ワイン&造り手の話

ルイ・ロデレールが、1974年に「クリスタル・ロゼ」を発売して以来の新作をリリースしました! 「ブリュット・ナチュール2006」です。ドザージュ・ゼロ(瓶熟成後に糖分調整をしない超辛口タイプ)のヴィンテージもので、しかもひとつの小さな区画から収穫したピノ・ノワールとシャルドネを用いたという、とても特殊なキュヴェです。もちろん少量生産で、世界でわずか5カ国のみでの販売です。

 

<ブリュット・ナチュール2006誕生秘話>

「ブリュット・ナチュールは私たちにとってロックンロールだ」というジャノー氏。それだけ挑戦としてのキュヴェだということです。

「ブリュット・ナチュールは私たちにとってロックンロールだ」というジャノー氏。それだけ挑戦としてのキュヴェだということです。

副社長のミッシェル・ジャノー氏が来日して、この特別なキュヴェの説明をしてくれました。相変わらずダンディーです。

 

このキュヴェのアイデアは、2003年の収穫の後に既に出ていたといいます。

「2003年は猛暑の年で、ある小さな区画でピノ・ノワールが驚くほど熟しました。ドザージュの必要がないのではないか、というほど。その区画はキュミエール村にあります」。

 

ルイ・ロデレールでは合計で400区画を230ha所有していて、シャンパーニュの中でも自社畑比率が高いことで有名なメゾンです。しかも、どれもとても条件のよい場所に持っています。キュミエールは、シャンパーニュの主要な2都市のうちエペルネから北西にある村で、ちょうど東西に流れるマルヌ川の北側の斜面に畑があります。真南を向き、川の反射光の効果でブドウがとてもよく熟すと、今年の3月にロデレールを訪問した時に、醸造責任者のジャン・バティスト・レカイヨン氏からも聞いていました。

 

スタルク氏による手書き風のシンプルなラベルも目を惹きます。

スタルク氏による手書き風のシンプルなラベルも目を惹きます。

「ロゼにキュミエールのピノ・ノワールを使用する。マルヌ川の光の効果で小粒で果皮の厚みがあるブドウが収穫でき、セニエに適している。収穫量が低く、とてもよく熟してフェノールも高い。潜在アルコール度数も12%になる」。と、メモしています。それならば、赤ワインを造りたいと思ったことはありませんか? と質問すると、「社長に言ってみたことはあるけれどね」ということなので、許可が降りなかったのでしょう。

 

さて、そしてまた3年後の2006年にも暑い年が訪れました。そこで、量は少ないけれど「キュミエールの畑そのもの」を表現した、マロラクティック発酵もドザージュもしていないピュアなキュヴェができあがったのです。

 

加えて社長のフレデリック・ルゾー氏、ミッシェル・ジャノー氏とも懇意な著名なフランス人クリエイターのフィリップ・スタルク氏の意見も影響したのかもしれません。大のシャンパーニュ好きで毎日飲むのだそうです。さすがですね〜。羨ましいですよね。そのスタルク氏はゼロ・ドザージュがとても好きなのだそうで、ジャノー氏曰く「ラベルのデザインではなくて、シャンパーニュそのもののデザインに関わりたい、と言った」とか。

 

<ブリュット・ナチュール2006の味わい>

「これは、自然が与えてくれた産物で、偶然の賜物」だとジャノー氏はいいます。昔のシャンパーニュでは考えられないような暑い夏が来たからこその、特別な作品なのです。

 

「桜チップでスモークしたサーモン ケッパーベリー サワークリーム 長芋のフリッター プレザーブドレモン」

「桜チップでスモークしたサーモン ケッパーベリー サワークリーム 長芋のフリッター プレザーブドレモン」と。

トースティーで、ふっくらとして熟した桃や少し煮詰めたリンゴ、ナッツ類なども香ります。味わいは口に入れるとふわりと広がり厚みを感じますが、その後にキリッとした酸とミネラルが余韻を細く長く保ちます。

今でももちろん美味しいですが、手に入れてもう何年か瓶熟成をさせてからもう一度飲みたい、という欲望を駆り立てるワインです。泡が柔らかい分、ワインに近いシャンパーニュという印象も残りました。

 

ちなみに、キュミエールの区画のブドウはバイオダイナミクス(ビオディナミ)で栽培されていて、通常は「ブリュット・ヴィンテージ」に多く使われたり、ピノ・ノワールはセニエして「ロゼ」に使われたりしています。

そして気になるのは、次のキュヴェはまた造られるのかどうか。ある国でのお披露目でレカイヨン氏が、たぶん2009年も造れるのでは、という発言をしたという記事を見つけたのでジャノー氏に聞いてみると、「もし彼がそう言ったのなら、きっとそうなのだろう。彼の言葉を信じるよ」とのこと。

 

わずか5カ国のみでの販売で、量的にもクリスタルの5%しかないという大変稀少な銘柄です。ご興味があったら、お早めに!

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

ボックスにはルゾー社長とスタルク氏の画像が。

ボックスにはルゾー社長とスタルク氏の画像が。

カテゴリー スパークリングワイン
ワイン名 ブリュット・ナチュール フィリップ・スタルク・ボックスBrut Nature Philippe Starck Box
生産者名 ルイ・ロデレール Louis Roederer
生産年 2006
産地 フランス/シャンパーニュ
主要ブドウ品種 ピノ・ノワール65%、シャルドネ35%
希望小売価格 15,000円(本体価格)
輸入元/販売店 エノテカ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Related Article