ワインと料理

この4月、アンリ・ジローから壮大なるテイスティング・ミッションのオファーがありました。

世界各国から参加した150名、うち日本からは4名、という

私なんぞ伺ってよいものか…というレベル。

ただこのミッションは本当素晴らしく、そしてシャンパンにおける「熟成」についてアンリ・ジローを軸に深く考察することができたのでおいおいご紹介できれば、と思います。

 

どっぷりアンリ・ジロー ワールドに浸るのは、まるまる3日。

3日!です。他のドリンクは「水」だけ。

わー!アンリ・ジローが飲めるのね☆というキャピキャピした気分から

ふと、

朝から寝るまで、アンリ・ジローしかないのか! と気づくまで

そう時間はかかりませんでした。

 

なぜそんなに早く気付いてしまったか。

 

食事です。

自分の空腹っぷりを逆説的に考えてみました。

場所はエペルネから車で20分のアイ村。

アンリ・ジローのメゾンにずっといます。

ブドウ畑の中にポツン、です。

アイ村銀座、と勝手に名付けている商店街には150人超えをフォローできるレストランなぞ、まずない。

となると「お腹いっぱいにさせる=炭水化物」か「ひたすらアンリ・ジローを飲める環境を作る」の2択、ではないか・・・?

この「ひたすら飲める環境」というのはさらに罪深いもので。

盛り上がって飲んでいると、あるタイミングで猛烈な空腹感に襲われる。

そう、いつもはここで好きな料理を選んでご満悦になっているんだった。

しかし。

今回は、そんなわがまま、許されない。

いや、許す、以前に、食事を私だけに、なんて作ってもらうこと、できない。

コンビニもない。抜け出してサクっと食べられるお店もない。

だってここはアイ村だもん…

しかも。

このミッションは「アンリ・ジローを味わう」、ということであって、

食事をすることではないから。

余談ですが、アイ村にパスタレストラン、作りたくなりました。

日本人の茹で加減、世界一な気がします。茹でおき、しないし。

 

どうしよう…人ってお腹が空いているとイライラする、ってホントだな。

じゃぁ、何が食べたいか妄想しよう。

妄想していると楽しくなって、それを食べられる時に涙が出るほど嬉しくって、いやん、どうしましょう…ってなるに違いない。

アホだ。あたし。

 

シャンパーニュ滞在初日、エペルネに到着してまず伺ったビストロで

ひたすらこれを食べていました。

ポテト

はい。ポテトフライです。本当に美味しかった。

その余韻から「アンリ・ジローとポテトフライにおけるマッチングテクニック」

分析してみます。

ポテトフライか、と思うでしょうが、いやー、ポテトフライは本当に難しい。

ジャガイモの選定から入りますから。

 

アンリ・ジロー・オマージュ。

うん、これは美味しさが非常に分かりやすい。全体的にまとまっていて丸い印象。バランスもよいし、これは日本のみずみずしいジャガイモが合いそう。細くスティックにしているポテトフライ。薄くスライスしてポテトチップスでもいいかな。自宅で作るなら香り高いブラックペッパーをかけるとシャンパンの味わいに変化が出る気がする。スパイシーという観点を引き立ててくれると思うから。ちょっとフニャっとしているのが最高のマッチング。

 

アンリ・ジロー・ブラン・ド・ブラン

これはとても大人びた印象。キレとアタックと余韻、この3つにブレがない。初めての相手と飲むのにふさわしい。こちらもエリを正して飲みたくなる。でもこれは第一印象の表面的な部分。実際飲み続けるといろいろな側面が見えてくる。ソーヴィニヨンタイプのグラスにするとそれが明確。この場合、ポテトは甘みがあるもの系、あててみたい。でも日本のいわゆるジャガイモじゃない。個人的には「パタテ・フリット」とイタリア語で言いたくなる味わい深いジャガイモ。譲ってインカのめざめ、とか。形は皮ごと、一口サイズカットなスタイル。一品メニューに仕上げるならローズマリーを一緒に揚げて香り付け。塩分感の高い塩。これだけで良い。

うん、これは形が大事。なんだ、ジャガイモか、ふーん、フライね、え、香りいいね、お、濃厚なうまみだね、カットするだけってそうなのか!とジャガイモの印象もシャンパン同様に変化するから。

 

アンリ・ジロー・フュ・ド・シェーヌ2000

ごちゃごちゃ言う前に黙って飲んでなさい、という感覚。美味しいものは美味しい。それだけでよいのではないか。カッコつけて言うならば、この熟成感はどうすれば生まれるのだろうか。ヴィンテージの良さ? ブドウのポテンシャルの高さ? 醸造のテクニック? リリースの見極め? いや、どれかが飛び抜けていてもダメだと思うな。

となると気にせずつまめる、という感覚の「ポム・フリット」が良いかも。シャンパンに集中したいから。できれば太切り。水分をしっかり抜いて中温でじっくり揚げる。一気に高温はダメ。ジャガイモの旨味が半減する。そしてディジョン・マスタードだな。これがもっとシャンパンを飲みたくなる魔法の調味料。シャンパンが素晴らしいから、と言ってマスタードもスゴイ格を選びたくなるが、それは9割失敗に終わる。あえてのシンプルスタンダードなものの方がよい。この位のアクセントであれば、気付いたらポム・フリットをつまんでいた、というさりげない感覚だわ。だからシャンパンと正面から真摯に向かい合える気がする。

ポム・フリットが邪魔しないレベルで美味しさをアシストしてくれるから。

最後

まだまだ続きますが、この辺で。

はぁ。この妄想マッチング、リアルに実験したくなりました・・・

どなたかお付き合いください☆

(text & photo by Satoko Fujisaki)

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