ワイン&造り手の話

ドイツボトル横

ワイン好きの皆さんのための試飲イベントが、随分増えてきているように思います。試飲して好みのタイプを見つけるのも楽しいですが、その場に造り手さんがいると現地の話やバックグラウンドが聞けるので、更に嬉しいですね。ピーロート・ジャパンでは、愛好家の方に向けて造り手さんを目の前にして試飲できる会を定期的に開催しているようです。ちょっと潜入して様子を見させていただきました!

 

なんと合計14社。生産国は、フランス、ドイツ、オーストリア、スイス、スペイン、ニュージーランド、アルゼンチン。全部はとても無理なので、ほんの少し発見した美味しいワインをお伝えします。

 

<ラベルを見れば味わいが想像できるドイツワイン/ピーロート>

ドイツで300年間以上の歴史ある造り手の「ピーロート」が輸入元ピーロート・ジャパンの大元です。来日されたカタリーナ・ピーロートさんで11代目の奥様で、エステートワインをご担当。本拠地は、ラインガウ、モーゼル、パラティナーテのちょうど中間地点にあたるナーエにあります。ここでリースリングを主体に、ヴァイスブルグンダー(ピノ・ブラン)とグラウブルグンダー(ピノ・グリ)もすべて自社畑での栽培です。

 

ラベルがカラフルでとてもオシャレなので、色分けの基準を聞いてみました。辛口から甘口まで造っているので、ラベルを見れば味わいが想像できるように、という配慮で2007年から始めたそうです。加えて2011年ヴィンテージからは点字も加わっていました。

 

「青はクールな色なので、辛口。黄色は桃などの黄色い果実を思わせる風味。オレンジ色は温かい色でしょ? だから甘口タイプはオレンジに」

 

「No.1. ドルスハイマー・ピッターマンヒェン2012」は、急斜面でスレートとクオーツ土壌の単一畑もので、辛口仕上げのリースリング。<青>でキリッとした味わいを表現しています。「寿司にお薦めです」と、カタリーナさん。

「ヴァイスブルグンダー・トロッケン2012」も辛口ですが、ピノ・ブランなのでリースリングほどの高い酸ではありません。<黄色>で少し柔らかい感触だとわかります。

「グラウブルグンダー・トロッケン 2011」は、ピノ・グリの辛口で、フレッシュな辛口ながら厚みもありますし、ブドウの果皮がグリ=灰色なので、ラベルも<灰色>と連動しています。

「ドルスハイマー・ピッターマンヒェン アウスレーゼ 2012 」は、豊かな甘口のリースリング。「甘い桃やメロン、パイナップルみたいな香りがするでしょう?」。本当に<オレンジ色>がちょうど似合う味わいでした。

 

数種類揃うと、食卓にも彩りが添えられますね。

ピーロートのワイン案内 No.1のお料理合わせの記事

 

<ハートマークのスイスワイン/カーヴ サン=ピエール>

ハートマークが素敵な、スイスのピュアなワインがありました! あの切り立つマッターホルンのお膝元、ヴァレ州にある造り手カーヴサン=ピエール。来日していたのは、ここも含めていくつものワイナリーをスイス内外に所有するフランソワ・シェンク氏です。

 

スイスは、シャスラー種から造られるとてもピュアな風味の白ワインで知られています。「ファンダン レゼルヴ・デ・ザドミニストラトゥール2012」は、キリッとした、岩清水のような清々しさを感じると共に、なめらかの食感の心地よく、和食をはじめとする素材のよさをそのまま表現するタイプの料理に、寄り添ってくれるワインです。

 

でもこの造り手さん、地元品種のプティットアルヴィーヌを育てていました。このヴァレ地区だけのユニークな品種で、30年ほど前に見直された復活品種です!  晩熟型でシャスラーよりも収穫時期が遅いので、秋雨にあってしまってうまくできないことが多く、扱いが困難な品種ということから次第に廃れてしまったそうです。でも、ヴァレのブドウ畑は渓谷の斜面にあり、谷を通って南から入り込んでくる温かい風が成熟の助けになるのです。

「なるべく畑の高い位置に植えています。高いほうが日照量が多いうえに、夜の気温は下がるので、いいブドウが収穫できますから」。

 

「プティット・アルヴィーヌ レゼルヴ・デ・ザドミニストラトゥール2012」は、柑橘類の香りが豊かで、厚みのある、少しトロリとしたニュアンスも感じられる味わいで、とても魅力的でした。それに、この州だけの貴重な復活品種です。これは試さずにはいられません!

 

ちなみにキャップシールについているハートは「たまたま祖父が80年前のラベルにつけていたハートが可愛かったから」とのこと。星が集まったハート、素敵です。贈り物にしても喜ばれそうです。

カーヴ サン=ピエールのワイン案内

 

<バチカンにワインを納めていた由緒ある地所/プリオラートのマス・ダン・ジル>

ジルの家、という名前のワイナリーは、300年前から、スペイン東部のプリオラートにある由緒ある地所です。

「当時は、バチカンにワインを納めていたんですよ」と、現在のオーナー一族のマルタ・ロヴィラ・カルボネルさん。バチカン用は、グルナッシュ白とマカベオから造る甘口白だったようです。

 

この産地の特徴は、スレート土壌と風。屋根瓦にも使われることの多い黒い平たいスレート。最近、レストランでお皿として出てくることも増えました。ここの土壌は、あの固いスレートなので、いかにもブドウたちご苦労さん!という感じですね。そして、南東から相当な風が吹き込んでくるといいます。地下で根を伸ばすのに一苦労し、地上でも風が吹きすさぶ中、必死に実をつけようとするわけですから、凝縮したブドウが実るわけです。

 

それに、風が強いことに加えて、近隣の他者の畑からは遠く孤立した場所なので、有機栽培に取り組みやすい、という利点もあります。ブドウ畑の周りには、オリーブ、アーモンド、ヘーゼルナッツなどの樹も、たくさん植わっているようです。みんな、美味しそうですね。

そうそう、自家製オリーブオイルもあったので、ちょっと味見させてもらったのですが、緑色のトマトのようなとてもフレッシュな香りで、ちょっぴりピリッとするような刺激もある広がりのある味わいなのです。なかなかこういう味わいのオリーブオイルには出合えません。聞けば「アルベッキーナ」というオリーブの品種100%だから、こういう風味になるようです。とても印象的で美味! 後を引く味わいです。しかも「オリーブの樹も古くて樹齢100年以上なのです。ワインでいえばグラン・クリュのようなものです」という、貴重なオイルでした。

 

赤ワインの「コマ・ヴェッラ」は、ガルナッチャ(グルナッシュ)とカリニェーナ(カリニャン)7対3のブレンドで造られるのですが、樹齢はいずれも70年から100年という古いものです。3ヴィンテージのセットが試飲できました。

2006年は「地中海的なヴィンテージ」というだけあって、スパイシーで厚みがあり肉感的なタイプ。

2005年は「ヨーロッパ的なヴィンテージ」、つまりクラシックな年で夏の最後にとても暑い日が数日ありました。ちょっとボルドーを思い起こす、整然とした上品さが感じられました。

2004年は「10年に一度の偉大なヴィンテージ」。コーヒー、チェリー、スパイス、なめし革などの複雑な香りと、シルキーなタンニンが印象的。

 

それから「ヌス2007」という甘口ワインがありました! バチカン用ではないのですが、何年も前からずっと「甘口ワインを造ってほしい」というリクエストがあって、8年かけて悩み考えた末にできあがった甘口です。名前のヌスは、英語のknot(結び目)という意味だといいます。遅摘みして陰干ししたガルナッチャに、シラーとヴィオニエをブレンドしたもので、チョコレートやスパイス、凝縮したチェリーの香りがして、甘いですが若々しいタンニン分もあるので、ハツラツとしています。「チョコレートと一緒にどうぞ」と、マルタさん。絶対に合うと思います!

 

オリーブオイルと赤ワイン、オリーブオイルと甘口ワイン、という美味しいものセットのギフトもお洒落かもしれませんね。

マス・ダン・ジルのワイン案内

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

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