ワイン&造り手の話

"S"は「スティラン」の「エス」。

ピノ・ノワールの銘醸地、特級格付けとして知られるアンボネイ村。「クリュッグ」の「クロ・ダンボネイ」や、「ジャック・セロス」の「リュー・ディ ル・ブー・デュ・クロ ア・アンボネイ」といった畑がある村です。ここで、夫のパトリック・ルノーと共に、いくつかの改革を行ったヴァレリー。その目的は「アンボネイ」らしさと「スティラン」らしさをより明確に伝えたい、ということでした。では、そのらしさとはどんな内容なのでしょうか。

 

何人もの方たちの意見を合わせると「スティラン」のシャンパーニュは、概して「繊細」で「優しい」味わいだ、ということになります。そして「和食に合わせやすい」、「食中酒として飲みたい」という意見も多く聞かれました。きっと、それが「アンボネイ」の「スティラン」らしさに繋がるのでしょう。

<Point1: アンボネイらしさ>

シャンパーニュ地方には、他にもピノ・ノワールの銘醸地と呼ばれる特級格付け=グラン・クリュの村があります。ただ、中でも「アンボネイ」は最も「アイ」によく似ていると言われます。力強いタイプでも、ミネラル感の強いタイプでもなく、「アイ」と同じようには、アロマが豊かでベルベットのようななめらかさ、エレガントで寛大さがある、というのが一般的な形容詞です。

 

そこでヴァレリーが考えたことのひとつが、ブラン・ド・ノワール、つまりピノ・ノワールという黒ブドウだけから(ロゼではなく普通の白い)シャンパーニュを造る、ということ。他のメゾンでは造っているところがありますが、父アランは思いつかなかったのかもしれません。それが「ペルル・ノワール」。とてもバランスがよく、ブドウの素性のよさがよくわかるキュヴェです。

 

そしてもうひとつが、色鮮やかなセニエの「ロゼ」。シャンパーニュでは赤ワインを加えてロゼを造ってもよいのですが、ほんの数パーセントのメゾンだけが果汁に黒ブドウの果皮を少し漬けておいてロゼの色を得る、セニエという方法をとっています。新「スティラン」のロゼは、少し長めの時間漬けて鮮やかな色を出すと共に、とてもきれいなベリー系果実の香りを残しています。

 

<Point2:スティランらしさ>

もちろん「アンボネイらしさ」が「スティランらしさ」でもありますが、一族の畑の構成がピノ・ノワール65%、シャルドネ35%と、アンボネイ全体の栽培比率と比べるとシャルドネが多いことから、他のキュヴェのシャルドネの比率が高いのです。ですから、シャルドネ独特の繊細さが加わることでスティランならではのバランスのよさ、穏やかさが醸し出されているのだと感じられます。

 

そして、もうひとつはヴァレリーもパトリックも、とても美味しいものが好きな人たちで、とにかく自分たちのシャンパーニュは食事とともに飲んでほしいと強く願っています。だからでしょう。本当に、幅広い料理と組み合わせられる包容力を持っています。日本に入荷したら、一度試してみてください。

<付記>

「スティラン」は何度か名称のマイナーチェンジがありましたが、ジェラール・スティランが1916年に創立し、アラン・スティラン、そして娘のヴァレリーへと引き継がれたこのメゾンで、アンボネイ村を中心に自社畑を所有しています。ただし、相続によって兄弟や親戚へ分割された畑についても、栽培管理を引き続き父アランが行っていて、形式上それらのブドウも「購入」しているので、カテゴリーとしては「ネゴシアン・マニピュラン」に属しますが、基本的には「レコルタン・マニピュラン」と同等と考えてよいことになります。

<各キュヴェの概略>

キュヴェ・アレクサンドル ブリュット プルミエ・クリュ ノン・ヴィンテージ

Cuvêe Alexandre Brut 1er Cru NV

ブドウ品種:ピノ・ノワール40%/シャルドネ40%/ピノ・ムニエ20%

瓶内熟成:約5年

ヴァレリーが引き継いだ1999年に初めて瓶詰め。その年にちょうど長男が生まれたので、息子アレクサンドルの名をつけたキュヴェ。アペリティフとして、あるいはパーティーでのサービスなど、様々なシチュエーションで気軽に楽しんでいただきたい銘柄。

 

キュヴェ・シグネチャー ブリュット グラン・クリュ ノン・ヴィンテージ

Cuvêe Signature Brut Grand Cru NV

ブドウ品種:ピノ・ノワール60%/シャルドネ40%

瓶内熟成:約5年

父の代から造り続けている伝統的なキュヴェで、スティラン一族の象徴となる存在。グラン・クリュのピノ・のワールとシャルドネが醸し出すエレガンスを、お料理と共に飲んでほしいキュヴェ。仔牛肉の料理がお薦め。

 

キュヴェ・ペルル・ノワール ブリュット グラン・クリュ ノン・ヴィンテージ

Cuvêe Perle Noire Brut Grand Cru NV

ブドウ品種:ピノ・ノワール100%

瓶内熟成:約5年

このキュヴェは、最も幅広い料理に合わせられる。例えばサン・ピエール(ニシマトウダイ)やロット(アンコウ)などの魚料理、若いラム肉、コンテ、パルメッジャーノ、ミモレットなどの熟成したチーズ、あるいは黒トリュフを使用した料理にもお薦め。

 

キュヴェ・ブラン・ド・ブラン ブリュット グラン・クリュ ノン・ヴィンテージ

Cuvêe Blanc de Blancs Brut Grand Cru NV

ブドウ品種:シャルドネ100%

瓶内熟成:約5年

アンボネイのシャルドネは、フレッシュだがフルーティーで豊かになる。シャンパーニュ・ソース、もしくはクリームソースを添えた魚料理がお薦め。

 

コレクション・プリヴェ ブリュット グラン・クリュ ノン・ヴィンテージ

Collection Privêe Brut Grand Cru NV

ブドウ品種:ピノ・ノワール50%/シャルドネ50%

瓶内熟成:約6〜7年

毎年、最もよいブドウのみを優先的に使用する限定品で、これもヴァレリーが引き継いでからの新しいキュヴェ。特に食事との相性を考えて造られたスペシャル・キュヴェで、豊かさと複雑性が特徴的。鶏肉のクリームソース、マッシュルーム添え、といった豊かな味わいの料理にお薦め。

 

キュヴェ・ロゼ ブリュット グラン・クリュ ノン・ヴィンテージ

Cuvêe Rosê Brut Grand Cru NV

ブドウ品種:ピノ・ノワール100%

瓶内熟成:約5年

これもラム肉と相性がよい。あるいは、鴨肉にイチジクやチェリーのソースを添えて。あるいは、アップルパイや赤い果実のサバイヨンなどのデザートともお薦め。

 

キュヴェ・ノン・ドゼ グラン・クリュ ノン・ヴィンテージ

Cuvêe Non Dose Grand Cru NV

ブドウ品種:ピノ・ノワール60%/シャルドネ40%

瓶内熟成:約6〜7年

この2006年主体のキュヴェが初めての作品。(2012年に初リリース)

牡蛎、ムール貝などの貝類をはじめとするシーフードにお薦め。

 

キュヴェ・ミレジメ ブリュット グラン・クリュ 2006

Cuvêe Millesimê Brut Grand Cru 2006

ブドウ品種:ピノ・ノワール50%/シャルドネ50%

瓶内熟成:約6〜7年

父の代から引き継いでいるキュヴェで、気候条件が整った素晴らしい年にのみ造る。例えばロブスターのバターソースのような、しっかりとした味わいの料理にお薦め。

 

輸入元:アビスジュニア

撮影協力:五反田のフランス料理店「ヌキテパ」

http://nequittezpas.com/main.html

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