ワイン&造り手の話

ボトルには貝殻がいっぱいなので、ラベルは首からさげています。

ボトルには貝殻がいっぱいなので、ラベルは首からさげています。

水深55メートルのバルト海に横たわっていた沈没船から、ワインのボトルが発見され、それがシャンパーニュだとわかり、話題となりました。その19世紀に造られたヴーヴ・クリコやエドシックをオークションで手に入れた方々は、もう開けて飲まれたのでしょうか。

 

その後、海底で熟成されたワインの保存状態が極めてよいという評判が流れ、人為的に海底熟成をさせてみよう、という造り手が現れました。そのひとつが、ロワール地方のヴーヴレイ近くにシュヴェルニィという生産地にある「ドメーヌ・デュ・サルヴァ」。日本でも、コストパフォーマンスのよさでも評判となっている造り手です。

1920年からの創業で、現在5代目のエマニュエル&ティエリー・ドゥレイユ兄弟が切り盛りをし、ソーヴィニヨン・ブランに少量のシャルドネをブレンドした白を主体に造っています。ティエリーさんが実際に海に沈めたワインを持って日本を訪れた時に、ちょっとだけお話を聞きました。

 

フランス北西部、塩やそば粉のクレープで有名なブルターニュ地方の海岸から1、2キロの海底で熟成させたそうです。「水深15メートルぐらいの場所で6ヶ月から12ヶ月間熟成させました」。鉄のラックのようなものに500本のワインを入れ、ボートで沖まで移動させ、そこからクレーンとダイバーによって沈めるそうです。この試みのきっかけはやはり沈没船にもあったようです。「シャンパーニュも、赤ワインもよい結果がでていますからね。実際に海底で熟成させたワインを試飲すると、味わいがまろやかになり余韻が長くなっていますよ」。

 

兄弟でワイナリーを霧もリスツティエリー・ドゥレイユさん。

兄弟でワイナリーを切り盛りするティエリー・ドゥレイユさん。

2011年のシュヴルニイ「ル・ヴュー・クロ」のボトルがこれです。貝殻がたくさんついているので、ラベルは首からさげています。それに水圧がかかるので、コルク栓の上からワックスで封をしてあります。海底での静かな水の流れや、木漏れ日のような光、水圧などを受けて過ごしたワインは、どのように成長するのでしょうか。ロマン溢れるプロジェクトですね。

 

(「ドメーヌ・デュ・サルヴァ」の輸入元はピーロート・ジャパン/海底熟成ワインの輸入は未定)

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

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