ワイン&造り手の話

ポール・ドレーパー氏。哲学者のような造り手さんです。

カリフォルニアの「リッジ・ヴィンヤーズ」のポール・ドレーパー氏の語り、第二弾は、この地のアイコンともいえるジンファンデルについてです。リッジの「リットン・スプリングス」「ガイザーヴィル」は、とても洗練された赤ワインとして高い評価を得ていますが、その主体となる黒ブドウ品種ジンファンデルは、南イタリアで栽培されているプリミティーヴォがDNA鑑定で同種だと判明しています。ところが、そのまたさらに遡って生まれ故郷がわかったようです。(第一弾「なぜ『原料表示』したのか、そしてリッジの真髄とは」はこちらへ)

 

<リッジのジンファンデル銘柄の始まり>

「リッジ」創立から数年経ち、ブドウが引き抜かれて空き地になっている区画を見つけてカベルネ・ソーヴィニヨンを新植しようか、という話が出たそうです。ただ、資金的なことから頓挫してしまいました。新しく苗木を植えるとなれば、ワインが造れるようになるまで何年もかかってしまうからです。ところが、由緒ある銘醸畑として知られるリッジ所有の「モンテベロ」の近くで、打ち捨てられた古いジンファンデルの畑を見つけました。その畑を丹念に手入れし直して、1964年から醸造開始したのが「リッジ」のジンファンデルの始まりです。

 

「50年代、60年代のカリフォルニアはプティ・シラーが最も多く植えられていて、次がジンファンデル。カベルネ・ソーヴィニヨンは3番目に過ぎなかった」といいます。今では、カリフォルニアの赤ワインといえばカベルネ・ソーヴィニヨン、という印象が強いですが、カベルネ・ソーヴィニヨンが多く植え始められたのは60年から70年代にかけてのことだったのです。

 

「その後、ソノマのアレキサンダー・ヴァレーに1880年植樹のジンファンデルの畑があるとわかり、1966年以来ずっと造り続けています。これが『ガイザーヴィル』。禁酒法の間も、自家用ワインのために残されていた畑です。『リットン・スプリングス』は、同じソノマのドライ・クリーク・ヴァレーにあり、1990年代前半に購入。ここにも1901年植樹、1910年植樹などの古樹があります」。ジンファンデルでもまた、リッジはカリフォルニアの古き良き歴史を繋いでいるワイナリーだといえます。

 

また、カリフォルニアのジンファンデルは伝統的に複数品種とブレンドされることが多い理由はこうでした。「ジンファンデルは、シラーほどではありませんが酸が穏やかなので、例えばカリニャンがハツラツとした果実味と酸を与え、プティ・シラーが色、ストラクチャー、酸を加えてくれます」。また、どちらも洗練されたジンファンデルとして名高い「リットン・スプリングス」と「ガイザーヴィル」との大きな違いは土壌によるものだといいます。「ふたつを比較すると、前者は石と粘土の土壌でタンニンがしっかりして男性的なタイプに仕上がり、後者は小石が多く女性的なタイプに仕上がる」。どちらが好みのタイプか、飲み比べる機会がみつかるとよいですね。

 

表のラベルも明解です。

表のラベルも明解です。

<ジンファンデルの故郷>

「リッジ」では、カリフォルニアにとってアイコン的な存在でもあるジンファンデルの起源を長年探り続けてきました。そしていくつもの事実が明らかになりました。オーストリア=ハンガリー帝国のあらゆる植物が集められている、ウィーン近郊の王立植物館からアメリカの東海岸に到着したのが1820年代。UCバークレー校、UCデイヴィス校の研究によって南イタリアのプリミティーヴォがジンファンデルと同一種だとわかったのですが、「イタリアではプリミティーヴォは外来品種だと認識していたのです」。そこで、今度はどこからイタリアへ入ってきたのか? 研究者の探索は続けられました。

 

「UCデイヴィスのキャロル・メレディス博士が、クロアチア、かつてオーストリア=ハンガリー帝国に属していた国のひとつで栽培されている黒ブドウ品種、ブラヴァッツ・マリのDNAを比較したところ、まったく同一ではないものの、親戚筋にあたることが判明しました。その後、クロアチア内のツールイェナック・カシュテンランスキーという品種が親であり、同一種であるとわかったのです。また、クロアチアには他にもジンファンデルに近い品種が複数存在するが、南イタリアの場合にはプリミティーヴォひとつのみ。このことからもジンファンデルの故郷はクロアチアであると確信できたわけです」。

 

クロアチアは、旧ユーゴスラビアで1991年に独立宣言したアドリア海沿いの国ですね。そういえば、京橋にあるクロアチア料理店で濃厚な赤ワインを一度飲んだような気がします。それがジンファンデルの親戚筋か親品種だったのかもしれません。

 

(更に知りたい方はこちらもご参照ください:リッジの日本語ホームページのコラム「ジンファンデルの起源を求めて その2 クロアチア滞在記」)

 

「リットン・スプリングス 2011」

香りはまだ閉じ気味で、チェリーやカシスに少々チョコレート。アタックはなめらかで、酸もソフト。厚みもあり洗練されているが、ストラクチャーがしっかりとして、甘味が感じられるようなタンニンが豊かに存在する。

リットンS カテゴリー 赤ワイン
ワイン名 リットン・スプリングス Lytton Springs
生産者名 リッジ・ヴィンヤーズ Ridge Vineyards
生産年 2011
産地 アメリカ/カリフォルニア/ドライ・クリーク・ヴァレー
主要ブドウ品種 ジンファンデル82%、プティ・シラー16%、カリニャン2%
希望小売価格 8,000円(本体価格)
輸入元/販売店 大塚食品

 

「ガイザーヴィル 2010」

チェリーやオレンジピール、チョコレート、スパイスなどハリのある香りで、なめらかでしなやかな食感。タンニンが細やかでサラサラとしたニュアンスで、とても上品なジンファンデル。

ガイザーヴィル カテゴリー 赤ワイン
ワイン名 ガイザーヴィル Geyserville
生産者名 リッジ・ヴィンヤーズ Ridge Vineyards
生産年 2010
産地 アメリカ/カリフォルニア/アレキサンダー・ヴァレー
主要ブドウ品種 ジンファンデル64%、カリニャン20%、プティ・シラー12%、アリカンテ・ブーシェ2%、マタロ2%
希望小売価格 7,300円(本体価格)
輸入元/販売店 大塚食品

 

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

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