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4月に来日した、ド・モンティーユとシャトー・ド・ピュリニー・モンラッシェのエティエンヌ・モンティーユ氏が語った、ブルゴーニュの今の傾向と彼自身の考え方をまとめてみた。

 

<白ワインのプレマチュア・オキシデーションについて>

80年代から90年代にブルゴーニュをはじめフランス各地の白ワインについて問題となった「プレマチュア・オキシデーション」とその対策について。

 

考えられる原因は複数存在し、それぞれに対処している。

—添加する亜硫酸が減少しすぎていたこと、樽熟成中のバトナージュを頻繁に行っていたことから、酸素を多く取り込みすぎた。

→亜硫酸は適量添加し、最近バトナージュはほとんど行っていない。

→白用の樽は228リットルの小樽でなく600リットルの容量に変更。このサイズの使用はブルゴーニュでも増えてきている。

 

—80-90年代に導入された空気圧式圧搾機によって、果汁の透明度が上がりすぎてワイン中の澱が減少し、酸化から守ってくれる物質が減ってしまった。

→澱の量にも留意するようになった。

 

—80年代以降の世界的なワイン生産量増加のため、コルクの質が急速に低下したため、密閉度に相当な誤差が出た。

→赤にはこの10年、白にはこの5年、人工の「ディアムコルク」を使用している。ディアムも年々質が向上し、2011年からは30年保証付きの「ディアム30」が出ている。コルクによる汚染の心配がなく、ボトル差がでないのが利点だ。

 

<亜硫酸について>

「亜硫酸無添加に興味はあるが、結局ピュアさを失うことになるとわかったので行わないことにした」と、たいへん率直。

赤の場合には40mg/750mlで、白はタンニンがないのでこの倍量程度。以前20-25mgぐらいまで下げたことがあるが、少な過ぎたと感じている。

添加するのは発酵前とマロラクティックの後。少量ずつ何度かに分けて行う。特に発酵前には最低限度に抑えておいて、足りなければ後で若干多めに添加する。

亜硫酸無添加のワインは、味わいに広がりがあり、複雑性が出て、わかりやすいハーモニーを感じられることがあるが、同じように扱っていても反対にまったく美味しくないものに仕上がるなど、キュヴェによる差がとても大きく不安定なので現実的ではないようだ。

 

<全房発酵について>

除梗せず、梗をつけたまま発酵を行う方法で、近年ブルゴーニュをはじめピノ・ノワールの醸造で比率が高まっている。

ド・モンティーユは、全房を多用している数少ないブルゴーニュの造り手のひとつ。例えば、ボーヌ1級では3分の1、ヴォルネーとヴォーヌ・ロマネの1級では100%。ただし、毎年同じような比率で全房とできるかどうかはわからない。ブドウの出来次第となる。

 

全房発酵の利点

—スパイシーでフローラルな、あるいはミネラリーな複雑性があり深みのあるアロマが得られる。

—スパイスやミネラル的な味わいが得られ、重々しくならない。

—熟成のポテンシャルを高め、熟成した後の品質も高め、味わいの広がりが得られる。

熟成のポテンシャルについては確認できるまで大変時間がかかるが、香りや味わいについては、実際に100%全房で造っている「ヴォルネー 1級 レ・タイユピエ」、「ヴォーヌ・ロマネ 1級 オー・マルコソール」を試飲しながら「まさにこの香りは全房発酵に由来するものだ」と言っていたので、興味のある方は是非試飲してみてはいかがだろうか。

(text by Yasuko Nagoshi)

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