ワイン&造り手の話

「ペリッセロ」のルーツでもある「バルバレスコ ヴァノトゥ」。

祖父の時代からバルバレスコを造る「ペリッセロ」の当主ジョルジョ・ペリッセロは、まるで日本の親父ギャグのようなジョークをとばすかと思えば、情熱的にネッビオーロについて、ワインの造りについて語り出します。上品で上質なだけでなく、コストパフォーマンスが高いのも見逃せません。ペリッセロの現状や2013年の収穫について伺いました。

<エレガントなバルバレスコ ヴァノトゥ>

情熱的な語りは止まりません。

情熱的な語りは止まりません。

「ペリッセロ」は、ロンドン博物館に飾られる時計の名前から命名した、モダンな造りの「ロング・ナウ」でも知られていますが、この日は2009年の「バルバレスコ ヴァノトゥ」を飲みながら話を聞きました。これは単一畑のバルバレスコで「ペリッセロ」のラインナップで最も高価な銘柄でもあり、「ペリッセロ」のバルバレスコのはじまりとして大切な基石的存在でもあります。ジョルジョの祖父によって初めて造られたのは1960年のことで、それまではブドウで販売していたといいます。

華やかな香りで、チェリーやラズベリーなどの熟した果実や香ばしさが感じられて、フレッシュでハリもあります。味わいも、なめらかで伸びがあり、深みがあり、力はあるのですが、どっしりした様子ははく、とてもエレガントで余韻が長く続きます。「ヴァノトゥは、南向きの石灰質が多い土壌なのでエレガントになり、もうひとつの単一畑ものバルバレスコ トゥリンは、南西向きでもっと岩の多い土壌なので力強くタンニンも豊かに」なります。畑の条件によって、ワインの個性は異なるのです。

ヴァノトゥの畑は、ジョルジョが祖父から受け継いだ歴史のある地所で、64年に植樹の古樹もあるようですが、古ければよいというわけではないといいます。古い樹のほうがより安定性があって、量は少ないながらより凝縮したブドウを実らせる、というのが定説です。ただ「戦後植えられた苗木の多くは、量産のを目的として選ばれたものが多かった」からだといいます。だから、改植する場合には、自社畑で優良な株を選ぶセレクション・マッサールと、苗木屋から新たに購入するものとでバランスをとっているのです。

<コストパフォーマンスが高い理由>

オレンジを使いながらブドウのタンニンの質について力説中!

オレンジを使いながらブドウのタンニンの質について力説中!

「ペリッセロ」の看板商品でもある「バルバレスコ ヌビオラ」。これを一度飲めば、コストパフォーマンスの高さに驚くはずです。2001年ヴィンテージから造り始めたキュヴェで、6カ所の畑のネッビオーロをブレンドしているものですが、香りの高さ、なめらかな食感とバランスのよさ、バルバレスコらしさなど、とてもまとまりのよいワインで、しかも高くないのです。本当に感心してしまいます。

ジョルジョ・ペリッセロは、「ワインの質の85%は畑で決まり、10%は発酵、残りの5%は熟成による」といいます。そしてワイナリーには、2000年から最新のコンピュータシステムを導入しました。それは、最少のスタッフで醸造管理できる体制をとることでワインの価格をなるべく低く抑えるためだったのです。「機械は夜寝なくても働けるし、病気や怪我もしないし、間違いが少ない」という、とても合理的な考え方なのです。もちろん、人の感覚が重要な工程は大いに人が関与するのですが。今度訪問する機会があれば、その使い分けを是非見せてもらいたいと思っています。

反対に、人手をかけるべき畑の作業は最大限に手間暇かけています。例えば、2013年の収穫は素晴らしい出来だったけれど「困ったことがひとつだけあった」といいます。ブドウの成熟具合にバラツキが見られたので、成熟したブドウから順番に収穫していったら結局5週間もかかることになり、その分の人件費が膨れあがってしまったそうです。でも、これはかけるべき経費なので仕様がありませんよね。では、昨年の出来についてお伝えします。

<2013年の収穫>

ジョルジョ・ペリッセロさん、普段はこういう表情です。

ジョルジョ・ペリッセロさん、普段はこういう表情です。

昨年の2013年は「収穫がとても遅くて、20年以上前のようだった」といいます。ヨーロッパ各地から4月頃には「春が来ない」、7月にも「夏は本当に来るのかなあ」という声を聞いていたのですが、ピエモンテも同じような状況だったようです。どこも季節の進みがとても遅かったのです。ただ「8月は夏らしい夏になってよかった」と、ブドウがきちんと成熟できてホッとした様子。それでも収穫時期はここ20年間で最も遅かったということです。

「10月26日に、ようやくネッビオーロの収穫が終わったんだ。でも昔に戻ったような気がする」といいます。「ネッビオーロ」という名前は、ピエモンテの丘陵地帯で「ネッビア(霧)」が出始める晩秋に収穫する品種、という命名だという説があるからです(*)。それに、こうも言います。「昔から一番よいヴィンテージは収穫が遅い年だというんだよね。ブドウの成長期間が長ければ、その分、その土地の土壌や環境の性質をより多くブドウが吸収することができるからね」。

結果として「力強くて濃いというよりは、アロマが豊かで素晴らしい表現力を備えたブドウが収穫でき」、アルコール度数も、ここしばらく15%まで上がるのが普通になっていたところ、これも昔のように12.5から13%ぐらいで収まったようです。2013年のバルバレスコが市場に出てくるまで数年待たなければいけませんが、一段と香り高くエレガントなペリッセロのリリースが、今から楽しみでなりません。

<付記>

(*)「ネッビオーロ」命名の説にはもうひとつある。成熟したブドウの粒の果皮に白い粉状のものが見られることから、まるで「ネッビア=霧」に覆われているようだ、ということから。ちなみに、こちらの説のほうが有力。

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

グラス カテゴリー 赤ワイン
ワイン名 バルバレスコ ヌビオラBarbaresco “Nubiola”
生産者名 ペリッセロ Pelissero
生産年 2009
産地 イタリア/ピエモンテ地方
主要ブドウ品種 ネッビオーロ
希望小売価格 4,900円
輸入元/販売店 フードライナー
ボトル カテゴリー 赤ワイン
ワイン名 バルバレスコ ヴァノトゥBarbaresco “Vanotu”
生産者名 ペリッセロ Pelissero
生産年 2009
産地 イタリア/ピエモンテ地方
主要ブドウ品種 ネッビオーロ
希望小売価格 9,800円
輸入元/販売店 フードライナー
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