ワイン&造り手の話

キャロルIPOB (In Pursuit of Balance) とは、「バランスの探求」を意味する言葉で、カリフォルニアのピノ・ノワール、シャルドネによるワインの優れたバランスを探求する造り手が集まるグループのことです。4月に24の生産者が日本で試飲会を開催しました。その中で、「レッド・カー」という印象的なラベルで上品なワインに出会いました。オーナーは、ハリウッドから転身したキャロル・ケンプという人物でした。

 

ラベルの赤い車両は、1960年代にロサンゼルス市内を走っていた、懐かしいトロリーに思いを馳せているそうです。レトロな雰囲気がよいですね。それと同じように、ワイン造りにも古き良き時代の手法を用いているようです。

 

 

「日本では、写真を撮られる時はこうするんだよ」と友達(左)から教わると、満面の笑みでピース!

「日本では、写真を撮られる時はこうするんだよ」と友達(左)から教わると、満面の笑みでピース!

もともと田舎で生まれ育ったキャロルは、フィルム・プロデューサーとして20年以上ロサンゼルスに住んでいました。ジョニー・デップが主演と監督をした「ブレイブ」の製作に携わるなど、ハリウッドで活躍していたようです。ところが、自然が好きであり、ワイン愛好家だったキャロルは、同じくハリウッドで活躍していたスクリーン・ライターのマーク・エストリンと共に、ワイン造りを始めることになりました。

 

「文化的でクリエイティブな仕事、という意味では、映画製作もワイン造りも同じだから」と、キャロルは言います。残念なことにマークは既に他界してしまったのですが、キャロルは今ではハリウッドを引退してワイン造りに専念しているようです。

 

「自然をそのまま映し出したい」というのが、何よりの希望だといいます。

シャルドネとピノ・ノワールを数種類試飲したところ、どれも共通していえるのが、果実のやさしさがありながら、熟しすぎていないこと。そしてまっすぐに伸びのよい酸があり、タイトでエレガントな姿です。どこかでこういうワイン造りを学んだのかと尋ねてみました。

「自然が教えてくれるように造っただけさ」と、キャロル。

好みのタイプのワインが、エレガント系だったのでしょう。

 

シャルドネもピノ・ノワールも、看板の「レッド・カー」は複数の畑からのブドウをブレンドしたもので、いくつかの単一畑ものも造っています。

2011年に購入したヘイガン・ヴィンヤードのシャルドネとピノ・ノワールは、どちらも2012年ヴィンテージが初リリースだといいます。とても美しいエレガントな姿ですが、この畑は標高がとても高い位置にあることが、ラベルで一目瞭然です。

標高850フィート=約259メートル

太平洋から4.6マイル=約7.4キロ

畑の広さは12 エーカー=約4.85ヘクタール

 

自然体、でもこだわりの造り手キャロル・ケンプ。いい人に会えました!

 

ボトル

中央のボトルが「トロリー」、両脇が「ヘイガン・ヴィンヤード」。

<試飲したワイン>

トロリー・シャルドネ 2012/優しい香りとタイトな味わいが印象的。

ヘイガン・ヴィンヤード・シャルドネ 2012/とてもエレガントで且つ芯の強いシャルドネ。100%マロラクティックしているというのに、酸もしっかり。

トロリー・ピノ・ノワール 2012/きれいなラズベリーやスパイスが香り、心地よい口当たり。上品。

レッド・カー・エステート・ピノ・ノワール 2012/鰹節的な旨みを感じる味わい。質感のあるテクスチャー。

ヘイガン・ヴィンヤード・ピノ・ノワール 2012/若くて閉じているけれど、口の中に入れると香りが開いてあでやかに。エレガントで底力も感じられる。

ボトルを裏返すと、細かい情報満載です。

ボトルを裏返すと、細かい情報満載です。

<方針>

酵母はすべて自然酵母。補糖、補酸は一切しない。ブドウが過熟しないように、早めに収穫する。

(輸入元:富士インダストリーズ)

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

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