東澤壮晃の楽しい嬉しい美味しいヒント/〜お肉屋さんのオーストラリアンレポート〜
04/20
今回はちょっと趣向を変えて、数日前まで滞在していたオーストラリアの最新羊グルメリポートをお伝えいたします!
オーストラリアの羊肉にはオーストラリアの古典的なシラーズが定番なんて話は良く聞きますが、それも羊の月齢や調理法、トレンドによりだんだんと変わってきています。
コアラ・カンガルー・グレートバリアリーフがオーストラリアだと思っていては、現在のオーストラリアの良さが見えず、うかうかしていると取り残されてしまいます。(編注:ん?日本をゲイシャ、サムライ、フジヤマ、というのと同じ感じですか?)
羊肉という食肉にスポットを当てても、色々と様変わりしているのです。
ニュージーランドと違い、食する為の羊肉に特化したオーストラリアでは、一言で羊肉といっても様々なタイプが存在します。
たとえば、羊毛品種のメリノに肉用種のポールド・ドーセットを掛け合わせたり、更に肉付きを良くする為のサフォーク品種を掛け合わせたりなど、旨い肉を楽しむ為にどんどん進化しています。
また、最近良く目にするのはドーパー品種。寒い地域や、乾燥地帯でも飼育する事が可能な南アフリカがルーツの羊。あまり知られていませんが、日本でも楽しむ事ができます。昨今は冷涼地域にあるワイナリー、雑草を食べさせる為の羊として、循環農業を目指すワイナリー、ビオワイナリーでも目にします。(編注:今度、そういうワイナリーのワインを紹介してください♪)
様々な要望にこたえる肉用の家畜が飼育されれば、そこに合わせるワインも変わっているという流れです。ワインが先か食が先かはさておいても、凄い勢いで色々な変化が起きている事、そしてそれを受け入れる事がこの国の強みと言えましょう。
さて、今回、オーストラリア・ヴィクトリア州政府と豪州食肉家畜生産者事業団の強力なバックアップを得て様々な羊肉料理とワインを楽しむ機会がありました。
そのうちの一つがメルボルンの中心地にある「Pei Modern」。オーストラリアのベストレストランに名を連ねる人気店。
もっとも多く利用されていた調理法がスロークッキング。低温でじっくりと火を入れて、ホロホロになったお肉を楽しむというものです。
もともと歯ごたえのある肉を柔らかく楽しむ事ができる調理法ですが、これも現地ではマトンなどの大きく育った羊を使わず(日本ではマトンが安いイメージがありますが、肉用として育てるとラムよりも飼育期間が長いため、冷静に考えればコストは掛かるのです)柔らかな仔羊(ラム)を使用する場合が殆ど。
おおよそ生後4カ月程度の仔羊が主流で、味わいはタンパク、香りはマイルド、歯ごたえはテンダー。過去の日本人が想像していたマッチングである古典的な果実実の強いパワフルなシラーズには負けてしまう上品さです。
そうなると、ワインのトレンドと同じく主に冷涼地域で作られるアルコール度数が比較的低く、どこかエレガントさを感じるワインが多く提供される場合が多いようです。
今回の渡豪で13.5度以上のアルコール度数があるワインを楽しむ機会は極僅か。フードフレンドリーで食の繊細さを損なわず、次から次へとグラスが開いてしまう、そんなワインが殆ど。
ワインの仕事ではなく、肉の仕事で訪れたオーストラリアでしたので、話す相手はシェフが殆どでソムリエと話す機会はあまりありませんでしたが、その傾向は十分に伝わってきました。
このように日本で楽しむ羊肉の楽しみ方とは少し違った楽しみがオーストラリアには存在し、ぜひ日本でもこのような手法で楽しませてくれるレストランが増えれば羊肉屋としても嬉しいな!というお話でした。
今回訪れた8件ほどの人気レストラン。機会があれば、またオーストラリアの最新ラム肉料理事情をお伝えしましょう!
ちなみに、今回の渡豪は日本の羊肉マーケットを盛り上げる為の「Lambassador(ラムバサダー)」プロジェクトの一環。日本で9名選ばれた羊肉プロフェショナル達の羊合宿!!
プロ向けのプロジェクトですが、今後どこかでこの名前を耳にする事があるかも知れませんので、ぜひチェックして下さい!4月22日には都内でローンチイベントも開催予定!
羊肉とともに楽しめるワインも、プロ向けにどんどん発信していきます!
(text & photos by Moriaki Higashizawa)
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