ワイン&造り手の話

カンパーニャ地方で「ヴィッラ・マティルデ」が復活させた「ファレルノ・デル・マッシコ」には赤も白もありますが、今回は白についてお伝えしています。前編は別ページにあります。。

 

さて、今回はちょっと細かい話になりますが、「ファレルノ・デル・マッシコ」の白にも使われるファランギーナというブドウ品種についてのお知らせします。

 

<ファランギーナ>

ヴィッラ・マティルデは、現在カンパーニャの3ヶ所にブドウ畑を所有しています。ファレルノ・デル・マッシコを造る「テヌーテ・ディ・サン・カストレーゼ・エ・バルコ・ヌオーヴァ」(とても長い名前ですね)は、海に近い立地で、ここが本拠地になります。自社畑は110ヘクタールにも及び、ワイナリーも併設しています。

そして内陸部に「ロッカ・ディ・レオーニ」と「テヌーテ・ディ・アルタヴィッラ」という名で畑を所有しています輸出部長のジョルジョ・インパラート氏曰く「カンパーニャは、とても起伏が激しいので、微気候や立地が様々です。このように3ヶ所に畑をもつことで、カンパーニャを総合的に表現したいと考えているのです」。

 

カンパーニャの地図に、3ヶ所の畑が記してあります。

カンパーニャの地図に、3ヶ所の畑が記してあります。

いずれでも白、赤ともに造っているのですが、今回は2つの白ワインにフォーカスしてみたいと思います。本拠地で造る「ファレルノ・デル・マッシコ・ビアンコ」と、「ロッカ・ディ・レオーニ」で造る「ファランギーナ・カンパーニャ」です。なぜならば、どちらも「ファランギーナ」という品種だけで造っているのですが、個性がまったく違っていて、面白かったからです。

 

「ファレルノ・デル・マッシコ・ビアンコ2013 Falerno del Massico Bianco 2013」

香りは柔らかで、マスカットやパイナップル、黄桃といった、よく熟したトロピカル系。とてもなめらかな食感で、酸味もソフト。ほんのりとミネラリーな要素と収れん性(口の中がギュッと引き締まる感じ)が感じられて、全体にまろやかな印象でした。

 

「ファランギーナ・カンパーニャ2013 Falanghina Campania 2013」

内陸生まれ(ベンヴェント)のこちらは、白い花や白桃といった清涼感を感じるハツラツとした香り。味わいもフレッシュで、塩レモン的な爽やかな酸が感じられて口中でフルーティーな香りが更に楽しめました。

ボトル横

同じ品種で、「ほぼ同じように造っている」というのに、どうしてこんなに違うんだろう? と思って、醸造長のファビオ・ジェンナレッリ氏に聞いてみることにしました。

するとファビオさん。満面の笑みで答えてくれました。

 

「この品種、ファランギーナはね、ギリシャがイタリアを植民するときに持ち込んだブドウ品種なんだ。でも、当時彼らはギリシャと同じように植えたのに、イタリアでは腐ってしまうから困ってしまった。その時にはただ植樹するだけで、ブドウは地を這うように枝を伸ばしていったからね。でも、腐敗防止を考えて支柱を使うようになった。それが効果的だったんだ。支柱を使うことをファランゲと言うから、そう仕立ててあるブドウ、という意味でファランギーナと呼ばれるようになった、っていうわけ」。

 

「今、ファランギーナが栽培されているのは、ファレルノ、ヴェネヴェント、アヴェリーノ、カンピ・フレグリの4ヶ所あるけれど、実はファランギーナと言っても見た目から違うんだよね」というのです。

  • ファレルノのファランギーナは、小さい房で粒も丸くて小さい(カンピ・フレグリのファランギーナはファレルノに似ている)。
  • ベネヴェントのファランギーナは、大きな房で、粒は細長い(アヴェリーノのファランギーナはベンヴェントに似ている)。

 

これに加えて、ファレルノとベンヴェントの立地も違います。

ファレルノは、海寄りの地で標高140メートル。リンとカリウムが豊かな火山性土壌。2013年の場合は9月中旬に収穫。しかも、海に近く昼夜の温度差があまりないので、なるべく涼しい時間帯にと、夜間収穫をしているといいます。そしてソフトに圧搾した後、低温浸漬を12〜18時間行います。

 

これに対して、ベネヴェントは標高300メートル。灰色の凝灰岩、灰色や黒い軽石を含む火山性土壌。収穫は2013年で9月前半。ファレルのよりも早めの収穫です。ここは内陸部なので日較差が大きく、「求めるだけの香りや凝縮感などが早く得られるから、早めに収穫できる」。そしてソフトに圧搾した後の低温浸漬も、3〜4時間と少なくてすむというのです。

 

ちなみに酸度を聞いてみると、ほぼ同じでした。ただ、アルコール度数はファレルノのほうが常に1〜1.5%高いといいます。ベネヴェントが12.5%だったから、ファレルノは13.5から14.0%ほどになります。だから、酸度は同じでもファレルノのほうが酸をソフトに感じたというわけです。

 

それから、ヴィッラ・マティルデはリッカルド・コタレッラ氏にコンサルタントをお願いしているそうです。彼から学んだことは? と尋ねてみました。すると、技術的なことではなく、こんな答えをくれました。

「チームワークで仕事をしていくこと、それから次世代に伝えていくことの大切さを学びました。それから、外を知ること。他社や他地域、他国のワインのことも知らなければならないと」。

 

さすがですね。たぶん10年ほど前だったと思いますが、コタレッラさんが来日された時に、ランチでご一緒させてもらったことがあります。話をしていて、人間的にとても素敵な方だなあ〜、と、感動したことを思い出しました!

 

このふたつのファランギーノは、どちらも美味しいので、好みや料理、季節に合わせて使い分けると面白そうです。

(輸入元:モンテ物産)

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

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