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ダヴィッド・クロワが造る「カミーユ・ジルー」のワインについて、具体的な内容をお伝えします。

 

<基本的な造りの方針>

「最近ブルゴーニュでは、還元的な造りがトレンドになっています。かつてのプレ・マチュア・オキシデーションの問題が起こってからの傾向です。ただ、私にとっては、それはブドウや畑とは関係のない、あくまでも醸造の技術的な問題だと思っているので、それに倣おうとは思いません。あくまでもテロワールの表現をすることが主眼です。重くしすぎず、還元的にもしすぎない。そう、とても難しいことではありますが、日々チャレンジしています」。

「特に白ワインは、還元状態でボトリングすると、そのまま還元状態が続いてボトルの中でうまく成長していかないと、経験値から判断しています」とも言っていました。

 

どのようにして、酸化的でもなく還元的でもなく、両者のバランスがとれたワインにしているのですか? という質問には、「話し始めると、とても1日では終わらないから」と、具体例は挙げてくれませんでした。ですから、これについては、色々と妄想をしながら、いつの日か造りの現場を訪問できた時に、じっくり教えてもらおうかと思います。が、きっと、毎日のようにそれぞれの樽を試飲しながら、微調整を繰り返しているのでしょう。

 

ただ明らかなのは、使用する樽は大きめのものが多く、新樽率が低いこと。レジョナル・クラスには350〜600リットル、ヴィラージュ・クラスには300〜350リットル、グラン・クリュクラスになってはじめて228リットルを使うと言及していました。また今回試飲したムルソーで、新樽10%、シャサーニュ・モンラッシェ1級で20〜25%、コルトンで30%という低さでした。

そして、発酵はすべて自然酵母のみで行っています。

 

<試飲したワインのヴィンテージ解説>

2011年 春が暑かったため、ブドウの成長が早く進んだが、夏は涼しく湿度が高かった、変わった天候だった年。アロマはクラシックながら、基本的に早くから楽しめる年で、近年では2000年、2007年に似ている。

 

2010年 2011年より濃縮感がある年。開花期に問題があり、特にシャルドネでミルランダージュがみられ、収穫量が低くなった。この年の古樹のシャルドネは、ワインの色も黄金色で他の年と見た目だけでもちがうとわかる。近年では2005年、2012年と似ている。

 

以下、試飲した銘柄について記しておきます。

<ムルソー 2011 Meursault 2011>

標高が高めで小石が多く石灰質が豊かな土壌のヴィルイユ Les Vireuils +赤い色で深い土壌のクロト Les Crotos をブレンド。注がれてすぐ、とても華やかな香りが。ハチミツ、トースト、黄桃などの熟した黄色い果実の香りに、なめらかな口当たり。次第にミネラル質の固さやフレッシュな酸が感じられる。(参考小売価格/税込 6,270円)

 

ページの分かれ目の上の方にヴィルイユの畑が、それよりずっと下方の左手にクロトの畑があります。この書籍はジャスパー・モリスMWの「ブルゴーニュワイン大全」。

ページの分かれ目の上の方にヴィルイユの畑が、それよりずっと下方の左手にクロトの畑があります。この書籍はジャスパー・モリスMWの「ブルゴーニュワイン大全」。

<シャサーニュ・モンラッシェ 1級 ヴェルジェ 2011 Chassagne Montrachet 1er Cru Verger 2011 >

ヴェルジェの中でも北側にある樹齢40年の区画。赤い粘土質の表土が35〜40センチほどあり、下層は石灰質。ブドウは小粒でミルランダージュが多いので、収穫量は少ない。光沢を感じる香りで、ハチミツやトーストが感じられるが、ムルソーよりも上品さが増す。加えて、よりなめらかで、果実味と酸のバランスもより整っている。今でも楽しめる状態。(参考小売価格/税込 10,480円)

 

 

<シャサーニュ・モンラッシェ 1級 テット・デュ・クロ 2011 Chassagne Montrachet 1er Cru Tête du Clos 2010>

モルジョの中にある区画で「モルジョ」と名乗ることもできるが、この区画は他と性質が異なるので、テット・デュ・クロと名乗ることにした。南側、サントネイ側に位置し、樹齢は60年。ここも小粒でミルランダージュが多い。香りはまだ閉じていて、ほんのりとハチミツやトーストが香るが、それよりミネラル質やオイリーさを彷彿とさせる香りが勝っている。味わいも芯のあるミネラル質が酸とともに余韻に長く続き、石灰質の多さを表している。今でも楽しめるけれど、少し待つのもお薦め。(参考小売価格/税込 9,940円)

 

<ヴォーヌ・ロマネ 2011 Vogne Romanée 2011>

ダヴィッド・クロワが2002年にカミーユ・ジローで造るようになってから、契約畑はほとんど変更されたが、このヴォーヌ・ロマネとジュヴレ・シャンベルタンだけはそのまま継続している。この畑はシャランダンという区画で、村はフラジェ・エシェゾー村に入っている。茶色い粘土質が深い土壌。60%全房発酵しているのは、ミドルパレットでの立体感を形成するのが目的。色が濃く、香りは固く閉じている。味わいもまだとても固くタンニンが豊か。しばらくこのまま置いておきたい。(参考小売価格/税込 8,430円)

 

<コルトン クロ・デュ・ロワ 特級 2010 Corton Clos du Roi Grand Cru 2010>

「コルトンは広い畑で、その性質は大きく3つに分けられる。ブレッサンは丸さがあり、ルナルドは野性的でオステアーで、このクロ・デ・ロワは力強い。まさに王様」。この区画は樹齢20年と45年が半々に植えられた急斜面で、石が多い。そのため、ブドウにほどよいストレスがかかり、果皮が厚くなる。だから収穫時期が遅くて、だいたい9月末ぐらい」。こちらは除梗してからの発酵。色は明るく、より上品でやわらかい香り。少し閉じ気味ではありながら、きれいな果実の香りが少しずつ出てくる。味わいもとてもなめらかで繊細且つ、奥深さを感じられる。今でも美味しく飲み始められるが、徐々に成長していく様子が楽しみなワイン。王様でもいいけれど、女王的な優雅さが感じられた(参考小売価格/税込 12,530円)

 

(輸入元:ベリー・ブラザーズ&ラッド日本支店)

(text & photo by Yasuko Nagoshi)

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