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1997年が初ヴィンテージのアルマヴィーヴァ。チリのマイポ・ヴァレーで始まった、ボルドーのバロン・フィリップ・ロッチルドとチリのコンチャ・イ・トロによる壮大なコラボレーションです。「シャトー・コンセプトに基づいて造るチリワイン」の変遷を、トライアルで造った未発売の1996年から2003、2007、2009、2012年まで見させてもらいました。

 

正式な初ヴィンテージ1997年ものから15年経過した2012年ヴィンテージは、来年の春にリリースが予定されているようです。この間に、もちろんワインの熟成による変化があるわけですが、プエンテ・アルトの土壌や気候によりピンポイントで照準を合わせてワイン造りが行われてきている様子が垣間見えました。以下、5つのヴィンテージについて記します。

(アルマヴィーヴァの全体像については前編をご覧下さい)

 

1996年(一度デキャンタしてから再びもとのボトルに戻した状態)

Data:

カベルネ・ソーヴィニヨン 75%

カルメネール 19%

カベルネ・フラン 6%

雨量 272mm

気候 カベルネ・ソーヴィニヨンにとってクラシックなヴィンテージ。成熟後期から収穫前にかけて涼しい気候だった。

香りや味わいなどの状態 開いた香りで、熟成によるスパイシーさや野生的な香り、ドライフルーツ、ロースト香など複雑性が出始め、味わいはやさしく、酸とタンニンがまだしっかり。

 

2003年(一度デキャンタしてから再びもとのボトルに戻した状態)

Data:

カベルネ・ソーヴィニヨン 73%

カルメネール 24%

カベルネ・フラン 3%

雨量 530mm

気候 特異な気候だった年。冬は寒く雨が多く、夏はドライで気温が高く、4月から5月にかけてインディアンサマーが訪れた。

香りや味わいなどの状態 凝縮感があり、まだ果実のハリがある香り。カシス・リキュールやロースト香、黒胡椒など、強さのある香り。味わいにはボリューム感もあり、酸もタンニンも力強く、カカオやスパイス香が口の中で増幅。

降水量

ワインの醸造年(6月から翌5月)ごとの降水量のグラフ。

 

***2005年、2006年頃から、よりフィネス、エレガンスを求めるようになった結果が、ワインにも如実に顕われていました(変化については前編をご参照ください)***

 

2007年(試飲45分前に抜栓)

Data:

カベルネ・ソーヴィニヨン 64%

カルメネール 28%

カベルネ・フラン 7%

メルロ 1%(←メルロは2001年に植樹して2006年からブレンド開始。それまではカルメネールの存在に気がつかず、メルロだと勘違いしていた)

雨量 370mm

気候 平年並みの気候だった。晩春に涼しく雨が少なかったことから開花に影響がでた年。

香りや味わいなどの状態 香りはまだ閉じ気味で、ブラック・ベリー、カシス、プラムなどを感じるが、まだこれから、という状態。ポートやブラックチョコレートのニュアンスも。口中でのなめらかさ、木目細やかさ、一体感がとても印象的。今回試飲した中で、最もバランス感覚に優れ、エレガンスが感じられた。

 

2009年(試飲1時間前に抜栓)

Data:

カベルネ・ソーヴィニヨン 73%

カルメネール 22%

カベルネ・フラン 4%

メルロ 1%

雨量 231mm

気候 全体的に早い進行で、夏はドライで暑かった。

香りや味わいなどの状態 フレッシュで若々しい香り。スパイス、ミント、ブラック・ベリー、カシスなど、エキスを思わせる香り。味わいも力強く、タンニンが細かいがとても豊か。ブラックチョコレートのパウダーのような後味。とても若い状態。

 

ボトル縦2012年(試飲1時間前に抜栓)

Data:

カベルネ・ソーヴィニヨン 65%

カルメネール 24%

カベルネ・フラン 8%

プティ・ヴェルド 2%

メルロ 1%

雨量 257mm

気候 2010年、2011年と涼しく遅いヴィンテージが続いたが、2012年は進行が早めで雨が少なく、夏は暑くドライだった。

香りや味わいなどの状態 香りはまだ閉じている。カカオ、ミント、カシス、ブラックチョコレート、黒胡椒などの香り。たっぷりとした果実味で、酸はソフトで、ボリューム感もたっぷり。さらさらとしたとても細かいタンニンにも若さが感じられる。

 

取材協力:(一社)日本ソムリエ協会

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

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