初めて出会った、香りが高くエレガントなジゴンダス 〜フィリップ・カートゥックスが造るエスピエ〜
03/06

<ジゴンダスの印象を一変!>
かつてワインを勉強し始めた頃、週末は都内のワイン・ショップを巡って飲んだことのないワインから手頃な価格のものを選んで、、、というのが楽しみのひとつでした。そして「ジゴンダス」という地域名の南ローヌの赤ワインを飲んだ時のことを、とてもよく覚えています。
香りが印象的で、埃、木の枝、スパイスといった、荒削りなニュアンスで、味にも熱さを感じました。それ以来、ジゴンダスを飲むたびに、やっぱり似通った印象であることを確認していました。理由はよくわからないので、フランス人曰くの「テロワール(土壌や立地、気候など様々な条件)」によるものだと解釈するほかありませんでした。とはいえ、こういう個性の赤ワインは例えばバーベキューなど炭火焼で肉類を食べる時、あるいは赤身肉の煮込み料理などにとてもよく合うのです。
ところが驚くことに、そうではなく、香り高くエレガントなジゴンダスに出会ってしまったのです! それが、フィリップ・カートゥックスさんが造る「エスピエ」のジゴンダス。
<エレガンスの理由>
あまり驚いたので、どのようにしてこんなにエレガントなワインができるんですか!? と聞いたところ「植樹密度が他よりも高いから」と、ソフトな笑顔で一言。でも、実際には他にもたくさん手間ひまをかけているとわかりました。
「自然界にもともと存在しないものは一切使わない」という基本的な方針があります。つまり、化学的なものは使わないということです。
栽培は有機栽培で、ブドウの植樹密度はヘクタールあたり5,400株(この地域の平均は3,500株)。これによって、根は深くまで伸び、1株あたりに実る房の数が少なくなり、健全によく成熟したブドウが得られることにつながるので「香り高く花のような、クールで滑らかな」ワインができあがるといいます。1株あたりからわずか0.6リットルのワインしかできないということなので、普通のボトル1本にもなりませんよね。
醸造については、ブドウがよく熟すので除梗は60〜70%ほどにしておいて、発酵が始まる前に低温浸漬を行って香りをより引き出すという工夫をしたり、酵母はすべて自然酵母で、と決めています。そして亜硫酸は必要最小限の量にとどめます。エレガントでとても整っているので、近代的な造りかと一瞬思いますがそうではなく、昔ながらのコンクリートタンクでの発酵、熟成もコンクリートタンク内の率が高く、樽は用いても600リットルという大きめのサイズです。
もうひとつの特徴は古い樹にもあるようです。「ジゴンダスはグルナッシュが主体で、普通は10〜15%のシラーをブレンドします。でも私はシラーが好きなので35%ブレンドしています」。ノーマルの「ジゴンダス」にも、上級キュヴェの「ジゴンダス レ・ブラッシュ」にもシラーが多めにブレンドされていました。だからシラー独特の花のような香りが感じられるのでしょう。更に、「シラーの半分は古いクローンでスリーヌと呼ばれるもの」。スリーヌ(Serine)は、普通のシラーより房が小さくて、色やアロマ、そして酸も秀でているというのです。
ジゴンダスは、ちょっと野性的すぎて、、、と思われている方がいらっしゃったら、是非だまされたと思って、エスピエを試してみてください!
(text & photo by Yasuko Nagoshi)
カテゴリー | 赤ワイン | |
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ワイン名 | ジゴンダス | |
生産者名 | エスピエ | |
生産年 | 2012 | |
産地 | フランス/ローヌ地方 | |
主要ブドウ品種 | グルナッシュ65%+シラー35% | |
希望小売価格 | 4,515円 | |
輸入元/販売店 | ザ・ヴァイン |
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