ワイン&造り手の話

ボルドーの2つのエステイト、「シャトー・クラーク」(左)と「シャトー・デ・ローレ」。シャトー・ラフィットの6名のオーナーの一人でもあり、熟成用の樽はラフィット内にある樽工場で製作されたものを使用。

ボルドーの2つのエステイト、「シャトー・クラーク」(左)と「シャトー・デ・ローレ」。シャトー・ラフィットの6名のオーナーの一人でもあり、熟成用の樽はラフィット内にある樽工場で製作されたものを使用。

金融業で知られるロスチャイルド家が、いくつもの優れたワインを造っていると既にご存知の方も多いことでしょう。フランス系ロスチャイルド家がボルドーのシャトー・ラフィット・ロートシルト、イギリス系の一族はシャトー・ムートン・ロートシルトのオーナー。そしてラフィットの初代オーナー、ジェームズの曾孫バロン・エドモンドが購入したのは?

バロン・エドモンド・ドゥ・ロートシルトが最初に手に入れた敷地は、ボルドーのメドック地区、リストラック村にあるシャトー・クラーク。1973年のことでした。この時代には既に格付けが存在し、ラフィットもムートンも「1級」の地位にありますが、クラークは5級まである61シャトーには入っていません。しかし、バロン・エドモンドの狙いは「ポテンシャルのあるシャトーを見つけて、自らの手で評価を上げること」だったと、輸出部長のフロラン・ムガン氏はいいます。そして、今では見事に「3級に匹敵する」との評価を得ているのです。

バロン・エドモンドの一族は、1997年から息子のバロン・ベンジャミンにバトンを渡し、彼らは2003年に2番目のシャトーを購入しました。シャトー・デ・ローレは、ボルドーの右岸のワイン産地として有名なサンテミリオンの近郊にあるピュイスガン・サンテミリオン地区にあります。やはり、それほど有名ではないけれどポテンシャルのある土地、という点でクラークに共通しています。また、ここの敷地には1860年頃に建てられた美しいお城があることもあり「眠れる美女を獲得した」と評判になったようです。

続きはまだあります。でも今度は別の大陸へ。南米のアルゼンチンで1999年から植樹を始めて2003年にワイナリーを設立しました。「メンドーサから少し離れた場所ですが、調査の結果、私たちが育てようと決めた品種マルベックは標高1100メートルの場所が最も適していると判断したので100ヘクタールひと続きの畑にしました」と、すべてのエステイトの醸造長を務めるヤン・バックウォルター氏が説明してくれました。古い畑を買うのではなく、いちから植樹を始めるあたり、やはりチャレンジングな精神です。

アルゼンチンの3種。右からフルーティーなタイプの「アグアリベイ」、核となる「グラン・マルベック」、特別な区画のセレクションで限定品の「グラン・コルト」。ここにもラベルやキャップシールに、ロスチャイルドならではの5本の矢の印が。

アルゼンチンの3種。右からフルーティーなタイプの「アグアリベイ」、核となる「グラン・マルベック」、特別な区画のセレクションで限定品の「グラン・コルト」。ここにもラベルやキャップシールに、ロスチャイルドならではの5本の矢の印が。

こうやってみると、既にできあがったものではなく、自ら創り上げていくという姿勢が一貫しています。実際には評価を得られるまで何年もかかりますから、精神的にも経済的にも耐久力がなくてはできないことですね。

そういえば、このバロン・エドモンド・ドゥ・ロートシルト一族は、ワイン造りだけではなく、本業はやはり金融業、他にホテルやゴルフ場の経営、ヨット競技のサポートなど、とても多くの事業を行っています。そしてなんと! 白カビチーズのひとつ、ブリも生産しているのだといいます。そしてブリの生産者の中で、いわゆるフェルミエ(チーズ農家)はこの1軒だけのようです。「牧場を所有して牧草を育て、牛200頭を飼育して、搾乳してチーズへ加工するところまで、すべて自社で行っているのはブリでうちだけですよ」。実際に試食して、あまりの美味しさに驚きました。チーズの味の表現は得意ではないので書きませんが、今まで食べた白カビチーズのイメージが変わりました、とだけお伝えしておきます。ワインとセットで楽しんでみてはいかがでしょうか。

<Data>

ワイン名:シャトー・クラーク2007 Château Clarke 2007

生産者:シャトー・クラーク Château Clarke

産地:フランス/ボルドー地方/
リストラック・メドック

ブドウ品種:メルロ
主体+カベルネ・ソーヴィニヨン

大きな大きなブリ・ド・モー。ご覧の通り、直径はワインのボトルの高さより長いのでした。

大きな大きなブリ・ド・モー。ご覧の通り、直径はワインのボトルの高さより長いのでした。

輸入元/希望小売価格:ピーロート・ジャパン/円

*上質の牛肉や鴨肉が食べたくなる、バランスよく木目の細かい味わい。

ワイン名:シャトー・デ・ローレ2010 Château des Laurets 2010

生産者:シャトー・デ・ローレ Château des Laurets

産地:フランス/ボルドー地方/ピュイスガン・サンテミリオン

ブドウ品種:メルロ主体+カベルネ・フラン

輸入元/希望小売価格:ピーロート・ジャパン/円

*力強さもあるけれど、メルロらしい丸みも感じられる心地よい味わい。

ワイン名:グラン・マルベック2009 Gran Malbec 2009

生産者:フレシャス・デ・ロス・アンデス Flechas de Los Andes

すべてのエステイトの醸造長ヤン・バクウォルター氏(右)と、輸出部長のフロラン・ムガン氏(左)。

すべてのエステイトの醸造長ヤン・バクウォルター氏(右)と、輸出部長のフロラン・ムガン氏(左)。

産地:アルゼンチン/メンドーサ地方

ブドウ品種:マルベック

輸入元/希望小売価格:ピーロート・ジャパン/円

*凝縮感があり、チェリー、スミレ、スパイスなどの香りが豊か。

チーズ名:ブリ・ド・モー フェルミエ“トートシルト”Brie de Meaux Fermier “Rothschild”

産地:フランス/イル・ド・フランス圏/セール・エ・マルヌ県

乳種:牛

輸入元/希望小売価格:フェルミエ/966円・100g

https://shopping.fermier.co.jp/shopping/?pid=1346046031-693691

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