おしゃれに飲む

青森の旅の続きは、三沢という地へ向かいました。夏でなくとも、青森の祭り・ねぶたを楽しめる宿があるというのです。しかも露天風呂もあるとか。訪ねた青森屋で、青森産の日本ワインにも出会うことができました。

 

<謎解き>

約22万坪=東京ドームが17個は入る、という広大な敷地には、宿泊施設だけでなく、かっぱ沼、南部曲屋、旧渋沢邸、チャペルなどがありました。しかも森の部分が多いので「スタッフもすべて把握できていません」と。本当に広いのです。自然のままの部分が多いので、鳥はもとより、カモシカ、キツネ、テン、リス、ウサギなどの動物たちものびのびと暮らしているといいます。どうしてこんなに広いのだろう。なんだか気になりました。

 

今、青森屋というホテルがある地所は、渋沢栄一の書生だった杉本行雄が所有していたのです。渋沢栄一の孫の敬三の書生もした後に、十和田の観光開発に精力を尽くし、この三沢で温泉を掘り観光用のホテルを建設。あまりの広さからでしょう、古牧温泉はこの一軒だけで完結しています。岡本太郎と親しい交友関係にあり、当時はチャペルの尖塔や河童像をはじめ、多くの作品がこの敷地内に飾られていたそうです。そう、杉本行雄は河童好きで、毎年7月の初めに河童祭りを開き、岡本太郎もいつも招かれていたそうです。

チャペルは今もそのままですが、太郎の没後に大半の作品は遺族に返却したそうです。数体だけ、同じく杉本行雄が建てた奥入瀬のホテルに残っています。だから、奥入瀬の河童像はレプリカになったのです。

 

<日本の火祭り!!!>

青森屋にある「みちのく祭りや」は、青森の祭りを幕の内弁当的に見せてくれるショーレストランでした。東北の祭りは、テレビを見るたびに「いつかは生で見てみたいなあ〜」と思いながら、なかなか機会がみつけられずにいたので、初体験です。ある程度食事が進んだところで、会場内にアナウンスが入りました。それまで食事のサービスしてくれていた男性が「行ってきます!」と舞台へ向かっていくではありませんか。

 

青森県は、津軽と南部、下北に分かれています。およそ日本海側が津軽で、太平洋側が南部で、初青森訪問の私にはよくわかりませんでしたが、津軽弁と南部弁も随分ちがうそうです。どうやら津軽のほうが早口で、聞き取るのが難しいのだとか。それはさておき、ねぶた祭りも地域によってしきたりが異なるのだと、初めて知りました。

 

最初に登場した「五所川原」のねぶたは、縦長の立ちの山車で、メリハリのある勢いのあるお囃子です。

次に「弘前」の、扇形のねぶたのお囃子が始まりました。

「八戸」の山車は、すごぉく派手な装飾で、紅白歌合戦の小林幸子を思い出す感じでしょうか。お囃子は、いくぶんシンプルな展開でした。

「青森」のねぶたが、おそらく一番ねぶたのイメージに近いのかもしれません。幅広の山車と共に「ラッセーラーラッセーラー」という威勢のよいかけ声が続きます。

 

「どこの祭りもお互いに尊重はし合っているけれど、自分の地元の祭りにすごく誇りを持っているので、祭りの話になると白熱する!」とは、地元出身者の弁です。ん〜、わかる気がしますね。地元愛の強さが、祭りに出るのでしょう。冬が長い青森だからこそ、短い夏、貴重な夏に、闇をかき消すような熱く大きな火をともして、ともに燃え尽きるほど熱狂する。かいつまんで、ではありますが、よいものを見せてもらいました。

 

そうそう、食事中に「津軽ソーヴィニヨン2013」と「津軽ピノ・ノワール2012」を、飲みました。ソーヴィニヨンはチャーミングでまとまりがよく、ピノ・ノワールは奥ゆかしい、という印象です。どちらも繊細で可憐なので、ワインをあまり飲みつけていない人でも楽しめる、優しい味わいです。

 

<南部曲屋での朝食>

翌朝、敷地内に移築したという南部曲屋で朝食をいただきました。古民家を訪れたことは何度もありますが、食事をするのは初めてです。天井がとても高いので、一部屋の体積がとても大きくて、寒い時期にはなかなか温まらないと、出迎えてくれたミツさん。早くから温め始めてくれたのでしょう。ふんわりとした空気が漂っていました。

 

そして、囲炉裏にはイワナ! こういう図は写真やテレビで見たことはあっても、実際に食べられるなんて幸せです。きっと私の目にはハートマークが出ていたにちがいありません。朝からすごいボリュームですが、他にもカヤキミソや牛肉も。カヤキミソというのは、帆立貝の殻に味噌、卵、具材を乗せて焼いたもの。普通は本当の帆立の殻を使い、殻から出汁が出てくるそうです。やっぱり帆立は青森の名産なのですね。

 

それからもうひとつ、青森の名産を知りました。食用菊です。食用菊の旬は結構短いようで、生で食べられるのは貴重な体験でした。だって、普段は外食の時に飾り程度に菊が出てくることはあっても、生菊で口一杯になることなんてありませんから。だから、菊の花ってこういう味なのだ、と初めて実感したのです。花の香りがほのかにして、後味がほんのり苦い、といったニュアンスでした。菊花のおひたし、気に入っちゃった。

 

隅から隅まで青森一色の青森屋で、たっぷり美味しく熱い青森をいただきました。青森といえば、リンゴぐらいしか思い浮かべることがなかったのに、急に青森通になったような気分です。リンゴの他の名産は、帆立、長芋、ニンニク、マグロ、青森シャモロック、食用菊、そして人の温かさ。冬の厳しい寒さからでしょう。人の温かみをしみじみと感じる旅となりました。

青森の魅力に触れる旅① 〜奥入瀬渓流の巻/七子八珍と日本酒〜

青森の魅力に触れる旅③ 〜八戸酒造訪問の巻〜

(tex t & photo by Yasuko Nagoshi)

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