「サン・パウ」で、カスティーリャ・イ・レオン州のワイン講義を受ける、の巻 〜ペスケラやピングスも〜
08/16

「カスティーリャ・イ・レオン州のワインは……」と言われて、すぐにスペインのあのあたりで……と、思い浮かべられるでしょうか? ワインの産地名を言ったほうがわかりやすいかもしれません。リベラ・デル・デュエロ、トロ、ルエダ、ビエルソなどがある州で、デュエロ河がこの州を横断しています。スペイン料理店「サン・パウ」の方たちが、この州を訪問し研修を受けられた、ということで、それを伝授してもらう会がありました。伝言ゲームのようですが、皆さんにもいくつかお伝えしたいと思います。
スペインは大陸性気候の産地が多く、カスティーリャ・イ・レオン州の産地も大半がそうなのですが、西側に位置する産地、ビエルソとアリベスだけは大西洋からの影響を受けて降雨量が多いのが特徴です。ちょうど、降雨量や気温、標高なども記されたスライドを見せてもらいました。参考になると思いますので、いただいた資料を画像にしてみました。
スペインは全体的に標高が高いことで知られていますが、これを見ると、この州の中では特にリベラ・デル・デュエロが飛び抜けて高地にあることがわかります。
- カスティーリャ・イ・レオン州の拡大図。各産地に色づけがしてあります。
- 産地ごとの気温マップ。2度3度クリックしてもらえば、大きめ画像で見ていただけます。
- 産地ごとの降雨量マップ。
- 産地ごとの気象条件。平均気温、降雨量、日照時間、標高。
- 各産地の主要品種とその他の品種。
- 珍しい、アルバリン・ブランコ。スペイン語あ読める方は是非解説をお読みください。
各産地で栽培されているぶどう品種の一覧もありました。黄緑色の部分が白用で上が主要品種、下がその他、ということですね。
ちなみに、こんなことを聞きました。
「この地域は5月頃霜が降りるので、発芽が早いシャルドネは栽培に向かない。カベルネ・ソーヴィニヨンは成育期が長く、収穫時期には既に気温が下がり寒くて凍ってしまうので、やはり栽培は困難。シラーは水を必要とする品種なので、この地域では無理」。
研究機関がトライアルをした結果なのでしょう。これを聞いて、テンプラニーリョが「テンプラーノ=早い」という言葉からの命名で、収穫時期が早い品種だ、ということを思い出しました。そういう意味で、テンプラニーリョはスペインという土地にあるべき品種なのだと納得します。
一覧の中には、聞き覚えのない品種もたくさんありました。赤用品種のプリエト・ピクード、ルフェテ、ブルニャル、フアン・ガルシア。白用品種の、アルバリン・ブランコ。隣の大西洋に面したリアス・バイシャスで栽培されている品種、アルバリーニョと名前が似ていますが、別の品種のようです。40haほどしか栽培されていない稀少品種というのですが、なんと日本に輸入されているというのです!
ボトルを撮り忘れましたが、「パルデバジェスPardevalles」という造り手の2013年ヴィンテージを味見できました。少しアルバリーニョに似た雰囲気を持っています。白い花や果実の香りがして、とてもフレッシュで繊細な味わいでした。価格も手頃なので、気軽に楽しめる白ワインです。
ルエダからはふたつの白がサービスされました。ひとつはベルデホ100%の「ベロンドラーデ」の「キンタポロニア2014」。黄桃のネクターや熟した柑橘類を思わせる、ボリューム感のある口当たりのよい白ワインです。
「アバディア・レテュエルタ」の「ル・ドメーヌ・ブラン」は、ソーヴィニヨン・ブラン主体でベルデホをブレンドしたもので、トロピカル系果実とバニラなどのふっくらとした香り、そして味わいもまったり感も楽しめるほどのボリューミーさ。この2アイテムだけでも、充分に太陽の力を感じ取ることができます。
赤ワイン3種類は、すべてテンプラニーリョ100%。豪華なラインナップです。
「テソ・ラ・モンハ」の「アラバスタ2011」の産地は、トロ。トロらしい、濃厚な香りと味わいです。プラムというより、プルーンのエキスのような香りに、スパイシーさ、ブラックチョコも感じられます。トロッとした舌触りですね(笑)。タンニンもしっかりして、とても印象的な味わいです。
「ドミニオ・デ・ピングス」の「フロール・デ・ピングス2012」の産地は、リベラ・デル・デュエロ。ここのファースト・キュヴェの「ピングス」は、アメリカの有名評論家お墨付きのワインとしても有名です。トロの後に飲んだせいもあるのでしょう、上品な印象を受けました。黒い果実より赤い果実のニュアンスで、パン・デピス的な香りもあり、今でも美味しくいただけます。
「ティント・ペスケラ」の「レセルバ2010」の産地も、リベラ・デル・デュエロ。香りが開き始めていて、スパイス、黒い果実、野性的な要素など、複雑性を帯び初めています。やさしいタッチでバランスよく、豊かなタンニンもとてもきめ細やかでホッとします。
こうやって、カスティーリャ・イ・レオン州のワイン(今回は、大陸性気候の銘柄)をいくつか飲んでみると、やっぱり陽光の力をたっぷり感じることができます。ただ、寒暖の差が激しいためでしょうか。メリハリがある、ということも、大きな特徴のひとつなのではないでしょうか。
見つけたら、是非試してみてください!
- 前菜のひとつ。高級ガスパチョ、でしょうか? トマトとアメリカンチェリーのサルモレッホ、雲丹と野菜のロール
- せっかくなのでお料理写真も。これは前菜のひとつ。比内地鶏とお米のクロケッタ、唐辛子のゼリー、紫マスタード
- ホタテ 人参のソーダ、ライム 人参のムースがシュワッとして不思議な感覚。
- 石鯛 緑と白のアスパラガス、黒ニンニク ちなみに、6月初旬にいただきました
- 北海道産仔羊 花ズッキーニ、じゃがいも 赤ワインがすすみます。
- ホセリート社イベリコ豚のプルーマ パイナップルとラディッシュ ホセリートのイベリコ豚の料理、お初でした!
(text & photos by Yasuko Nagoshi)
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