ワイン&造り手の話

横

(前提の話は「ジュヴレ・シャンベルタン編①」をご覧下さい)

 

<ジュヴレ・シャンベルタン3本名品を比較してみる>

— では、実際に3種類のジュヴレ・シャンベルタンのワインを比較しながら試飲してみたいと思います。

フェヴレイジュヴレ・シャンベルタン 1級 クロ・デ・イサール 2011 <ドメーヌ・フェヴレ>  Geveray Chambertin 1er Cru Clos des Issarts Monopele 2011 <Domaine Faiveley>

 

— 優しい香りですね。味わいもなめらかで、果実味と酸のバランスが絶妙。しかもタンニンも心地よくて。緻密、繊細優美な味わいです。フェヴレが単独所有している畑なんですね。

柳 クロ・デ・イサールという畑は、特級の「リュショット・シャンベルタン」のすぐ北側にあります。今日の3本の中では最も標高が高いですね。だから、一番上品なタイプ。それに、すぐ横に谷があって冷風が吹き降りてくるので、その影響でボディがキュッと引き締まる。

— なるほど。それで上品でタイトなんですね。

柳 でも、ちゃんとジュヴレらしさも感じますね。後味に残るタンニンのテクスチャーがいかにも。シャンボール・ミュジニーの場合には、つややかでツルリとしてるけれど、ジュヴレは違うんですよ。舌の最後のあたりの感触が。

— 細かい粒子を感じる、というようなニュアンス?

柳 そう、特に若いうちはね。

地図

 

—では、2番目の銘柄です。

バシュレジュヴレ・シャンベルタン 1級 レ・コルボー ヴィエイユ・ヴィーニュ 2011<ドメーヌ・バシュレ>  Geveray Chambertin 1er Cru Les Corbeaux Vieilles Vignes 2011 <Domaine Bachelet>

 

— ずいぶんスモーキーですね。香りは、果実の要素を含めて先ほどより強めです。味も、数滴のエキス分を感じるような果実味があって、全体に厚みが増します。タンニンはまだ少し若いですね。

柳 以前訪問しているので、ちょっとテクニカルなデータを。ここは完全除梗(除梗についての話は別の記事をご参考に)。発酵温度は25度まで。朝、夜と1日2回のピジャージュ(櫂入れ)をして、品質の均一化のために1回ルモンタージュ(ポンピング・オーバー)を。低温マセレーション(浸漬)は15度で6日間。熟成30%新樽。

— そうですか。もっと新樽多そうな印象ですけれどね。樽の焦がし方が強めなんでしょうか。炭火焼が食べたくなるスモーキーさですね。

柳 この畑、コルボーは0.44ha所有してますね。1920年に植樹。

ー えっ!今、95歳!? 本当にヴィエイユ・ヴィーニュ(=古樹)なんですね。

柳 まあ、このヴィンテージの時にはマイナス4だから91歳ですけどね。

— 地図ではどのあたりですか。

柳 特級の「マジ・シャンベルタン」の北隣。クロ・デ・イサールのすぐ下ですね。割合粘土が強い土壌だと造り手は言っていました。

ー だから厚みが出る。

柳 そうですね。クロ・デ・イサールよりも、肉付きがよくて重心が低い感じはしますよね。それにこの年は早めに熟したから8月31日から収穫を始めている。ジャスパーは「エクセプショナルな畑」としている(ジャスパー・モリスMWが、著書「ブルゴーニュ大全」にて)。「中世は、ここは墓地だった」とも。

— だから、ミネラルが豊か、ですか?

地図

 

—では、3番目の銘柄へ。ボトルも重厚。色も濃いですね。

デュガ・ピージュヴレ・シャンベルタン 1級 シャンポー ヴィエイユ・ヴィーニュ 2011 <ドメーヌ・デュガ・ピィ>   Geveray Chambertin 1er Cru Champeaux Vieilles Vignes 2011 <Domaine Dugat-Py>

 

— 香りも強いですね〜。ロースト香、リキュール状のラズベリーやブラックベリー、スパイス。しっかりとした厚みを感じる、とても若い香りですね。なめらかな果実味。酸もしっかりして、タンニンも細かいけれどとても豊か。まさにマスキュランで、しっかりとしたストラクチャー。

柳 いや〜、ほんと、濃いですね〜。ここの全房率は…。

ー デュガ・ピィも訪問したんですね。

柳 はい。あ、でもこのキュヴェは試飲してません。村名もので50〜60%全房ですね。

— じゃあ、これは1級だからそれ以上の割合が全房ということになりますか?

柳 いや、そうとも限らないと思いますね。ここは、2003年から100%有機栽培を行っていますね。その前から鋤きで耕しているんだけれど、そうすると根が土中深くまで伸びるでしょう。だから2003年みたいな暑くて乾燥した年も、全然問題なかった、って言ってましたよ。それに、後でこの畑の近くに貯水槽をつくるために穴を掘ることになったらしいんだけど、13メートル掘っても、まだそれ以上に根が伸びてたって。

ー へえ〜、そんなに深くまで伸びるんですね! ところで、この濃さの理由は?

柳 ピジャージュが強いんでしょうね。新樽率も高い。それに、ヴィンテージの影響もある。「2011年はグルマンな年」と言ってました。美味しそうで食べたくなる感じ、という意味ね。。まろやかな果実のニュアンスがある。

— 2010年のほうがタイトで堅いですからね。あ、香りに華やかさがでてきましたよ。

柳 でも、まだ飲み頃はこれからですね。まだまだ。シャンポーは、ジュヴレ・シャンベルタンの一番北にある一級畑です。

— 今飲むならば、フェヴレがいいですね。

柳 そう。デュガ・ピィはしばらく忘れたほうがいい。10年してから飲みたい感じ。バシュレは今でもいいけど、3年後のほうがいいかな。

— フェヴレのこの1本に合わせたい料理は?

柳 寒い時期なら煮込みかな。ブッフ・ブルギニヨン。

— 今、寒くないですね〜。

柳 上等な赤身の肉を、フライパンでソテー。

— じゃあ、鉄板焼きでもいいかも。

柳 脂はあまりないほうがいい。

— ヘルシーでいいですね〜。

柳 そこそこ柔らかいお肉がいいなあ。

— あら、それは贅沢。

 

<ジュヴレ・シャンベルタンで覚えておきたい3か条>

ー では、そろそろまとめの時間としたいと思います。ジュヴレ・シャンベルタンを飲むにあたって、覚えておきたい3か条を教えてください。

 

1)ジュヴレ・シャンベルタンは畑によって個性が違う、と覚えておこう!

柳 ジュヴレ・シャンベルタンは広くて、畑の数が多いです。それに、ふたつの丘に散らばっているし、国道の東にも広がっている関係で、それぞれの畑の個性が違う、ということを頭においておいたほうがいいかもしれませんね。

— じゃあ、もし気に入った銘柄に出会って、そこに畑名が書いてあったら、呪文のように何度も唱えて覚えないといけませんね。造り手さんの名前も、ですね。

 

2)ジュヴレ・シャンベルタンは、忍耐が必要なワインである!

柳 すべて、とは言いきれませんが、基本的に多くの造り手は「ジュヴレ・シャンベルタン」ということを踏まえて、力強いワインを造ろうと気合いが入るので、飲む方は忍耐が必要です。

— あ〜、長く待たないと飲み頃が来ない、ということですね。

柳 そう。タンニンの粒子がきっちりあるので、成長がゆっくりなんです。ジュヴレ・シャンベルタンは評判がいいから、と手を出しても、なかなかね〜。

ー すぐに美味しく飲めるとは限らない。

柳 そう。だから、要注意なんです。それに、新樽率の高い造り手も多い。パワフルで筋肉質なワインなので、もちろん新樽がよく合うし、新樽を使うことで早く柔らかくしようという意図もあるとは思うんですけれどね。

— でも新樽って、結構お高いですよね。

柳 でも、ジュヴレ・シャンベルタンとヴォーヌ・ロマネの造り手はお金持ちだから。

ー なんでお金持ちなんですか?

柳 ワインが高く売れるから。

— そうか、それでお金がかけられる、と。でも、樽の香りに弱い人、エレガント嗜好の人は、どういうタイプか確認してから買ったり注文したほうがよい、ということですね。

柳 デュガ・ピィは、くれぐれも若いうちには開けないように! あ〜、いいレストランで長年熟成させたデュガ・ピィを出してくれたら、最高だな〜。

ー 待てない人はどうしたらいいんですかっ!

柳 例えば、レストランのワインリストでジュヴレ・シャンベルタンを見つけたら、今本当に飲み頃かどうか、ソムリエさんに聞いてみるのがいいですよね。

— 1級じゃなくて、村名なら問題ないですか?

柳 いや、村名でも確認したほうがいいですね。村名の畑でも範囲が広くて、大きくふたつに分かれるんです。さっきのクロ・デ・イサールのすぐ横にある谷から流れ出てきた砂利で、扇状地が出来ているんですよ。1級畑がある丘の下方部分は全部村名の畑なんですけれど、国道の西側は丘に近くで緩やかな斜面、国道の東側は平坦なんです。だから、西側は村名でもそこそこしっかりしていて、東側は飲み頃が早い。でも、それはどこにも書いてないから。

— あ〜、ラベルを見てもわからないわけですね。じゃあ、売っている人に聞くしかないですね。あ〜、柳さん、またデュガ・ピィが閉じこもっちゃいましたよ〜。せっかく開いてきたと思ってたのに。

柳 ん〜、だから10年忘れたほうがいいって、言ったじゃないですかっ!

— あれ、3か条になってないですね〜。これじゃあ2か条ですけれど、もう長いので、今回はこれでおしまいにします。ありがとうございました!

輸入元:ラック・コーポレーション

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

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