藤崎さとこの妄想!ワインと料理のマッチング 第4回 〜ガリについて考える。妄想からの実体験録〜
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好き嫌いの激しい私にとって、お寿司屋さんにおけるガリ、というのは
非常にハードルの高いカテゴリーになっています。
分解、というか分析するならば
ショウガと甘酢、というのが一般的。
個人的にこの「甘酢」というのがひっかかるポイントのようです。
甘いのか、酸っぱいのか、どちらかにしてほしい、というか。
ショウガの辛さというのを基本に考えると甘酢が中和するんだよ、という意見がありますが、辛いままではダメなのか?なぜに甘酢なのか?
これはもう本当に好みの問題。
私は甘くないものが好きです。
さっぱりするから。
ということでずっと手つかずだった寿司におけるガリ。
毎回あの甘さが…と思うとビビリ根性炸裂、手を出せませんでした。
でも願えば叶う、ブリュット・ガリ。
最初の一口は一瞬咳込む時もありますが、うん!これよ、と思うドライで辛口なガリと巡り合ってしまったのです。
これは本当に感動しました。
こんなにシンプルなものなのに、どうして好みの味に遭遇しないのか。
ガリにご縁がないのではないか。
そこまで考えている自分がアホではないか?と悶々していたから。
そうなると次はガリに合うワインについて探求したくなります。
だって好きな味に出合えたのですから!
好きなワインを飲みたくなる。選びたくなるのは自然の摂理。
今でこそ寿司シャン、と耳にする機会があると思います。
初めて活字にした時は反響なんて全くありませんでしたが(笑)。
そう、お寿司とシャンパンの組み合わせは面白い、という展開です。
ゆえにシャンパンなら何を選ぶと良いのか、という、これは実体験録であります。
でもこれはドライなガリ、砂糖を使用していないもの、というのが軸にあります。
ある意味ニッチな展開かもしれませんこと、お許しください。
ふむ。
まぁ、シャンパンの醍醐味は3品種のブレンド。
白ブドウと黒ブドウを合わせているワインだもの。
まぁ、よくそんなこと考えたな、と尊敬しています。
ゆえにそれをベースに考えてみたい。
その中でもシャルドネ率が高い、ピノ・ノワール率が高い、とかいろいろブレンド率を意識してみようっと。
ドザージュとか難しいこと、なしで。
普通に買えるものがベスト。マニアック系はやめましょう。
ちなみにこの実験、最新ヴィンテージ、オールドヴィンテージ、スペシャル・キュヴェ、限定アイテムなどもいろいろ試しています。
結論。
それらは普通に楽しんだほうが良いと思いました。
これはあくまでもこのブリュット・ガリとの相性を徹底研究するのがお題ですから。
シャルドネ率の高いシャンパンの場合。
そもそもガリに酸味があります。
酸味×酸味=甘さが見えてくる、というお話を伺ったことがありますし、なんだったか忘れちゃったけれど私自身も経験したことがあるからちょっとそれを意識してみました。
が、しかし。
ブリュット・ガリには難しい。なぜだろう。
最初シャンパンを口に含んだ時は良いの。おぉ、と旨さが広がる!と思いきや、舌を抜けて喉を通りすぎるあたりで苦みが出てくる。
苦みって書くとご幣がありますが、なんだろう、このいがいがした感じ。
もしかしたらブレンドだったから?
これがブラン・ド・ブランだったらまた新しい世界が見えてくるのか?
いや、ここに手を出すのはなんか普通。しかも逆に難しさが見えてくる。
酸味という軸が明確にぶつかってくるから逃げようがない、というか。
ガリそのものがダイレクトなものだし。
えー、マジですか、という印象。
美味しいだろう、と妄想していたことがズレてきた。
マッチングって本当に悩ましいことだこと。
ではピノ・ノワール率が高いもの。
シャルドネの場合はガリを先に食べてから飲んだので
これはシャンパンを飲んでからガリを食べる、という展開にしてみました。
一瞬口内をシャンパンテイストにシフトする気分。
シャンパン、純粋に美味しいです。
やはり黒ブドウの果実感って本当にデリケートですね。
刺身系をつまんでいるから余計にそれを感じます。
これが失敗だった。
マッチングを考える時は真っ向から向き合わねば。
ガリです、ガリ。
んー。可もなく不可もなく。
ガリを食べてからシャンパンを飲んだら?
シャルドネの場合より良くなった。
ふくよかさ、というかボリューム感がショウガの辛さを包み込んでくれます。
ただ香りが薄れる。
ガリにおけるショウガの香りって気持ちもリフレッシュさせてくれる気がしていて。でもこうなるとそれが弱くなる。
えー、なんでだろう。両方共に美味しいのに。
美味しいということだけでのマッチングは奥行きがないのか。
平面的な合わせ方に終わってしまうのか。
はぁ、こんなに悩むとは思ってもみなかった。
気を取り直して。
3品種をほぼ均等にブレンドしているものを。
正直、落ち着いて飲んでいられますね。
それぞれの品種が自分の役割をしっかり果たしている。
ブレンド力ってすごいなーと飲む度に思います。
ではガリを食べてっと。
この辛さと酸味は本当に素晴らしい。
ここまで振り切ってくれていることに感謝してもしきれません。
シャンパンに移ります。
おぉぉ。逆に甘さが見えてくる。なんで?
えー、この甘さ、パーフェクトではないですか!
辛さの後にそーっと見え隠れする甘み。ベタベタしていない。
そしてシャンパンの複雑さと余韻の長さ。
余韻にもショウガの香りが宿っている。
もう一度繰り返します。
うん、変わらぬ展開。これはずっと飲んでいられる。
クセになってしまいます。
すごい美人風が向こうから歩いてきておぉ、と思って通り過ぎ、
でも気になって振り返ったら、相手も振り返っていて、
また目があってしまい、ご挨拶して意気投合、というロマンス。
世界中にお寿司屋さんがあってその数だけガリがあります。
この組み合わせ、ガリに合うシャンパン、というのはおそらくこのお店でしか体験できないと思うのです。
シャンパンはモエ・エ・シャンドン・ブリュット アンペリアル。
基本のき、と私の中で位置付けています。
果実のポテンシャル、バランス、ブレンド力、いろいろな角度から見てもセンターポジションではないか、と。
これを飲みこなすことで、他のシャンパンの味わいが逆に見えてくる。
今回はガリという非常にニッチな世界での妄想半分実体験でした。
ちなみにこのガリとすりおろしたワサビを一緒に海苔にくるんで少し醬油につける、というアテ系つまみもモエにドンピシャです。
うん!でもこれはブリュット・ガリだから成せるワザ。
本当にしつこくて申し訳ございません…。
(text & photo by Satoko Fujisaki)
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