for Professionals

ボトル横

フィリポナといえば、マルイユ・シュール・アイ村の超急斜面のモノポールの畑「クロ・デ・ゴワセ」が有名です。一度飲んだら忘れられない味わいです。今年、フィリポナ始まって以来、初のブラン・ド・ノワールのヴィンテージと共に、そのクロ・デ・ゴワセに匹敵するような限定キュヴェが入荷しました。マルイユ・シュール・アイ村の特別キュヴェと、アイ村の単一畑ものです!

 

<フィリポナ始まって以来、初のブラン・ド・ノワール>

16代目当主のシャルル・フィリポナ氏が、そのお披露目のために来日してくれました。1522年からの長い歴史あるフィリポナ家は、もちろんピノ・ノワール主体のメゾンとして知られています。ところが「ピノ・ノワール100%でシャンパーニュを造ったのは、実は2006年が初めてだった」と、シャルルさん。意外でした。

 

まずは「ブラン・ド・ノワール ブリュット2008」から。

「ブラン・ド・ノワール ブリュット2008」

ピノ・ノワールは、すべてマルイユ・シュール・アイ村とモンターニュ・ド・ランスの自社畑より。マルイユ・シュール・アイ村が主体+アンボネイ+アイという、モンターニュ・ド・ランスの南部が60%を占め、残り40%が北部のマイィ+ヴェルズネイ+シルリィ+ヴェルジイなど。いずれも特級か1級の畑だけです。

 

一番搾りのキュヴェのみを使用。発酵はステンレスタンク、もしくは3〜4年目のブルゴーニュの小樽で行い、ステンレスによる発酵の場合にはマロラクティック発酵も行います。小樽発酵のものは行いません。2009年6月にティラージュを行い、デゴルジュマンは2014年4月。ほぼ5年間の瓶内熟成を経ています。ドザージュ4.5g/l。ブリュットの表示ですが、エクストラ・ブリュットの範囲内です。

どうしてエクストラ・ブリュットと記載しないのか、聞いてみました。

「フランスでは、長年甘いシャンパーニュが好まれてきたので、ラベルにエクストラ・ブリュットと書くのに抵抗がありました。でも、今は辛口嗜好になってきているから、これからはエクストラ・ブリュットと表示するかもしれない」とのことでした。聞けば、今でも年配のフランスの方たちは甘いもの系が大好きのようです。そう言われれば、みなさん食後のデザートをしっかり食べますものね。昔はそのタイミングで甘いシャンパーニュを飲んでいたのですから。

 

2008年は「10年に1度のバランスがよい素晴らしい年」とシャルルさん。

花やアプリコット、ベリー系果実、柑橘類、ほんのりとスパイスや香ばしさも感じられる、とても上品な香りで、味わいも上品です。ミネラリーで酸が生き生きとしているので、力強さはあるけれど重さはなくフレッシュ。まさに上品でバランスのよいブラン・ド・ノワールです。

 

右がマルイユ・シュール・アイ、左がル・レオン。

右がマルイユ・シュール・アイ、左がル・レオン。

「マルイユ・シュール・アイ 2006」

スペシャルなブラン・ド・ノワールです!

これは、フィリポナが本拠地を置くマルイユ・シュール・アイ村のピノ・ノワール100%です。

Valofroy, Les Cotes Montin, Carriere d’Athis, Croix Blancheの4つの区画のブレンドで、クロワ・ブランシュはあのクロ・デ・ゴワセの中にある区画のひとつです。2,304本のみの限定品。

一番搾りのキュヴェのみを使用。発酵は50%ステンレスタンク、50%がブルゴーニュの小樽で行い、ステンレス発酵の場合だけマロラクティック発酵も行います。2007年6月にティラージュを行い、デゴルジュマンは2014年9月。7年以上の瓶内熟成を経ています。ドザージュ4.25g/l。

こちらも、2008年のブラン・ド・ノワール同様の上品な香りで、プラスしてスパイスとハチミツ香が加わり、粒子の細やかさが感じられます。なめらかでまろやかさがありますが、酸とミネラルもしっかり。後味に蜂蜜の香りが残ります。ぶどうの熟度を思わせせる味わいです。

 

「ル・レオン2006」

こちらもスペシャルなブラン・ド・ノワール!

このピノ・ノワールは、フィリポナ家が創業当時からアイ村に所有する単一畑から造られるキュヴェです。モノポールではないけれど、ここの3分の2はフィリポナが所有。2,085本のみの限定品。

造り方は、上のマルイユ・シュール・アイとほぼ同じでした。

とても若々しい香りで、スパイシーです。シャルルさんは「白胡椒の香り」と言っていました。味わいはふくよかで、厚みがあり、ヴェルヴェットのような舌触り。やはり酸やミネラルもあるので上品な仕上がりですが、より蜂蜜やスパイシーな香りが強く若々しい、という印象です。

 

「アイとマルイユ・シュール・アイの大きな違いは、アイは石灰質が多くミネラリーになりやすいのに対し、マルイユは粘土が入る、という点」。ただし、クロ・デ・ゴワセの場合にはマルイユ・シュール・アイの中でも特殊な位置にあるので、粘土は含まれていない石灰質土壌だから「アイと同じようなミネラル感に、太陽の熱さが加わる」特別な畑とうことなのです。

 

<おまけ>

「クロ・デ・ゴワセ」はピノ・ノワールだけではありませんが、せっかく2005年の味見をさせてもらったので、少々感触を。

ピノ・ノワール65%+シャルドネ35%。ドザージュ4.25g/l。

そういえば「クロ・デ・ゴワセ」の命名は、あまりにも急斜面な畑なのでここでの仕事が方言で「ゴワセ=重労働」だと聞いていたのですが、ちょっとニュアンスの違う話を聞きました。

やはり方言のようなのですが「ゴワセ」とは、「バランスの悪い、まっすぐ立つのが困難な急斜面」という意味なのだそうです。確かに、昨年春にこの畑に入らせてもらった時に納得しました。壁で囲まれたその畑は、斜度45%の真南向きの5.5ha。あぁ〜、これがあの噂の! という感動に包まれました。本当に急な斜面で、すぐ下にマルヌ川が見えました。そして壁で囲まれているので、すぐ上の丘の頂にある畑では風が強く吹いていたにも関わらず(結構寒い3月のある日でした)、クロ・デ・ゴワセに入ると、風が穏やかな上に空気が温かく感じられました。斜度も含め太陽の光や熱を充分に得られる環境にあるのだと実感したのでした。

 

やはり、香りから力強さが推し量れるほど。スパイス、黄桃、蜂蜜、トーストなどなど、複雑で厚みのある香りです。丸み、厚み、なめらかさのある、そしてミネラルもストラクチャーもしっかりとしています。時々ワインの味わいの表現で、「噛めるような」と言いますが、まさにそれです。類い稀なシャンパーニュです。

 

<最後に>

デゴルジュマンの日付とドザージュは、ちょっと読みにくいですけれど、一番下に。

デゴルジュマンの日付とドザージュは、ちょっと読みにくいですけれど、一番下に。

それから、フィリポナはすべてのボトルの裏ラベルに「収穫年」「リザーヴワイン」「デゴルジュマン」「ドザージュ」などの情報が記されています。1990年代からと、とても早い段階から記載しています。フィリポナ家は、フィアットのアメリーニ家と親交が深い関係で、イタリア市場に強いようなのですが、イタリアの顧客からの要望があって載せ始めたということです。

特に、デゴルジュマンの日付とドザージュの量は、「デゴルジュマンの後の成長を明確にするためにとても重要」だといいます。デゴルジュマンをしてから2年間は、とても若い状態で飲むことができ、その後徐々に熟成感を増し、6年後ぐらいまで成長していく、というのがシャルルさんの見解です。どういう変化をしていくのか、経過観察をちょっと試してみたくなりました。

 

ちなみに、クロ・デ・ゴワセの14区画の中の1区画からのキュヴェが、来年リリースする予定があるとのこと。こちらも楽しみです!

(輸入元:富士インダストリーズ)

(text & photos by Yasuko Nagoshi)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Related Article