ポル・ロジェのスタイルを探る 〜キュヴェ・サー・ウィンストン・チャーチル 2002発売開始〜
12/22
ポル・ロジェの社長に就任したローラン・ダルクール氏が来日し、改めてポル・ロジェについて、そしてプレステージの「キュヴェ・サー・ウィンストン・チャーチル」について語ってくれました。2002年ヴィンテージは14回目となるキュヴェです。
「ポル・ロジェは、今でも家族経営で5代目になります。自社畑は合計90ヘクタールあり、生産量の55%を賄っています。私たちのDNAを表現し品質を上げるために、ここ10年で醸造設備を一新しました」と、ダルクール氏。
20年以上クリュッグで仕事をしていたドミニク・プチ氏が、1999年にポール・ロジェの醸造長に就任しました。そして1997年からの前任の社長であるパトリス・ノワイエル氏との二人三脚で、変革をしてきたからこそ今の品質があると、2人を讃える言葉から始まりました。
ポル・ロジェでは、ブドウ本来の繊細な味わいを引き出す、という方針です。そのために、一番搾りの果汁だけを使うようになりました。そして、発酵はすべてステンレスタンクで行い、樽は一切使用しません。更に、瓶内熟成期間をより長くしました。また、質の高いブドウを得るための手立てもとるようになったと言います。自社畑の他は、自社管理畑と契約栽培農家からの購入ブドウです。後者については、どのようなブドウが必要なのか、要望書をあらかじめ渡して、一定基準以上の素材を手に入れられるようにしているのです。
代表的な3つのキュヴェをみていくと、ポル・ロジェのスタイルが把握できます。
<ブリュット・レゼルヴ NV>
瓶熟成の期間を3年から4〜5年に延ばすことで、より繊細で上品な仕上がりになったといいます。そして、地下35メートルという、地下深く気温が一定して低いセラーでの瓶熟成だから泡がきめ細やかになる、というのもポル・ロジェの自慢のひとつです。
洋梨や柑橘類のピール、白い花、トーストなどの香りで、なめらかでクリーミーな食感で、ふくよかさも感じられる心地よい味わいです。
Data: ピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニエ3分の1ずつのブレンド。平均して25%ほどブレンドするリザーヴワインは、ベースのヴィンテージの前3ヴィンテージ分。一番搾りのみ使用。ドザージュは8〜9g/l。
<ブリュット・ヴィンテージ 2004>
これが、のちのプレステージ・キュヴェ「サー・ウィンストン・チャーチル」の元となるヴィンテージものです。
ハチミツ、トースト、熟した黄色い果実など、ふっくらとしてハリのある香りで、味わいもまろやかで、クリーミーな食感。レモンジャムを一滴落としたようなハツラツさが印象的でした。
Data: ピノ・ノワール60%、シャルドネ40%。この比率のクラシックなスタイルがチャーチル好みだったようです。20の村、グラン・クリュとプルミエ・クリュのブドウを使用。一番搾りのみで、瓶熟成は最低8年間。ドザージュは約9g/l。
<キュヴェ・サー・ウィンストン・チャーチル 2002>
第二次大戦後にパリで開かれたパーティーでのポル・ロジェ家とチャーチル家との出会いが、その後の両家の親交を深めるきっかけとなったといいますが、1908年、1914年、1928年、1934年、1947年、これらがチャーチルのお気に入りだったそうです。
チャーチルが亡くなった1965年には、その死を悼んでヴィンテージの白いラベルに黒い縁取りを入れてリリースしたほど、堅い友情で結ばれていたのです。その10年後、1975年に遺族の了承を得て、マグナムサイズの特別なキュヴェを造ることになりました。チャーチルの好みの年のヴィンテージを踏襲して、更にブドウはすべてグラン・クリュの畑から調達したもので造られたのが「キュヴェ・サー・ウィンストン・チャーチル」です。
2002年で14回目のキュヴェとなりました。
偉大なヴィンテージとなった2002年は、複雑性があり力強いキュヴェとなっていました。
トースト、スパイス、アプリコット、桃、柑橘類などの複雑でふくよかな香りがとても魅力的で、しっかりとしたボディで、コシのある味わいです。
まだとても若々しいので、このまま何年も寝かせておくのもよさそうです。2本手元にあれば、1本はすぐに味をみて、もう1本は数年後にまた。そんな贅沢ができるとよいですね。
Data: このキュヴェは、グラン・クリュの古いピノ・ノワールとシャルドネという情報だけで、ブレンド比率は一切公開されていません。秘密のようです。ドザージュは約9g/l。
これらのキュヴェに共通していえるのは、ふくよかな香りと味わい、そしてハツラツとした姿です。ピノ・ノワール、もしくは黒ブドウのピュアな力を感じられるメゾンなのではないでしょうか。
(輸入元:ジェロボーム)
(text & photo by Yasuko Nagoshi)
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