ワイン&造り手の話

<カンヌビ入手まで>

食通としても知られるブルーノ・チェレット氏。

食通としても知られるブルーノ・チェレット氏。

チェレットの「バローロ ブリッコ・ロッケ」は、とても長寿で完成度が高い貴重な単一畑の赤ワインです。でもその偉大な造り手が「バローロで最も貴重な畑」という「カンヌビ」。オーナーのブルーノ・チェレット氏は、長年憧れていたこの畑の一角をどのようにして手に入れたのでしょうか。今回リリースされたのは2004年。マグナムのみの生産で、わずか500本の限定商品です。

ランゲに残っている最も古い赤ワイン、1751年ヴィンテージのボトルには、 ”Barolo” ではなく “Cannubi” と記されているそうです。それを見た時からずっと心の中にあったというカンヌビ畑から造られるバローロは、「ストラクチャーがとても強い」ことでも知られています。ただ、ブルーノ・チェレット氏はこういいます。「この畑を買うのは不可能だと思っていました」。素晴らしい畑だけに、誰も手放そうとしないからです。

ところがある日、よく知る老齢の枢機卿がチェレット氏のもとを尋ねてきたといいます。

「お金を貸してほしい、という相談でした。そこで私は枢機卿に所有している不動産を入札にかけてはどうかと提案したのです。彼はカンヌビを0.25ヘクタール持っていました。ただ、教会のしきたりで、もしそのまま枢機卿が亡くなれば不動産は教会に戻されてしまいますから」。そして枢機卿は入札という提案を受け入れ、カンヌビはチェレットによって落札されたのです。2003年のことでした。

<カンヌビの実力>

バローロ・カンヌビはマグナムだけ。

バローロ・カンヌビはマグナムだけ。

この畑はわずか0.25ヘクタールではありますが、「ブリッコ」と呼ばれる頂にあたる、カンヌビの中でも最高の区画だったのです。しかも1965年からずっと同じ栽培家が、とてもよい状態で管理してきていました。樹齢90年のネッビオーロもあるようです(ただ、一部にドルチェットが植えられていたので、そこは2003年にネッビオーロに植え替え)。ここは昔の人がどのようにブドウの管理をしていたのか、という見本のような畑だといいます。量産ではなく、質の高いブドウを得るための作業がコツコツと行われ続けていたのです。それに加えてチェレットでは、2010年からバイオダイナミクス農法に移行し始めていて、このカンヌビも例に漏れません。これによって、ますますカンヌビならではの個性が引き出せるにちがいない、という期待が込められています。

チェレットとして2年目のヴィンテージ、2004年は、グラスに注がれると香りの華やかさがすぐに感じ取れるほどでした。厚みがある、スパイス、凝縮した果実、ブラックチョコも香ってきます。味わいはまだ若くて固い印象もありますが、すべてが高いレベルで調和して、しっかりしたストラクチャーで、バローロらしいタンニンもあり、余韻が長く続きます。優雅で壮麗な赤ワインです。

<ピアッツァ・ドゥオーモの料理との共演>

「祖父がトラットリアをしていました」というブルーノ・チェレット氏は、食通としても知られています。ピエモンテにはたくさん美味しい食材があるのに、素晴らしいと思えるレストランがなかったので、自分で始めよう、というのが「ピアッツァ・ドゥオーモ」の始まりだそうです。

才能あるシェフ、エンリコ・クリッパ氏に会って、好きなようにしなさい、という指令を出した結果、2005年のオープンからわずか1年でミシュランの1ツ星を、2009年には星の数はもうひとつ増え、2012年には3ツ星の名誉に輝いたのです。ピエモンテ地方を訪問する機会のある方は、是非立寄ってみてはいかがでしょうか。

今回の写真は、「キュイジーヌ[s]ミッシェル トロワグロ東京」のギヨーム・ブラカヴァル氏との共演です。もっと綺麗な写真やお料理などの情報は、輸入元さんのホームページでご覧になれます。

(text & photo by Yasuko Nagoshi/人物&ボトル写真はファインズより)

バローロ・カンヌビはマグナムだけ。

バローロ・カンヌビはマグナムだけ。

カテゴリー 赤ワイン
ワイン名 バローロ カンヌビBarolo Cannubi San Lorenzo
生産者名 チェレット Ceretto
生産年 2004
産地 イタリア/ピエモンテ地方
主要ブドウ品種 ネッビオーロ
希望小売価格 未定(日本での発売未定)
輸入元/販売店 ファインズ
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