ワイン&造り手の話

畑の草花が描かれたラベル。

<ピラミッド・ヴァレーの際立つ特徴>

これはアース・スモーク畑のボトル。

これはアース・スモーク畑のボトル。

2年近く前、ニュージーランドのウエリントンを訪問しました。ここは都市なのでブドウ畑はありません。それなのに何故行ったかというと、ちょうどニュージーランドのピノ・ノワールを一同に会した試飲会が行われたのです。3日間にわたってたくさん試飲した中で、特に印象に残ったピノ・ノワールのひとつがここ、ピラミッド・ヴァレーの2銘柄でした。とても綺麗なラベルも目に焼きつきました。

 

とても上品でナチュラルな味わいだったので、いくつか質問してみました。ニュージーランドの南島の北東部にあたるノース・カンタベリー地区には、とても珍しいことに粘土石灰質土壌があるというのです。加えて、栽培はバイオダイナミクス法を採用し、造りも極めてナチュラルな方法をとっている。なるほど〜! と納得したのを覚えています。

 

ニュージーランドのピノ・ノワールは、品質が高いものがたくさんありますが、比較的濃厚なタイプが多いのです。ところが、ピラミッド・ヴァレーについては濃厚とか、重厚、という言葉は似合いません。上品でやさしく、人の手のぬくもりを感じるような、とでもいうのでしょうか、ちょっと不思議な魅力に満ちているのです。

 

ピラミッド・ヴァレーの畑地図。

ピラミッド・ヴァレーの畑地図。

「ラベルも綺麗ですね」と言うと、嬉しそうに畑の地図を見せながら説明してくれました。4つの畑があって、それぞれ向きや土壌のタイプが微妙に異なるので、そこに生える草花もちがってくるのだといいます。確かにそれは身近な庭や空地といった場所でも、生えている草はちがうので想像しやすいですよね。だから、4つの畑でそれぞれ一番優勢な草の絵をラベルに描いたのだそうです。

 

「フィールド・オブ・ファイアー」これ、見るからに猫じゃらしだと思ったのですが、調べてみるとちがっていました。猫じゃらしはエノコログサという名前で、こちらはシバムギもしくはカモシグサ。

「ライオンズ・トゥース」これは間違いなくタンポポです。バイオダイナミクス法ではプレパレーション506に使われます。

「エンジェル・フラワー」きれいな小さな花ですね。ノコギリソウです。こちらはバイオダイナミクス法でプレパレーション502に使用されます。

「アース・スモーク」ピンク系の花が可憐な、カラクサケマン。地中海地方が原産の草ですが、日本にも帰化しています。

 

<ノース・カンタベリーのワイン>

マネージング・ディレクターのケイン・トンプソンさん。

マネージング・ディレクターのケイン・トンプソンさん。

さて、マネージング・ディレクターのケイン・トンプソンさんが来日するというので、会いに行ってきました。聞きたいことがあったのです。それはブドウの植え方について。ここのブドウは台木を接ぎ木していなくて、自根で植えていると聞いたからです。ご存知のように、ブドウにはフィロキセラという大敵がいて、普通は台木をしないとブドウは枯死してしまいます。

 

ニュージーランドの南島のセントラル・オタゴにある「リッポン」のニック・ミルズの畑でもやはり自根なのですが、今のところ大丈夫だと言っていました。「確かにニュージーランドにもフィロキセラはきている。ただピラミッド・ヴァレーでも、まだ大丈夫。そもそもあまり訪問客もないし、このエリアに入る前に必ず靴底を洗ってもらうから」。ニックも同じような説明をしていたのを思い出します。やはり近隣にワイナリーや都市があるわけでもなく、孤立した場所ならでは、なのでしょう。

 

ところで、味わいには影響するのでしょうか?「うん。違うと思う。その品種そのものの根が張って水分や栄養分を取り込むわけだから、品種そのものの個性がより出ていると思う。ニックもそう言ってるでしょ? ニックとマイクはすごく仲良しなんだ」。ニュージーランドでバイオダイナミクス法、しかも自根で植樹といえば、この2人しかいません。

 

それから、最近ブドウの発酵にアンフォラという素焼きのカメを使い始めているようです。「ノース・カンタベリーのシャルドネでは、2011年から、発酵の半分をステンレスタンクで、半分をアンフォラで」行っています。アンフォラで発酵させると「パピーなアロマが得られて、エネルギーに溢れた味わいになる」といいます。パピーというと子犬を思い浮かべるぐらいだというと、「そう、そんな感じ」だというのですが、正確なニュアンスがわかりません。謎です。

ピノ・ノワールでは今年の収穫から少しアンフォラ発酵も始めたところだといいます。どんな結果になるのか、楽しみですね。

 

今回試飲したノース・カンタベリーのワインは、やはり上品でナチュラルな印象はそのままでした。

 

<グローワーズ・コレクション>

ところで、オーナーのマイク&クラウディア・ワーシング夫妻が、ノース・カンタベリーで畑を1999年に購入し、ピノ・ノワールとシャルドネを植樹したのが2000年のことです。ブドウはすぐに収穫できないので、ここでのワイン造りは2006年から始まります。でも、それまでも生活しなければならないので、ニュージーランドのワイン産地各所で畑をほんの少しずつ借りて、ワインにして販売しながら、ブドウの成長を待ったのです。

 

そのアイテム群が今でも継続して造られている「グローワーズ・コレクション」。こちらはラベルの絵は同じですが、名だたる造り手の畑が揃っているので驚きます。

今はこれらもすべてノース・カンタベリーで醸造していますが、それぞれの土地の個性を生かすために、収穫2週間前にすることがあるといいます。ブドウを40キロ摘んできて、発酵させておくのです。いざ収穫の本番、という時に運び込まれたブドウにそれを加えると、発酵促進のためのスターターとして役立ち、それぞれの畑に存在する自然酵母でワインができるというわけです。

 

こちらのシリーズは、地域も様々ですが品種もバラエティー豊かです。例えば白品種はリースリング、サヴァニャン、ピノ・ブラン、セミヨン。前2者はほんのり甘口で(残糖6g/Lと残糖9g/L)、特にサヴァニャンはトロピカルフルーツやアプリコットの香りが印象的でした。「このサヴァニャンは発酵に15ヶ月間もかかった」とか。どれも色合いが濃いめで黄金色なのは、24時間かけるというとてもゆっくりしたプレスをして、スキンコンタクトの時間をとっているからです。「マイクは、香りを含めてブドウの大切な成分の大部分は果皮の周辺にあると信じているから」、どの白品種でもスキンコンタクトをする方針をとっているということでした。

 

魅力溢れるピラミッド・ヴァレーの世界に、少し足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。

 

ワイナリーの詳細はこちらのページでご覧になれます。

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(text & photo by Yasuko Nagoshi)

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