「イル・ボッロ」日本市場で10周年! 〜フェラガモのサルヴァトーレ・フェラガモ氏が来日〜
07/22

「イル・ボッロ」は、ワインの名前でもありますが、ひとつの村の名前でもあります。フィレンツェから南東へ、車で1時間ぐらいの位置で、1039年に建てられたという中世の城も残っています。ここを「フェラガモ」の現会長フェルッチオ・フェラガモ氏が購入したのが1993年のこと。そう、村ごと全部という豪快な買い物です。週末に狩りのために通っていた場所だと聞いたことがあります。「今でも毎週一度は来ますよ。うちのシラーを飲むのが楽しみでね」と、この村のすべてを任されているフェルッチオさんの息子であるサルヴァトーレ・フェラガモ氏は言っていました。
今年で「イル・ボッロ」が日本市場に上陸してから10周年になるそうです。それを記念しての来日で、ラッキーなことにスペシャルなワインも飲ませてもらえました。
イル・ボッロがある場所は、キャンティでいえばちょうどキャンティ・クラシコ地域から少し外にあたり、もしキャンティを造るならキャンティ・アレッティーニになる場所です。古くからぶどう栽培はされていましたが、フェラガモ家が購入した当時は、あまり残っていなかったようです。そしてフェラガモ家の選択は、キャンティではなく自由度の高いI.G.T.というカテゴリーでした。
「父が広大な敷地を購入した数年後に、ぶどうの植樹に着手しました」。
45haの畑は、丘の斜面で土壌が少しずつ異なるので、それに合わせて今では6種類のぶどうを栽培しています。メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、プティ・ヴェルト、サンジョヴェーゼ、シャルドネです。
「ブドウ品種を決める時は、ニコロ・ダフリットに相談しました」。
フレスコバルディやルーチェの醸造責任者も務めた人物で、ちょうどサルヴァトーレさんの叔父にあたるマッシモ・フェラガモ氏が、モンタルチーノに所有しているカスティリオン・デル・ボスコのコンサルタントもしていた、というつながりからです。ただ、2011年からは同じ系譜のステファノ・キオッチョリ氏がコンサルタントを務めています。
「もともと湖があった場所で、地震で土地がふたつに分かれ、水がなくなった湖底は粘土が多いので、メルロを。砂が多い場所にはカベルネ・ソーヴィニヨンを、石が多い場所にはシラーを植えました」。
味見させてもらったイル・ボッロのいくつかのワインを紹介します。
<ラメッレ2013 Lamelle 2013>
シャルドネ100%。発酵・熟成ともに、50%ステンレスタンクで、50%が樽。
「日本に来た時にシャブリを飲んで、インスピレーションを感じて造り始めた」とサルヴァトーレさん。
オリーブの樹が植えられていた、岩が多い標高500mの場所に植樹したそうです。
ふっくらとしてほんのりバニラも感じられる、ゆったりとした香り。味わいは、なめらかでバランスよく、フレッシュ感がとても心地よい。トスカーナ産まれで、重くなくこれほど綺麗なシャルドネを飲んだことがないような気がします。
<ピアン・ディ・ノーヴァ2012 Pian di Nova 2012>
シラー70%、サンジョヴェーゼ30%。
フレッシュな果実の香りがきれい。しなやかで、シルキーな口当たり。上品なシラー&サンジョヴェーゼ。重さや強さで主張するタイプではなく、あれ?と、もう一度振り返ってどんな人だったか、もう少し話してみたいな、と思わせるタイプの赤ワイン、でした。
<ポリッセナ2011 Polissena 2011>
サンジョヴェーゼ100%。丘の上方から中腹にかけて、小石が多い畑なのでサンジョヴェーゼが放射熱で完熟できる。
スパイスと赤いフルーツの香りがフレッシュで、サンジョヴェーゼらしい繊細な味わい。タンニンもとても細やか。ピュアなサンジョヴェーゼが好きな人へ。
<イル・ボッロ2011 Il Borro 2011>
メルロ50%、カベルネ・ソーヴィニヨン35%、シラー10%、プティ・ヴェルド5%。フレンチオークの新樽(トーストは軽め)で熟成。
まだ若くタイトな状態。果実やスパイスの香りも、これから徐々に花開いてくるだろう。力強さがありながら、上品できめ細やかな触感が心地よい。バランスが美しい。
<アレッサンドロ・ダル・ボッロ2011(マグナム) Alessandro dal Borro 2011 Magnum>
シラー100%。マグナムのみ2455本の生産。
「週に1度イル・ボッロに来る父がとてもシラーが好きなので造ることに」。
ローヌのワインと比較するなら、ローヌよりもフルーティー。色も濃く、整然とした香りと味わい。タンニンも細やかで豊か。きっちりかっちりとした、ダイナミックで若々しいシラー。
余談ですが、サルヴァトーレさん曰く「イル・ボッロはバッハ、アレッサンドロ・ダル・ボッロはベートーベン!」。
イル・ボッロでは本格的なコンサートも行われているようです。敷地内にある宿泊施設は「シャトー&ホテル」、かつてのルレ・エ・シャトーに加盟しています。私は悲しいことに冬にしか訪れたことがありませんが、他の季節に行ければよいなあ、と思っています。皆さんにも、冬以外の季節をお薦めします。
ハチミツやオリーブオイルもつくっていますし、なんとあのキアニーナ牛も飼育しているというのです。驚きました! イル・ボッロを飲みながら、ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナが食べたなら、と想像してしまいます。
<来春のお楽しみ!>
最後に、来年の春にリリース予定の新アイテムについて教えてもらいました。
現在瓶内熟成中のサンジョヴェーゼ100%のロゼスパークリングワインを発売予定だというのです。なんと、48か月の瓶内熟成で、合計で5000本しか造らなかったとか。
トスカーナでは、サンジョヴェーゼから造られたロゼワインはいくつかありますが、ロゼのスパークリングワインは多分これが初ではないでしょうか。日本のお花見の時期に間に合うといいですね〜。
(輸入元:エノテカ)
(text & photos by Yasuko Nagoshi)
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