ワイン&造り手の話

オーストリアのヴァッハウ地方にある、ニコライホフでの食卓や畑などの美しい風景。

オーストリアのヴァッハウ地方のワインの代表ともいえる「ニコライホフ」。日本へ輸入され始めてから、既に25年も経過したそうです。当主夫人のクリスティーネ・サースさんは、バイオダイナミクス、あるいはビオディナミという栽培方法でブドウを育てている人物で、いつも熱心に語ってくれます。その栽培方法がワインにどう影響を与えているのか、かいつまんでお伝えします。

リースリングのボトル。

リースリングのボトル。

<長い歴史>

オーストリアのヴァッハウ地方はドナウ川の下流域にあり、2000年に「ヴァッハウ渓谷の文化的景観」という名称で世界遺産に登録されています。中でもマリー・アントワネットが宿泊したというメルク修道院は、観光スポットとしても有名な場所です。そして、この一帯では2000年前頃のローマ帝国時代からワイン用のブドウ栽培が行われてきた、とても由緒ある地域として知られています。

例えば「ニコライホフ」が自社畑を持つ「イム・ヴァインゲビルゲ」は、聖人が隠遁生活をしていたという伝説があり、ワイン造りのために祈りを捧げたと言われている場所だといいます。

基本的に内陸性の気候ですから、夏と冬の寒暖差が大きいだけでなく、収穫前の8週間の日較差がとても大きいことが「フルーティーさが出せる上に消化の良い酸も保てる」、とてもよい環境だということですが、きっとずっと昔から同様の条件があったにちがいありません。

<バイオダイナミクスの概略>

いつもにこやかに質問に応対するクリスティーネ・サースさん。右胸にあるのは「スマラクト」を示すトカゲのバッチ。

いつもにこやかに質問に応対するクリスティーネ・サースさん。右胸にあるのは「スマラクト」を示すトカゲのバッチ。

「バイオダイナミクス(フランス語ではビオディナミ)」という栽培方法は、オーストリア出身のルドルフ・シュタイナーによって提唱されたもので、「ニコライホフ」はそのお膝元で実践する第一人者、という存在です。大雑把にいえば、有機栽培に留まらず宇宙的概念を取り入れた方法、というのでしょうか。「ニコライホフ」では「醸造では品質の維持は可能だけれど、品質の向上は望めない」という信念で、とにかくワインに品質はブドウ栽培によってすべて決まるという考えです。

少しサース夫人の語りを記してみます。

「1924年にシュタイナーは『健康な食品を作るには』と、説いています。太陽と宇宙のエネルギーを最も有効に取り込むのは、ブドウという植物です。そしてブドウの生命力の95%は宇宙より、たったの5%だけが地球から取り込まれます。私たちの生命の力のほとんども、宇宙からもたらされ、私たちは植物を介してそれを得ることができるのですが、ワインはその生命力が最も凝縮しているものだと考えています。私たちニコライホフは、バイオダイナミクスという方法でブドウを栽培することで、宇宙からの生命力を取り込み、持続的に質の高いワインを生産することができるのです」。

バイオダイナミクスという方法については他のものを参照していただくことにして、ここではその結果できあがったワインがどんな様子だったのかをお伝えしたいと思います。ちなみに、地球温暖化、あるいは極端気候と呼ばれている最近の気象の変化が気になりますが、サース夫人曰く、バイオダイナミクスで育てているブドウの樹はその変動に左右され難い、といいます。そして、他のワイナリーよりも早く成熟を迎えるそうです。

<ワインへの影響>

イム・ヴァインゲビルゲ畑のグリューナー・フェルトリーナーで造られる「スマラクト」格付けの1999年ヴィンテージ。

イム・ヴァインゲビルゲ畑のグリューナー・フェルトリーナーで造られる「スマラクト」格付けの1999年ヴィンテージ。

かつて聖人が祈りを捧げた場所にあるブドウ畑「イム・ヴァインゲビルゲ」のオーストリアを代表するブドウ品種、グリューナー・フェルトリーナー3種類試飲しました。

2011年の「フェーダーシュピール」というクラスは(ドイツワインのカビネット)、熟したリンゴ、ハチミツ、白胡椒、ハーブ、少し柑橘類やアプリコットのような香りもする、とても生き生きとしたフレッシュな味わいで、なめらかさも感じられます。このグリューナー・フェルトリーナーという品種は、繊細なタイプも多いのですが、とても充実した、ミネラル分というか芯の強さが感じられます。お料理は、スパイスを使ったエビやイカ、あるいは豚肉のリエットに白胡椒をガリッと振りかけるようなものを食べたくなる味です。

同じ畑の2010年の「スマラクト」というクラスは(ドイツワインのシュペートレーゼ・クラス。最低アルコール度数が12.5%で、辛口タイプのみという規定あり)、更に厚みがあって、スパイスや白桃、あるいは黄桃、熟したリンゴといった香りが華やかです。お料理は、魚料理より仔牛肉やフルーツソースを使った豚肉料理を連想します。そういえば、ウィーン名物のウインナ・シュニッツェッルというカツレツもよいかもしれません。とにかく、底力が感じられます。

でも、最も驚いたのは2010年とまったく同じ銘柄の、1999年ものでした。バニラトースト、少し煮詰めたリンゴ、蜂蜜、数種類のスパイスなど、とても複雑で華やかな香りがして、なめらかで弾力を感じるような舌触りで、バランスよく、非常に魅力的な味わいなのです。帆立のバターソテー、スモークした魚、数種類のスパイスを使用した手の込んだお料理を食べたくなります。

実は、以前グリューナー・フェルトリーナーの10年以上熟成したワインを試飲したことがあるのですが、その時にはどれも「長持ちするのだ」と理解するに終わりました。ただ、今回の「1999年スマラクト」は、「こんなに発展的な美しい熟成をするのだ!」という感動を得たのです。これが、サース夫人のいわれる「宇宙から取り込んだ生命力」の影響なのかもしれないと、感じたのでした。

上質のワインはその分価格は上がりますが、それでも感動できるワインに出会う喜びを味わってみたい方には是非お薦めします!

熟成したリースリングと、グリューナー・フェルトリーナー。

熟成したリースリングと、グリューナー・フェルトリーナー。

カテゴリー 白 (写真は別銘柄です)
ワイン名 イム・ヴァインゲビルゲ グリューナー・フェルトリーナー フェーダーシュピールIm Weingebirge Gruner Veltliner Federspiel
生産者名 ニコライホフ  Nilolaihof
生産年 2011
産地 オーストリア/ヴァッハウ地方
主要ブドウ品種 グリューナー・フェルトリーナー
参考価格 3,400円
輸入元/販売店 ファインズ

イム・ヴァインゲビルゲ畑のグリューナー・フェルトリーナーで造られる「スマラクト」格付けの1999年ヴィンテージ。

イム・ヴァインゲビルゲ畑のグリューナー・フェルトリーナーで造られる「スマラクト」格付けの1999年ヴィンテージ。

カテゴリー
ワイン名 イム・ヴァインゲビルゲ グリューナー・フェルトリーナー スマラクトIm Weingebirge Gruner Veltliner Smaragt
生産者名 ニコライホフ  Nilolaihof
生産年 2010
産地 オーストリア/ヴァッハウ地方
主要ブドウ品種 グリューナー・フェルトリーナー
参考価格 6,300円(限定品の1999年は13,800円)
輸入元/販売店 ファインズ
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