いシェリーグラスを片手に、ダンディーなナイス・ミドルがバーのカウンターで一杯、、、「フィノ・シェリー」と聞くと、こういう光景をどうしても思い浮かべてしまうのです。フィノはシェリーの代表的なスタイルを表す言葉で、若い白ワインに近い色で、ボーン・ドライのキリッとしたシェリーです。

方やマンサニーリャは、フィノと同じ造り方なのですが、できる場所が異なります。マンサニーリャが造られるサンルーカル・デ・パラメダは、通常のシェリーが造られる場所より海寄りにあります。この立地の影響で、フィノよりマンサニーリャのほうが塩っぽさがありカモミール(スペイン語でマンサニーリャ)のような香りが備わるのです。ですから、ちょっと特別なフィノ、ということになります。

<デルガド・スレタ作・辛口シェリーと料理の相性>

以下、「デルガド・スレタ」のラインナップにある、マンサニーリャを含む4種類の辛口タイプをご紹介します。辛口とはいえ、香りや味は随分異なります。

ちなみに合わせた料理(食べ物)は、たとえ料理が苦手なダンディーな男性でも簡単に用意できるおつまみ風にしてみました。

「マンサニーリャ ラ・ゴヤ」

いわゆるフィノと同様の造り方ですが、このラ・ゴヤは5年から6年の熟成を経ているので(普

マンサニーリャに、アンチョビ入りのグリーンオリーブと、ピスタチオ!

マンサニーリャに、アンチョビ入りのグリーンオリーブと、ピスタチオ!

通のマンサニーリャは4年半ほど)、マンサニーリャ・パサダ(パサダ=熟成した)と呼んでもよいようです。

すっきりとした爽やかで上品な香りで、アーモンド、白い花、グリーンオリーブや潮的な香りがして、味わいはボーン・ドライ。酸がキリッとして、塩味も感じられて、後味もずっとドライでアーモンドとオリーブの香りが残ります。

魚介類やナッツとの相性が最高によいといわれていて、小海老のカクテル、ナッツ類、貝類、魚介のフライなどがお薦めです。アンチョビ入りのグリーンオリーブと、ピスタチオと試してみると、とてもしっくりして香りが広がりまろやかな後味となりました。あまりにも相性がよいので、ずっと飲んで食べていそうな危険な組み合わせかもしれません(苦笑)。

「アモンティリャード スレタ」

スモークチーズとスモークタンは、アモンティリャードにもオロロソにもgood!

スモークチーズとスモークタンは、アモンティリャードにもオロロソにもgood!

はじめはマンサニーリャと同様の造りで、途中から酸化熟成させて7〜8年熟成させたタイプ。

少し褐色がかった色合いで、香りもマンサニーリャとは随分ことなります。甘い香りではありませんが、カラメル、コーヒー、炒ったナッツのような熟成感とソフトさが出てきます。味わいはキリッとした酸がありドライですが、少し厚みが増し、日本の食品でいえば甘くない奈良漬けに似ているイメージでしょうか。

白身魚や白身肉を少し香ばしく調理したものや、熟成チーズもよあっそうです。今回はスモークチーズとスモークタンと。どちらも香ばしい香りと強すぎない素材の味がちょうどよいハーモニーです。是非お試しください!

「オロロソ モンテアグード」

これは豚の角煮。煮込み肉料理は、オロロソやパロ・コルタードにお薦めです。

これは豚の角煮。煮込み肉料理は、オロロソやパロ・コルタードにお薦めです。

オロロソは酸化熟成させたタイプで、この銘柄は10〜12年熟成です。

褐色で、アモンティリャードよりもう少し焦がしたニュアンスの香りで、スパイス、ローストしたナッツ、ドライフルーツなどの香りです。味わいは、やはり甘味はなくドライですが、トロリとしたニュアンスもあるので口当たりがとてもなめらかです。カカオ的な残り香も心地よいですね。オロロソ=香り豊かな、という命名に納得します。

お薦め料理はジビエや赤身肉、ビーフシチューなどの煮込み料理、熟成チーズ。オイスターソースを使った豚と野菜の炒め物や、豚肉の味噌漬けもよいと思います。写真は偶然みつけた豚の角煮です(温めるだけで食べられる、簡単おかずです by 鎌倉ハム)。アモンティリャードに合わせたスモークチーズとスモークタンは、オロロソにもお薦めです

「パロ・コルタード モンテアグード」

熟成期間が長いデルガド・スレタのパロ・コルタードと、ローストビーフは好相性です。

熟成期間が長いデルガド・スレタのパロ・コルタードと、ローストビーフは好相性です。

アモンティリャードほどではないけれど、少しだけマンサニーリャのようにして、途中から酸化熟成させたタイプで、これは10〜20年熟成。通常、アモンティリャードとオロロソの中間にあたるソフトさだとされていますが、これはちょっと熟成期間が長いので、より色が濃くなり力強さが出ています。

明るめの焦茶色で、香りもロースト感が増しています。スパイス、ドライフルーツ、ナッツ類などの香りが更に華やかになり、複雑で厚みのある香りです。これも甘くはありませんが、よりなめらかな口当たりになると共に、旨みの要素が増し、収れん性も感じます。赤身肉がほしくなる味わい、です。

ビーフシチュー、ローストビーフ、ステーキでもよさそうですし、甜麺醤を使った中華料理、牛肉の赤味噌漬けにも合わせてみたいイメージです。今回は簡単に入手できるローストビーフをおつまみ的に。香ばしさと脂がちょうど溶けていくような相性なので、ロース肉でもよいかもしれないと思います。

<付記/シェリーの造り方・豆知識>

シェリーグラスは、よく見かける国際規格のワイン用テイスティングより少し細身です。このタイプのほうが香りがきれいに立ちのぼります。

シェリーグラスは、よく見かける国際規格のワイン用テイスティングより少し細身です。このタイプのほうが香りがきれいに立ちのぼります。

まずは白ワイン造りから。発酵が終了する頃に活動が活発になり、ワインの表面に浮かび膜を形成するのが「産膜酵母=フロール」。この膜が存在していると、酸化を防ぐと共にナッツなどの独特な風味をワインに与える。

このフロールの存在がシェリーにはとても重要で、フロールは暗く静かな場所を好む一方、フロールの膜の下での熟成には換気が必要となる。そのため、ワイナリーそのものが、朝、海から吹く微風と、大西洋から吹くポニエンテの風を受ける、海に向かって開けた高台に建てられていたり、高い天井で1樽あたりの大気量を多くしていたり、海風は入るけれど光はなるべく入らないように窓が横長に細長くしつらえられていたり、最大湿度が得られるように北西—南東向きになっていたり、多くの工夫がなされている。

*発酵終了時点で、色が淡く、デリケイト、繊細な味わいのもの→アルコール度数15%へ酒精強化して、フロールと共に熟成させる→ マンサニーリャ(フィノも同様)

*初期段階はフロールと共に熟成させておいて、途中でフロールをなくして酸化熟成させる→ アモンティリャード

*アモンティリャードほどではないけれど、少しだけマンサニーリャのようにして、途中から酸化熟成→ パロ・コルタード

*色が濃く、しっかりしたコクのある味わいのもの→アルコール度数17%まで酒精強化してフロールを消して(アルコールがここまで上がるとフロールは生きていけなくなり、消失)酸化熟成させる→ オロロソ

このように分類され、いずれもソレラシステムという方法で、複数年のワインを継ぎ足しながら何年も熟成されてから瓶詰めされます。ソレラシステムは、日本の老舗鰻屋さんや老舗焼き鳥屋さんが代々受け継いでいる「タレ」によく喩えられることが多いですね。

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

bottlelagoya カテゴリー 酒精強化ワイン/シェリー
ワイン名 マンサニーリャ ラ・ゴヤ Manzanilla La Goya
生産者名 デルガド・スレタ Delgado Zuleta
生産年 NV
産地 スペイン/アンダルシア地方
主要ブドウ品種 パロミノ100%
希望小売価格 2,300円(本体価格)
輸入元/販売店 ラック・コーポレーション
bottleamontillado カテゴリー 酒精強化ワイン/シェリー
ワイン名 アモンティリャード スレタ  Mamontillado Zuleta
生産者名 デルガド・スレタ Delgado Zuleta
生産年 NV
産地 スペイン/アンダルシア地方
主要ブドウ品種 パロミノ100%
希望小売価格 円(本体価格)
輸入元/販売店 ラック・コーポレーション
bottleoloroso カテゴリー 酒精強化ワイン/シェリー
ワイン名 オロロソ モンテアグード Oloroso Monteagvdo
生産者名 デルガド・スレタ Delgado Zuleta
生産年 NV
産地 スペイン/アンダルシア地方
主要ブドウ品種 パロミノ100%
希望小売価格 2,500円(本体価格)
輸入元/販売店 ラック・コーポレーション
bottlepalocortado カテゴリー 酒精強化ワイン/シェリー
ワイン名 パロ・コルタード モンテアグード  Palo Cortado Monteagvdo
生産者名 デルガド・スレタ Delgado Zuleta
生産年 NV
産地 スペイン/アンダルシア地方
主要ブドウ品種 パロミノ100%
希望小売価格 3,500円(本体価格)
輸入元/販売店 ラック・コーポレーション
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