ワイン&造り手の話

南イタリアのカンパーニャ地方は、長靴でいうと「つま先」部分より少し上のあたりにあります。その海寄りの地、マッシコで古代ローマ時代から脈々と造られてきたワインを、復活させた人がいます。1965年に「ヴィッラ・マティルデ」社を創業したフランチェスコ・パオロ・アヴァッローネという人物です。

 

<ファレルノの復活>

弁護士のアヴァッローネ氏は、仕事の傍ら多くの書物を読んでいたようです。そして古代ローマ時代の、政治家プリニウスや、ヴェルギリウス、マルツィアーレ、ホラティウスといった詩人が書き綴った「ファレルノ」のワイン(Vinum Falernum)について読んでいるうちに、虜になってしまいました。ついには「ファレルノ」ワインを復活させたい! と思い始めたのです。

 

その情熱は、ナポリ大学農学部の教官などの友人も巻き込んでいきました。調べていくうちに、「ファレルノ」ワインを造っていたブドウ品種が判明しました。ところが、19世紀末にこの地にも襲来したフィロキセラ禍によって、貴重な伝統品種は壊滅状態になったのです。ところが、アヴァッローネ氏の意志はそれで諦めるほど生半可なものではありませんでした。

 

引き続き探していると、小さな農家の畑の片隅にほんの数株が生き残っていたのです。そしてそれをもとに徐々に増やしていきました。同時に、かつて「ファレルノ」のブドウ栽培が盛んに行われていた場所が「マッシコ」だとわかり、マッシコでのファレルノを再生が始まったのです。

 

「ファレルノ・デル・マッシコ」は、1989年にDOCを獲得することになりましたが、これはまさにヴィッラ・マティルデのアヴァッローネ氏の古代ローマへの熱い思いの結晶だと言えるのではないでしょうか。ロマンあふれる復活劇です!

 

ちなみに、白ワインの味わいは、こんな感じでした。

「ファレルノ・デル・マッシコ・ビアンコ2013 Falerno del Massico Bianco 2013」

香りは柔らかで、マスカットやパイナップル、黄桃といった、よく熟したトロピカル系。とてもなめらかな食感で、酸味もソフト。ほんのりとミネラリーな要素と収れん性(口の中がギュッと引き締まる感じ)が感じられて、全体にまろやかな印象でした。

 

このワインに使われている白ブドウ品種ファランギーナについては、つづきにて。

(輸入元:モンテ物産)

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

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