ワイン&造り手の話

多くの人が憧れるフランスのブルゴーニュ地方で、ワイン造りを始めた日本人女性がいます。東京生まれ、横浜育ちの栗山朋子さん。ドイツの高名なガイゼンハイム大学で栽培と醸造を修めて、サヴィニー・レ・ボーヌ村へ「漂着」したそうです。パートナーであるギヨーム・ボットさんと「シャントリーヴ」を興し、2010年ヴィンテージからのワインが早速多くのファンをつくっています。

<シャントリーヴ誕生>

少し緊張気味の栗山さん。畑仕事で小麦色の肌!

少し緊張気味の栗山さん。畑仕事で小麦色の肌!

2人の出会いは、同じサヴィニー・レ・ボーヌに拠点を置く「シモン・ビーズ」にあったようです。当主パトリック・ビーズの奥方が日本人女性の千砂さん、ということでも知られるドメーヌですが、2002年からボットさんはここで醸造長として勤務していて、栗山さんは白ワインの研修をさせてもらったのでした。そこで「お互いに好きなワインが似ている」と気がついたのがきっかけだったようです。

ボットさんは基本的にシモン・ビーズでフルタイムで仕事があるので、「シャントリーヴ」は栗山さんが主体。「たまには喧嘩もしますが、基本的には方向性は同じですし、畑のもつ特徴の捉え方も同じですから」と、笑います。2002年のシモン・ビーズの「サヴィニー・レ・ボーヌ・ブラン」を飲んだ時の印象を「ミネラルがはっきり主張して、果実が出しゃばらず、樽の要素が表に出ないきれいな樽使いで、とても気に入りました」と、今しがたのことのように語る栗山さん。本当に印象的だったのでしょう。

そんな2人が造るワインは、やはりとても上品で、繊細で、きれいです。「マイクロ・ネゴス」、つまり小さなネゴシアンですから、今はまだ自社畑はなく、ブドウ栽培家から購入してワイン造りを行うわけですが、話しを聞いていてもワインを飲んでも感じるのは、栗山さんのセンスのよさ。だから、自ずと選ぶ人やブドウもセンスのよいものになるのでしょう。2010年、2011年と醸造所も仮の宿でしたが、2012年の夏には独自の醸造所も完成しました!

<シャントリーヴのスタイル>

何となく、誰かに似ている,,,。伊達公子さんにちょっと雰囲気が!

何となく、誰かに似ている,,,。伊達公子さんにちょっと雰囲気が!

栗山&ボットのコンビが追求したいスタイルは、一言でいえば、流行とは関係のないワイン。恐らくそういうことだと思います。自分たちが理解しているブルゴーニュの各村の特徴を、人の手による介入や技術的な部分が表に出てしまうのではなく、微妙なニュアンスをもって明確に、センスよく表現すること。それが彼らの目標であり、既にある意味達成済みなのだと感じています。

例えば、白ワインの「追求する味わいとスタイル」に「スレンダーでかっちり」した「果実味とミネラリティーのバランスがとれた」「輪郭のある」ワインで、樽香は「出しゃばらず、ボディーを支える」程度とあり、特に2011年のヴィンテージは、本当にスレンダーでバランスよく、キリッと輪郭を感じられる仕上がりでした。「ブルゴーニュ・ブラン」は清楚で上品、そして「シャサーニュ・モンラッシェ・プルミエ・クリュ・レ・モルジョ」になると、まだ硬いながらも熟した洋梨や白桃にほんのりと香ばしさが加わって、とてもなめらかな舌触り。とても心地よい印象的な白でした。

赤ワインの求めるものは「果実の香りは、フランボワーズ、野いちごなどの赤い果実主導となる、ブルゴーニュならではのニュアンスのある果実感」を大切にして、ボディーは「フルボディーよりスレンダー」、「かっちりとしたタンニン」、そして「ミネラル感が出せるものは大切にして」「樽香は適度なボリュームとボディーを支える程度」。試飲させていただいた赤は、赤い果実感がしっとりときれいで、「ブルゴーニュ・ルージュ2011」は透明感のある赤で、「ヴォルネイ・シュール・ロッシュ2011」は複雑な香りで厚みのある、豊かさを感じる味わいでした。

<今後の展望>

2012年ヴィンテージから「シャントリーヴChanterives」から「シャントレーヴChantereves」と改名するそうです。今はまだ醸造だけに特化している2人ですが、いつかは畑を借りて、ブドウ栽培からすべて自分たちで行いたいという夢があります。2人ですべてに手が回るのは4ヘクタールぐらいだろう、との見込みとか。

それでも、現在の丁寧な造りをみていると、ブドウの栽培はしていなくとも、確実に彼らの意志がワインに注ぎ込まれていることが手に取るようにわかります。「私たちは伝統的な生産者をとても尊敬しているので、原材料は買っていますが、アルティザン(職人)であることを見せたいと思っています」という言葉も印象的でした。今後も更に期待したい、応援したい造り手さんですね!

この次の2012年ヴィンテージは、やはりブルゴーニュでは収穫量が激減のため、生産量も少なくなってしまうようです。

この次の2012年ヴィンテージは、やはりブルゴーニュでは収穫量が激減のため、生産量も少なくなってしまうようです。

カテゴリー 白(左のボトル)
ワイン名 シャサーニュ・モンラッシェ プルミエ・クリュ・レ・モルジョChassagne-Montrachet 1er Cru Les Morgeots
生産者名 シャントリーヴ Chanterives
生産年 2011
産地 フランス/ブルゴーニュ地方
主要ブドウ品種 シャルドネ
希望小売価格 8,500円+税(他に、ブルゴーニュ・ブラン 3,000円など)
輸入元/販売店 ラック・コーポレーション
カテゴリー 赤(上の写真の右のボトル)
ワイン名 ヴォルネイ・シュール・ロッシュ Volnay Sur Roches
生産者名 シャントリーヴ Chanterives
生産年 2011
産地 フランス/ブルゴーニュ地方
主要ブドウ品種 ピノ・ノワール
希望小売価格 6,500円+税(他に、ブルゴニュ・ルージュ 3,000円など)
輸入元/販売店 ラック・コーポレーション
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