ワイン&造り手の話

ボトル

<複数のキュヴェ>

シャトーヌフ・デュ・パープといえば、南フランスの照りつける太陽が想像されるので、濃厚な赤ワインを思い浮かべる方も多いかもしれません。その中でもロジェ・サボンは、エレガンスやフレッシュ感を備えたブドウの個性が尊重された赤の造り手です。1銘柄だけある白も秀逸ですけれどね。

 

「ロジェ・サボン」のシャトーヌフ・デュ・パープには4つのキュヴェがあります。1952年に創業して間もなく造り始めた「レ・オリヴェ」は、いわゆるスタンダード。1980年代前半に始めた「レゼルヴ」と「プレスティージュ」は、より厳選したブドウによるものですが、当時この地域ではこのようなスペシャル・キュヴェを造る習慣がなかったので、先駆者といえる存在です。そして1990年から試作を始めて1998年が初ヴィンテージとなったのが、トップ・キュヴェの「ル・スクレ・デ・サボン」です。

 

サボン家の秘密、という名前のこのキュヴェは、良い年にしか造られず、しかも3,000本のみという生産量です。それにブドウ品種や造りについても「名前の通り秘密なんだよ」と、醸造長のディディエ・ネグロン氏。困ったように驚くと少しだけ教えてくれました。さて、このキュヴェの秘密とは何でしょうか?

 

<ル・スクレ・デ・サボンの秘密>

「ル・スクレ・デ・サボン」は、毎年造られるわけではなく、天候に恵まれた素晴らしい年だけで、しかも大樽ひとつ分=3,000本しかできないそうです。2011年の味見をすると、とても上品な、でもよく熟したチェリーの香りが印象的で、なめらかで、緻密で、しっかりとした骨格がありながらフレッシュ感もある、まさにエレガントで余韻の長い華麗な姿です。

 

気になるのはまずブドウ品種です。「合計で18ヘクタールの畑をシャトーヌフ・デユ・パープ内に所有し、14の区画に分かれていて、土壌や風向きなどもすべて異なるから複雑性が出ます。そのうち95%が赤用品種で、グルナッシュが主体です」。という説明がありました。シャトーヌフの他の3つのキュヴェが、およそ70〜80%グルナッシュが占めているということですから、自ずと「ル・スクレ」もグルナッシュが主体だろうと予測がつきます。この質問に対して、ちゃんと「そうだよ」という返事がありました(笑)。しかも、選ばれた2区画のみから造られているそうです。

 

そしてもうひとつのヒントは、ブドウの樹齢にありそうです。というのも、スタンダードの「レ・オリヴェ」には「若樹をブレンドしています」というのですが、ここでは樹齢60年までのブドウを若樹としているそうです。驚きです! まるで還暦までは若造だ、と言われているようで恐縮します。「レゼルヴ」は樹齢60年から80年の間。そして「プレスティージュ」は80年以上のブレンドです。すると「ル・スクレ」は? 60年まで、60年以上、80年以上とくれば、100年以上なのでは? と考えるのですが、そこのところは「より長寿なブドウですよ」というところまで。

 

そしてディディエからもう一言。「ル・スクレは、グルナッシュの均整の美しさがメインに表現されたキュヴェです」。100年樹のグルナッシュ……?? そのエキスをいただくとなれば、拝みながら飲みたくなりますね。

 

<他のキュヴェの味わい>

他のキュヴェも魅力的だったので、ご紹介しておきます。

「シャトーヌフ・デュ・パープ ルネッサンス ブラン2012」6,000円(本体価格)/ルーサンヌ主体+グルナッシュ・ブラン、ブールブーラン、クレーレット/透明感のある、パイナップルや柑橘類などの華やかな香りで、まろやかで厚みがあるがとてもフレッシュ!

「リラック・ルージュ シャペル・ド・マイヤック2011」3,000円(本体価格)/グルナッシュ主体+シラー、ムールヴェードル、カリニャン/チェリーやプラム、スパイスの香り。温かみを感じる、ハツラツとした果実味が印象的。

「シャトーヌフ・デュ・パープ レ・オリヴェ2011」5,000円(本体価格)/グルナッシュ主体+シラー、クノワーズ、サンソー/熟した黒い果実と、野性的な要素が華やかに香り、なめらか且つフレッシュで、後味がとてもきれい。

「シャトーヌフ・デュ・パープ レゼルヴ2010」6,000円(本体価格)/グルナッシュ主体+シラー、クノワーズ、サンソー、ムールヴェードル/スパイスや黒い果実が香るがまだ固さがあり、味わいはなめらかで果実と酸がとてもよくバランス。

「シャトーヌフ・デュ・パープ プレスティージュ2010」8,800円(本体価格)/グルナッシュ主体+シラー、ムールヴェードル/プラムやチェリーなど熟した果実とスパイシーさが整然として香り、まだ若い。ハリがあり、なめらかでしっとりとした味わい。

<付記1:造りの基本>

2001年から「ロジェ・サボン」のワインメーカーを務めるディディエ・ネグロン氏。1952年にここを創業したロジェ・サボンの孫娘の夫でもある彼は「サボン家のスピリッツを残すために伝統的な方法はそのまま残して、細かな点を少しだけ変えました」という。ちなみにディディエはラ・ネルトとラ・ガルディーヌでもシャトーヌフの経験がある。

「1999年まではエアコンもなかったんですよ」、というディディエ。彼が到着した2001年までは、醸造設備もコンクリートタンクとステンレスタンクだけだったところに、小樽や大きめのドミ・ミュイ、フードルを導入したり、2009年からはトロンコニックと呼ばれる円錐型の上のトンガリを切り取った形状の木製樽を使用開始。

黒ブドウについては、1996年からほとんど除梗を行っている。およそ区画毎に自然酵母で発酵が行われ、収穫された順番に発酵槽へ加えられる。発酵槽や熟成に使われる容器はキュヴェによって異なる。

例えば、トロンコニックの場合1年目は白の発酵・熟成に使用し、2年目はシャトーヌフのオリヴェ、レゼルヴ、プレスティージュのどれかの熟成に、3年目はル・スクレの熟成に。

<付記2:ヴィンテージ情報>

2010年/収穫量が低かった年で、グルナッシュでもタンニンが多く感じられるものがあった。シラーの表現力も強い年。「レ・オリヴェ」と「レゼルヴ」は既に飲み始められるが、「プレスティージュ」と「ル・スクレ」はあと4,5年してからがお薦めで、20年以上熟成可能。

2011年/収穫量が豊かでブドウの成熟度もよかった年。

2012年/2010と2011の間の性格。2010年より少しだけタンニンが強め。

2013年/2010年と同様に収穫量がとても低かった。収穫開始が9月17日頃からと、例年より2週間遅かった。

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

 

左のボトルがル・スクレ。

左のボトルがル・スクレ。

カテゴリー 赤ワイン
ワイン名 シャトーヌフ・デュ・パープ ル・スクレ・デ・サボンChâteauneuf du Pape Le Secret des Sabon
生産者名 ロジェ・サボン Roger Sabon
生産年 2011
産地 フランス/コート・デュ・ローヌ
主要ブドウ品種 非公開
希望小売価格 28,000円(本体価格)
輸入元/販売店 ミレジム

 

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