ワイン&造り手の話

醸造家のルカ・マローネ氏。2003年からグラッタマッコを担当し、2007年からコッレ・マッサリも。

<ポッジョ・ディ・ソット購入の理由>

上品で類い稀な品質のブルネッロ・ディ・モンタルチーノの造り手「ポッジョ・ディ・ソット」が売却されたと数年前に聞きました。前オーナーのピエロ・パルムッチ氏の引退に伴うものですが、新オーナーはこの「コッレ・マッサリ」だったのです。来日した醸造家のルカ・マローネ氏は、拠点の「コッレ・マッサリ」、モンタルチーノの「ポッジョ・ディ・ソット(2011年取得)」、そしてボルゲリの「グラッタマッコ(2001年取得)」すべてを見ているというので、まずは気になる「ポッジョ・ディ・ソット」取得について尋ねました。

 

というのも、ピエロ・パルムッチという人物はこだわりの人だからです。醸造コンサルタントを、どうしても故ジュリオ・ガンベッリ氏に依頼したくて、その返事をねばりにねばって2年待ったというのですから! ちょうど5,6年前に訪問している最中にジュリオ・ガンベッリ氏から電話が入り機嫌良く話した後、「ね、でも今ではもう毎日のように電話しているいい友達だよ」と。そして考えていた通りのピュアなサンジョヴェーゼの代表ともいえるブルネッロを創り上げることに成功したのです。ですから、その彼が一体どこへワイナリーを渡したのか気になっていました。

 

「パルムッチ氏は、とてもタフな人物ですよね」と、ルカ・マローネ。「コッレ・マッサリ」と「グラッタマッコ」がそれまで積み重ねてきた姿勢やワインをみて、連絡をしてきたのだといいます。その土地がもつ気候や土壌の独自性を見極め、その魅力を十分に引き出す、という方針が自分のそれと一致しているから任せてみたい、という判断です。オーナーでスイス出身のマリア・イリス・ティパ・ベルタレッリ&クラウディオ・ティパ姉弟は、その幸運に歓喜したのではないでしょうか。

 

<モンテクッコの特徴>

モンテクッコは、まだ新しい原産地呼称で1998年にDOCに、2011年にモンテクッコ・サンジョヴェーゼがDOCGに昇格したばかり。「コッレ・マッサリ」の創業も1998年です。

 

モンタルチーノの丘の南端を流れるオルチャ川の更に南。海まで30キロ、標高の高い山モンテ・アミアータまで20キロ。基本的に内陸性気候で雨は少なく、日中は海からの風でモンタルチーノよりも気温が高く、夜になると山からの風で気温が下がり、8月など昼間30〜35度あっても夜間は15度まで下がります。

 

標高350メートルほどの丘で栽培される主要品種はサンジョヴェーゼで、樹齢50〜60年のものもたくさん残っているといいます。でも、それほど有名な産地でなかったのは「DOCに認定されるまでは、自家用のワインを造ったり、ワインをトスカーナ内の他社や他地域のワイナリーに売ってしまったりしていたから」。

 

そしてこの産地内で育ち続けたサンジョヴェーゼには特徴があると気がついて、ピサ大学に分析を頼んだところ、他よりも房が小さく、粒も小さく、その結果、「色素成分のアントシアニンが多いため色が濃いワインができます。それに香りはとてもフルーティーな上、ユニークなスパイシーさが現れます」。

 

一番右がフラッグシップの「ロンブローネ」。

一番右がフラッグシップの「ロンブローネ」。

<コッレ・マサーリの真髄>

敷地面積1,200ヘクタール、ブドウ畑110ヘクタールの「コッレ・マッサリ」は、モンテクッコで最大のワイナリーで新星モンテクッコの先駆者的存在です。ボルゲリでいうサッシカイアのような存在でしょうか。

 

それまで根付いてきたこの土地の伝統は守りつつ、新たな視点でワイン造りを行っています。有機栽培が長年行われてきているため「その分、独自性を表現しやすい」ことに加え、「ポッジョ・ディ・ソットを購入後にワイナリーを見学に行きましたが、有機栽培を行っているし、ワイン造りのアプローチも同じだとわかってとても嬉しかった。うちのフラッグシップの『ロンブローネ』は4000リットルの木製開放樽で自然に発酵していますが、それもほとんど同じでした。だから、その後に変えたことは何もありません。料理と同じで、素材がよければいいワインができ上がるのです」。

 

白は2種類。

「メラーチェ2013」は、とてもフルーティーでフレッシュで、ビーチで飲みたくなるような爽やかさです。

古樹のヴェルメンティーノを厳選してグレケットとブレンドした上級の「イリス2011」は、熟したマンゴーや黄色い花の香りがして、リッチでなめらかな果実味が心地よく、ほんのりとした香ばしさと共に塩っぽさも感じられる、豊かな味わい。

「上級の白ワインは、オーナーの姉の名前のイリスと命名したのですが、実は彼女は海やヨットで飲むのはメラーチェのほうを気に入っているのですよね」と、笑っていました。マリア・イリスの息子さんは、有名なアメリカズ・カップで優勝経験もあるエルネスト・ベルタレッリだったのです。

 

赤は3種類。

熟したチェリーの香りと香ばしさが主体で、まろやかでボリューム感も感じられるアプローチしやすいタイプの「リゴレート2012」

はつらつとした果実の香りに、スパイシーさが加わって複雑性があり、とてもなめらかな口当たりの「コッレ・マッサリ2011」

果実、スパイス、なめし革などの香りがとても複雑で、しっとりとしながら、ストラクチャーがしっかりして酸もタンニンも格段に増して、深みが出てくる「ロンブローネ2009」。長期熟成型のとても素晴らしい造りです。

 

特に後者2銘柄で、ルカ・マローネが指摘した「モンテクッコのサンジョヴェーゼ独特のスパイシーさ」が顕著です。この土地らしいサンジョヴェーゼの表現力。パルムッチ氏が信頼を置いた理由が分かる気がします。いずれもなめらかな食感が丁寧なブドウの扱いや造りを思い起こさせ、食事と共に飲みたい気持ちを湧かせます。

 

<付記:ワインのデータ>

「メラーチェ2013」モンテクッコ・ヴェルメンティーノDOC

ヴェルメンティーノ+少量のグレケット/低温発酵

「イリス2011」モンテクッコ・ヴェルメンティーノDOC

古樹のヴェルメンティーノ+グレケット/澱と共に大樽熟成

「リゴレート2012」モンテクッコ・ロッソDOC

サンジョヴェーゼ主体+チリエジョーロ、モンテプルチアーノ/ステンレスにて発酵/ステンレス、小樽、大樽で10ヶ月熟成

「コッレ・マッサリ2011」モンテクッコ・ロッソ・リゼルヴァDOC

古樹も含めたサンジョヴェー80%+チリエジョーロ、カベルネ・ソーヴィニヨン/発酵はステンレス/18ヶ月小樽と大樽で熟成

「ロンブローネ2009」モンテクッコ・サンジョヴェーゼ・リゼルヴァDOC

古い畑から厳選したサンジョヴェー100%/4000リットルの大樽で発酵後、24ヶ月熟成/2004年初リリース

 

輸入元:ピーロート・ジャパン/5月下旬発売開始予定(新情報入手できましたら改めてお知らせします)

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

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