ワイン&造り手の話

笑顔が爽やかなマチュー・ダイス。ワインを語り始めると、その情熱に圧倒されます!
試飲セミナーは「自由が丘ワインスクール」で行われました。左は主宰の永野寿子さん。

試飲セミナーは「自由が丘ワインスクール」で行われました。左は主宰の永野寿子さん。

世界中に多くのファンを持つアルザスの「マルセル・ダイス」の後継ぎになるマチュー・ダイス氏。この爽やかな面持ちにして、なかなか頑固一徹な人でした。父で現当主のジャン・ミッシェル・ダイス氏を知る人は「情熱的なかたり口調はお父さんそっくり!」といいます。さあ、どんなワインを造っているのでしょうか。

「アルザスワインといえば、フランスの中でも数少ない『ブドウ品種名』がラベルに表記されているワイン産地です」。こういう説明を、今まで何度もしてきたと記憶しています。ところが、「マルセル・ダイス」の場合にはちょっと違う。「ブドウ品種の個性より、畑の個性をより重要視している」という理由で、ラベルに最も大きな文字で記されているのは品種でも造り手の名でもなく、畑名なのでした(ここの銘柄でブドウ品種名をラベルに表記しているものもありますけれど、彼ら自身の『心』は畑名をつけた銘柄にあります)。

じゃあ、どうして? そう聞きたくなりますよね。現在29歳で既に醸造は父から任されているマチュー・ダイスさんから説明を聞きました。

<Point 1.アルザス地方では、もともと複数の品種がひとつの畑に混植されていた>

アルザスでは、複数の品種をひとつの畑に植えていました(他にもそういう産地は多くありました)。だから、ダイスでは今でもそのままにしているところがほとんどで、例えばリースリ

笑顔が爽やかなマチュー・ダイス。ワインを語り始めると、その情熱に圧倒されます!

笑顔が爽やかなマチュー・ダイス。ワインを語り始めると、その情熱に圧倒されます!

ング、ピノ・グリ、ピノ・ブーロ、ミュスカ、ピノ・ノワールがひとつの畑にバラバラに植えてあるといいます。お気づきかと思いますが、ピノ・のワールだけ黒ブドウですね。そして不思議なのが、普通であれば品種によって発芽時期とか収穫時期に差がでるのに、彼らの畑ではだいたい同じような成長をするのですべて一緒に収穫するのだそうです。それをマチューはこう説明します。「同じような過酷な状況下に育っているから、成長の早さも似てくるんでしょうね」。ふむ、なるほど。確かに硬い岩のような土壌にせめぎあうように密植(1ヘクタールに12000本も!)されている。だから大粒の実をつくれなくて凝縮したブドウができるわけです。

<Point 2.品種の個性のちがいより、畑の個性のちがいを尊重する>

実際にブドウ品種別に仕込み(醸造)をしても、彼らにとっては品種の個性のちがいより、畑の個性のちがいのほうが大きいとして、上級キュヴェは畑ごとに醸造して、瓶詰めしています。あとでいくつかのキュヴェの特徴を紹介しますね。

<Point 3.偉大なワインのバロメーターである余韻の長さを香りよりも優先する>

当主ジャン・ミッシェル・ダイスの息子で後継ぎのマチュー・ダイス。

当主ジャン・ミッシェル・ダイスの息子で後継ぎのマチュー・ダイス。

アルザス地方ではその昔、2種類のワインを造っていたそうです。ひとつは若い状態で飲む爽やかなワイン。そしてもうひとつは、大きな樽の中で保存しておいて何か記念の時に飲む特別なワイン。この特別なワインは、余韻が長くて熟成がきくものです。そしてマチューいわく「香りは、温度変化や抜栓後の時間の経過、あるいは熟成段階でどんどん変わっていきます。でも、余韻の長さだけはずっと変わらない。だからダイスでは香りより余韻を優先させるのです」。

「マルセル・ダイス」は、アルザス地方の中でいわば異端児であり、且つアルザスを代表する生産者でもある、つまり唯一無二な存在といっても過言ではありません。それはアルザスの伝統を守り、自然を尊重し続けた結果なのだとわかります。

そういえば、マチューはちょうど今回試飲させていただいた2007年ヴィンテージから醸造を担当しています。だから父ジャン・ミッシェルは安心して、ひたすら畑仕事に専念しているそうですよ。強い信念を持った父子の作品を、どうぞ試してみてください!

畑名が一番大きく記されたラベル。今回試飲したカテゴリーは、ダイスで「1級畑」と認識しているクラスのもの。

畑名が一番大きく記されたラベル。今回試飲したカテゴリーは、ダイスで「1級畑」と認識しているクラスのもの。

ヴァン・ダルザス 白 2011  Vin d’Alsace Blanc 2011

マルセル・ダイスの白のベースとなるワインで、生産量も最も多い銘柄。

マスカットや甘いスパイス、熟した黄色い果実の香りが控えめに立ちのぼります。味わいもフレッシュでなめらかな口当たりながら、ちゃんと芯がしっかりしています。ワインだけでも美味しいですが、クリームチーズをのせたカナッペのようなおつまみ、白身魚の蒸し物などがあっても嬉しいですね。

エングルガルテン 2007  Engelgarten 2007

英語でいえばエンジェル・ガーデン。石が多い畑で収穫時期が早いそうです。だから天使の庭なのでしょうか?

実は赤も試飲させていただきましたが、今回はとりあえず白のご紹介を。

実は赤も試飲させていただきましたが、今回はとりあえず白のご紹介を。

こちらも控えめな香りながら、まさに「石」を思わせる鉱物的な香りで、味わいはとてもまろやか。全体的によく熟した黄桃のイメージでしょうか。もちろん芯もしっかりしています。クリームソース系の白身魚や鶏肉料理と美味しそうです。

グリュエンスピール 2007  Gruenspiel 2007

この銘柄は目隠しで試飲すると赤ワインと間違えたり、樽熟成をしていると勘違いする人が多いそうです。そのぐらい「男性的」な味だといいます。確かに色から濃くて、香りはやはり控えめながら厚みは感じられます。味わいも確かに筋肉質なむっちり感があって、ボリューミーです。これなら仔牛肉や豚肉のカツレツあたりがよいかもしれませんね。

ショフウェグ 2007  Schoffweg 2007

この畑は、特級畑のマンブールと同じ丘にあるので、ダイス家では「プティ・マンブール(小さなマンブール)」と呼んでいるそうです。ちょっと香ばしくてスモーキーなニュアンスと、柑橘類の果皮の香りがして、厚みがあって塩味のようなミネラル質も感じられる味わいです。お料理は何がいいでしょうか。サザエの炭火焼など、食べたくなります。

ビュルグ 2007 Burg 2007

この畑は「最も特級畑に近い質の畑。みかんの皮をむいたあとに見える白い繊維のような香りが毎年する、力強いというより洗練されたタイプ」だと説明してくれました。ミツロウのようなまったりとした厚みのある香りで、マンゴーも思い起こすほど。ほどよい甘味があって、ボリューム感もありながらミネラル質の芯の強さも感じられます。「スモーキーな料理、フルーツソースを添えた肉料理にもよく合います」とのお薦めでした。

dX-WINE(イー・エックス・ワイン)で購入できます。その他の銘柄もあります。

http://www.exwine.net/shopping/deiss/

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