ワインと料理

まだワインを飲み始めた頃に、ソーテルヌの「シャトー・ディケム」はすごいらしいと物の本で読んでいたので、初めてボルドーを訪れた時にワイン・ショップで探しに行きました。もちろんありました! 当時(25年ほど前)はまだボルドーのワイン全体の価格が安かったので、750mlのボトルを1本、ハーフサイズを1本買って帰りました。ただ、とっても美味しいと聞いていたので、それから1、2年のうちにどちらも友人と飲んでしまったのです。

 

ところが、ワインの仕事をするようになり「シャトー・ディケム」の当時のオーナー、リュル・サリュース伯爵と共に古いヴィンテージを試飲する機会に恵まれた時、本当にもったいないことをしてしまったのだと実感しました。というのも、ご存知の方も多いでしょうが「シャトー・ディケム」はとても長寿で、100年経っても美味しく飲める甘口ワインなのですが、若いうちはその真価が分かりにくいのです。つまり、ただただ「甘くて美味しい」という印象で、内包する複雑性は生まれてから20年ほどしないと現れてこないからです。

あ〜、せめてあと10年我慢して置いておけば、と悔やみました。

 

でも、その時にいいことを聞きました。リュル・サリュース伯爵に自宅では何と一緒に飲みますか? と尋ねると「マジパン」だというお答えでした。つまり、アーモンド菓子ですね。それを思い出して、ソーテルヌの近所で造られる甘口ワインとアーモンド菓子を合わせてみました。

 

モンバジャックのある南西地方のベルジュラックはフォアグラの名産地でもありますから、この組み合わせも極自然。

モンバジャックのある南西地方のベルジュラックはフォアグラの名産地でもありますから、この組み合わせも極自然。

この甘口白ワインは、ソーテルヌより北東にあるモンバジャックという産地のもので、古くから同じように「貴腐ワイン」を造っています。ソーテルヌと大きく異なるのは、ミュスカデルという品種も使っているので少し軽やかな印象がある点と、割合若くから飲み始められること、価格が随分お安いことでしょうか。購入してからすぐに開ける場合には、ソーテルヌよりモンバジャックのほうがむしろ適しているかもしれませんね。

 

香りはハチミツ、蜜蝋、オレンジマーマレード、ナッツ、アーモンド菓子、べっ甲飴のような香ばしさなど、複雑さが感じられます。トロリとした食感でしっかり甘味もありますが、酸味もあるのでもたつくような感触はありません。アーモンド菓子のカリソンとももちろん美味しいですが、フランスで年始に食べるガレット・デ・ロワのようにアーモンドクリームを詰めたパイ菓子にもきっとバッチリ合うと思います。あるいはオレンジマーマレードを使ったパイやクッキーもお薦めです。

 

たまには甘口ワインと甘いお菓子でまったりするのもいいですね。

 

<付記>

カリソンは、南仏プロヴァンス地方の名物で、アーモンド粉を使ったお菓子です。フランスでは空港の免税店で必ず置いてあるものですが、日本にも輸入されているようです。

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

甘口白ワイン「モンバジャック」は、2,000円位からあります。

ラベルに描かれている立派なお城のあるシャトー・モンバジャックで造られています。モンバジャックの全生産量の3分の1以上を造る組合のフラッグシップ。

ラベルに描かれている立派なお城のあるシャトー・モンバジャックで造られています。モンバジャックの全生産量の3分の1以上を造る組合のフラッグシップ。

カテゴリー 甘口白ワイン
ワイン名 シャトー・モンバジャックChâteau Monbazillac
生産者名 シャトー・モンバジャックChâteau Monbazillac
生産年 2009
産地 フランス/南西地方/ベルジュラック
主要ブドウ品種 セミヨン主体+ソーヴィニヨン・ブラン、ミュスカデル
希望小売価格 5,000円前後
輸入元/販売店 不明

 

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